旅のお供に現実的な話でもしよっか
継承者クン？
もう妖精なんていないかもって話
パーシヴァル様
よしましょう
ボクらが今、どこへ向かっているか
わかってるかい？『聖杯城の巫女』サン
ええ？どこってフィエナちゃんが探知した場所
…でしょ？『果てなき森』だっけ…？
そこになにか…あるのか？
あるんだ
『果てなき森』
あそこは
え…っ！？
導きを得ぬ人間が森へ足を踏み入れた場合は
果てなく迷い、里に辿りつくこともない…
いまだに妖精の力が残留しているため
…と噂されています
隠れる場所も多い
伏兵にはもってこいだね
- そんな話、教わっていない
- そんな場所、行きたくない
過去に妖精が住んでいた所…？
そんな話、誰も教えてくれなかったけど…
私も名前くらいは聞いていたけど
妖精の森だなんて知らなかった…
『聖杯城の巫女』ですら知らないんだね
まあ…知っていても言わないだろうけど
果てなく迷う…だって？
そんな場所に足を踏み入れるなんて
無謀でしかない
だったら引き返すかい？
ボクは止めないけど
ここからが現実的な話
継承者が聖杯の奇跡を受けなきゃ
バルバロイに勝てない
で、聖杯を見つけるには妖精が必要
だけど妖精の隠れ里は
既にバルバロイに滅ぼされて跡形もない
ちょ、ちょっとまって…！？
よ、妖精さんは、そこに住んでた妖精さんは…？
根こそぎ喰われたんだよ
そりゃそうだ、バルバロイにとっては脅威だもん
そうして逃げ延びた
聖杯城でだいじに匿われていたっていうのに──
『妖精殺し』が…殺した
…そんな
現実だよ。とっくに救いは失われてるんだ
知ってるのはボクら姉弟と…アーサー王ぐらい？
- 妖精の生き残りはいないのか？
- まだフィエナがいるじゃないか
- 妖精はどうして隠れてたんだ？
妖精の生き残りはいないのか？
だいじに匿われていたぐらいだからね
絶滅危惧種みたいなもので
万が一にいたとして名乗り出てくると思う？
バルバロイに喰われるか、聖杯を探させられるか
そんな選択肢しかないのにさ
まだフィエナがいるじゃないか
聖杯を探すのも、まだ──
『妖精』と『巫女』じゃ全然違うだろ？
巫女はあくまで疑似的な妖精の力をもってるだけ
その証拠にこうしてボクらが
右往左往しなきゃいけないハメになってる
フィエナ様がいなければ
我々は探すアテすらなかったわけですが？
ん、まあ、そーだけど…！
妖精はどうして隠れて過ごしてたんだ？
その歴史は深く、詳細はわかりかねます
ただ神的な…稀有な力をもつため利用価値は高い
となれば人がそれを追い求めるは道理
…望まぬ行いを強いられた妖精もいたでしょう
そのうえバルバロイにまで狙われるとなれば
隠れもするよね…、そうだよね…
そもそもパーシヴァルが
それを知ってるのはどうしてだ？
ここから先はプライベート
庶民には聞かせてあげられないね
さんざん匂わせといてそれはないよっ！！
とにかくね
なにが言いたいかっていうとさ
聖杯を発見出来たら
ボクが見つけたってことにしてよ
………なにそれっ！！
…パーシヴァル様
ボクは世界が救われるなんて
さらさら信じられないんだ
『妖精殺し』が世界から奇跡を奪って
どうせこの世の終焉は避けられない
ボクは世界の終わりまで
讃えられて気持ち良く過ごしたいんだよ
…
悪い話じゃないだろ？
現実的でさ
ボクがすこし、