「ある日、貧しき娘は異国のコインを拾いました
しかし自分の国でそれは使えませんでした」
「娘は願いました
リッチになりたい、と」
そんな話だった？
欠落していく記憶には個人差があるのね
だけど、私は覚えているわ、まだ…
つ、続き、続きを、おねがい…、忘れたくない…
パパもキャメリアードのことも…！
…
「異国のコインは答えました」
…はい
こんな夜更けに、ご用？
そのままで、聞いてくれ
…？
俺、海を越えて北の島にディナタンと
父さん、母さんと４人で住んでいたんだ
…けど、父さんがなにも言わずに
そこを離れることになって
俺とディナタンと母さんは
カレドニアの外れに移り住んだ
そこは遊ぶところなんてなにもなくてさ
俺は家族がいればそれでいいと思ってたけど
母さんが、死んで──
…
これまでさ
誰も本当のことを言ってくれなかった
…！
帰って来ない人を恨みもした
だけど、もしかしたら
本当は、隠さなきゃいけないほど…
忘れたほうがいいほど辛い現実なのかもしれない
けど、それでも──
忘れて…平気な顔なんて出来ない、よな
…うん
親孝行、しに行かないか
…うんっ！
彼のおかげで
土産話に箔がつきますね？
そのための
…ううん。もう、それだけじゃないの
え…？
ふふ
…ごめんなさい、ノワール
わたしは、あなたをイイように使おうとしてた
- 雇われたからには仕事しないと
- 父親を想う気持ちは同じだから
- 故郷へ帰るついでだよ
傭兵団のもと団長からさ
雇われたからには仕事をしろって
教わってるんだよ
傭兵の流儀ってヤツぅ？
放っておけないんだよ
父親を想う気持ちは俺も同じだから
ありがと
あなたのお父様もきっと素敵な方だったのね
もちろん
憧れだったよ
この国を出て
故郷に帰るついでさ
イイように使おうとしてたのは
お互い様かしら？
帰りたくってしょうがないよね
あの…あのね？弱っちくってワガママなわたしを
飾り立てる人を探してたのよ、けど本当は──
これ。まだ五月だから
なに、この紙切れ…
『投票用紙：ギネヴィア』…
五月女王様
誘拐──…されてくださいますか
！
誘拐、どんとこいよっ！