僕を好きと言ってくれた人
その
僕は、実の母に「好き」と言われた記憶はない
けれど僕はどうやら母上のことが好きだった
母上に好いてもらうには今の自分じゃダメだと
色んな人の真似をしたりした
母上を守れるように強くなろうとした
だが結局、僕の力は及ばず…
屍と化した母上を誰にも触れさせないよう
森のなか、泣きながら木の棒を振り回していた
そこに…アステラが？
幼い目にも無敵だったよ
僕を受け入れてくれた銀卓の皆も
素人目に見ても卓越した強さだった
僕はそれからずっと彼らの虜だった
好きと言われたくて
…はじめて「好き」と言われたのは？
わかるだろう？姉上だ
アステラは見ていたんだろうな
そう言われて喜んだ僕の顔を
事実、もっと言って欲しくて
ねだるような顔でいたんだろう
- 銀卓の騎士は強いな
- アステラは優しかったな
- そんなに欲張らなくても
銀卓の騎士は強いな
バルバロイに侵される前はあんな無口じゃなくて
もっと賑やかな人たちだったんだぞ？
強くて、たくましくて、人が良くて
僕の唯一の居場所で、あったかかった
アステラは優しかったな
ふふ。わかるか
少し旅をしただけだったけど
いつもガラハッドのことを気にかけてた
強いから出来ることなんだ
好意を向けてくれるのも、強くて優しいから
そんなに欲張らなくても
誰かに好まれたいと思うことが
欲張りに見えるか？
ガラハッドはアステラの「好き」が
とても嬉しかったんだ。とても…
姉上曰く…銀卓騎士は皆『父なる彼』の剣技を
受け継いでいる…ということなんだな
『父なる彼』つまりは
ノワール…お前の父親の剣を
ガラハッドは違うのか？
僕は…実はな、恥ずかしい話だが
ずっと銀卓に入れてもらえていなかったんだ
だけど姉上とＧＳを果たしてようやく認められて
剣技を銀卓の皆から学んだんだ
だが彼らの強さは『父なる彼』から直接伝授され
聖杯城にて磨き続けられた至上の剣技だろう
ノワールやランスロットにも
勝るとも劣らぬ精鋭ぞろいだ
ガラハッドの銀卓講座だ
どうだった、勉強になったか
どうしてこんなことを俺に？
アステラの話とか…
憧れていたんだ
銀卓に、騎士に、姉上に、お爺様に
そもそも…家族というものに
だが知ろうとしなかった。遠ざけ、高みに置いて
…眺めていただけだった。その輝きを
真似して自らを潔癖に磨けば磨くほど
銀色は輝いて、映すのは憧れた像ばかりだった
鎧の中の僕は
誰の目にも止まらなかった
僕は置いてけぼりだった
だから僕はもっと勉強するんだ
伸びしろがあるとこの学園でわかったんだ
ノワール
まずは競争相手のお前からだ
俺…？
僕はノワールを勉強させてもらった
今度は僕を勉強してくれないか、ノワール
相手に知ってもらえないと『知り合い』じゃない
ともに学び合わないと『学友』にはなれない
- 勉強させてもらうよ
- ランスロットに学ぶのもいいかも
- もう知り合いだし、学友だよ
勉強させてもらうよ、ガラハッド
こっちの台詞だ、ノワール
その…ぜひガラハッドの
『知り合い』に、なってほしい
俺だけじゃなくランスロットにも学ぶといい
あいつは学園の教師のひとりだから
勿論だ！お前と競いながら走る先には
最強騎士がいるんだ
いずれは彼からも多くを学び
彼にもガラハッドのことを学んでもらわねば！
もう知り合いだし、学友だよ
えっ、あっ、そ、そうか…
そう、言ってくれるか…っ
じゃ、じゃあ…より親しい友人
『親友』を目指すのはどうだろう！
円卓の騎士は学び舎でそうやって互いを知り
絆を深め合っているから強いのだと思った
そうやってガラハッドも強くなりたい
これは憧れじゃなく、学習意欲だ
そうやって