すまん。ノワールは初めてだろうから
学園祭を味わわせてやりたかったんだが…
その詫びと言ってはなんだが
俺のとっておきのヒミツを披露してやろう
俺が義姉さんを困らせている理由を
話せていなかったなと思ってね
- どうして今？興味ないな…
- 弱みを握れるかな
どうして今？
興味ないな…
そう言うな
王様のプライベートなんて
そうそう聞けんぞ
弱みを握れるかな
俺の弱みでもあり
義姉さんの恥でもある
聞いておいて損はないぞ
義姉さんは俺の乳母だ
我が母イグレーヌ付きの侍女として城に入り
イグレーヌは義姉さんを娘のように可愛がり…
俺の養育に乳母として携わった
俺を戦場から遠ざけるべく
孤児院に預けてからも…
彼女は姉として通いつめ
家族として暖かく接してくれた
ただ小さいころの俺は
どうしようもなく甘ったれでな
ログレスは今のように
優秀な騎士ばかりではなかった
俺はガキだった
勇敢さと無謀さを取り違えていた
しばしば院を抜け出しては
戦場に出る父ユーサーにこっそりついていき…
…死にかけて帰ってくる日々だった
おかげでギネヴィアの奔放さには
なにも言えなかった
死に急がんとする
向こう見ずなガキだった
アーサー様！召し上がりませんか新作！
お安くしておきますよオッ！
言い値で買いに来よう！
今度財布を持ってな！
まいど！！
俺が血塗れで帰ってくるたび義姉さんはパニック
怪我を治さんと薬を探し求め島中を右往左往だ
俺はそれを当然と甘え、より傷をつけて帰り
きっかけは…なんだったかな
そうしているうち
義姉さんは脚を壊した
…！
あんな、立ち上がれないほどの…？
義姉さんの怪我は一向に治らなかった
俺の治療に明け暮れたからか…彼女の体の問題か
ともかく俺は
卓につくことを覚えた
恥ずべき思い出だろう？
ノワール…お前は強き父に導かれ
家族のために剣を振るい続けている
強いられた継承者の資格に
背を向けることなく道を歩み続けている
いかんことだがノワール
俺はお前になにかを少し重ねてしまっている
俺はお前に少し
入れ込み過ぎてしまっているのかもしれん
- ありがとう、話してくれて
- 似ているとは思えない
ありがとう、話してくれて
自分語りを聞かせてしまって悪いなノワール
ちょっとした自己満足になってしまった
だが、お前には聞いてもらいたかった
似た者同士、少し相談がしたいんだ
似ているとは思えないな
俺と、あんたとじゃ
…こっちの勝手な思い込みかもな
深入りはしないさ
憐れみもナシでいこう、お互いな
まあどうしてそんな話をしたかというと
こんなガキには解決し切れん相談があってな！
お願い？
そ、それが本題か…
血なまぐさい選択はしたくない
だが軽薄な決断もよろしくない
お前の馴染みの場所に
付き合ってほしい