…引き籠ってていい、って言われたの
ルーシャス皇太子殿下にね、甘やかされちゃった
え…？
だから、出てきた
どういう、関係なんだ？
ルーシャス皇太子と
わたしの純情可憐さに
一目惚れ
- …ふうん
- 心配なんだよ
…ふうん
純情可憐だもんな
思ってないでしょ！！
ジョークよ、クイーンジョーク！！
心配なんだよ、ギネヴィア
…ごめんなさい
ジョーダン言ってる場合じゃなかったね
なんか、ありがとう
お戯れでしょうね。はべらせたいのかしら
「ローマに連れていってやる」とか言われて
…迷ったりしたこともあった
キャメリアードにいた頃は
いつか旅に出られたらいいな…って思ってたケド
カレドニアからの侵攻が始まって
軍備も貧相なキャメリアードに勝ち目、なくて
パパがね、国民をログレスに逃がして…託したの
で。王女だったわたしの安全を守るには──
…ログレス王アーサーとの政略結婚
アーサーはわたしを尊重してくれてる
いまだに王妃（仮）──婚約者止まりだしね
遠く知らない国に旅立ちたかったのに
今はたまらなく帰りたい
旅が素晴らしいって思えるのは
故郷あってこそなんだって気付いた、なのに…
- きっとまだお父さんも生きてるよ
- キミが弱気でどうするんだ？
- なにか俺に出来ることはある？
きっとまだ、お父さんも生きてるよ
そう思う？
…ああ、思うよ
そう。そうだといいよね、本当に
これからみんなを
救出に行くんだろう？
なのにキミが弱気で
どうするんだ？
キミが先頭に立って
みんなを引っ張っていかなきゃ！
わたしが先頭に立つの？
ケイにすら認められていないわたしが？
なにか俺に出来ることはある？
話、聞いててほしい…、ここで
聞くよ
ごめんね、ごめんね…
でも…ありがとう
あの日、バルバロイが祭壇に
溢れてるのを見た時点でね
わかってた、本当は
ケイもアーサーも策を練ってくれてた
わたしたちだけじゃどうしようもなかった
待つしかないなら、信じてあげようと思った
パパは生きてる、だからわたしは平気な顔したの
バカ騒ぎしたの。学校生活も、五月祭も
わたしが平気な顔して着飾っていれば
パパがまだ生きてること
信じられるんじゃないかって思ったの
まだ、バルバロイにやられたと
決まったわけじゃ…
ねえ、知ってる？バルバロイってね
人に憑くこともあるの
憑りついて、その人の悪しき記憶
悪しき想いを増長させて取り込んで
少しずつその
最初はその人自身の記憶を喰らう
喰われた側は自分が誰だかわからなくなってく
…自分が、わからなく…？
それが喰い尽くされるとね──
周りの人間から
その
バルバロイになった人のことを
周囲の人が忘れていく、ようになる…
…！？
それって…
パパとの思い出
どんどんなくなってるの
…このあいだの…！
でも、キャメリアードに
帰りたくない自分もいるの…
パパが生きてるって信じ続けたいの…
平気な顔、してたいのよ…！
現実を見るのが、怖いの…っ
………だけど、忘れたく…ないよ…