あの日
止めようと思ったんだ、王殺し
…例えば、聖域化を先に成してしまって…
アーサー王の穢れだけを消す、とか…
でもたぶん
それじゃあうまくいかない
おじい様が言うには、聖杯は
この地の穢れを具現化させて聖域化を進める装置
今後この地に出現するであろうバルバロイや
今いるバルバロイには効果があるけど…
アーサーの血に宿ったバルバロイの因子には
影響を与えられない…？
キラーズの力をもってしてもおじい様から
バルバロイ部分だけを除くなんて出来なかった
同じようにアーサー王の穢れだけを
聖域化で払うことなんて、不可能…
今のまま聖杯を使えば、ブリテンの穢れに加え
アーサーのバルバロイ化まで併発する恐れもある
- ランスロットたちが選んだことだ
- ガラハッドは優しいな
ランスロットとアーサー
ふたりの選択を尊重しよう
…そうだね
なにが正しいかなんてわからないけど
死が免れないのなら
一番信じている人に
見送ってもらえるなら
ガラハッドは優しいな
ノワールも苦しそうな顔をしている
だろう？
だけどふたりの話を聞いたら
止められないと
あるいは最初から
そのために今日まで戦ってきたのだとしたら
買いかぶり過ぎだ。ガラハッド
俺はそこまで利他主義じゃない
「そのために」…って
どういうこと？
…
マーリンさんの言葉を借りれば──
「世の救済へ導く妖精からかかった呪いは
世の崩壊を招くバルバロイを誕生させる」
自分では止められないバルバロイの王たる力
討つには強き他者の力が要る…
そのアーサーを超えるためにランスロットは
最たる強さを求め、努力し続けたんじゃないのか
………そうでもある、が
それだけのための強さではない
ランスロット…
…だから、その…わかると言うには
ガラハッドは相応しくないかもしれないが
ランスロットの苦しみは、少しは理解したいから
なんというか、言葉が出て来ないが…
…ありがとう。ガラハッド
お爺様も…安らかに逝かれたはずだ
ガラハッドへの、気遣いだったのかもしれないが
ああ
望む相手に、望ましい最期を与えることは…
…その道しか残っていなかったのだとしても
きっと、罪や咎ではないはずだ