大丈夫か、ディナタン
大丈夫だよ、兄さん
兄さんこそ大丈夫？
- 大丈夫だ
- 少し疲れたな
俺のことなら心配無用だ
野宿なら慣れてるからな
でも歩いても歩いても
この森から出られない
ここどこなんだろう…？
知っている気もするけど
私、少し疲れちゃった
少し疲れたな
無理しないで、兄さん
もう何時間も歩き通しだもん
私も少し疲れちゃった
…でも、がんばるね
学園が襲われて、アーサー様に異変が起きて
…私たちだけがこの森に飛ばされた…？
あれから何日経ったのかもわかんない
兄さんはわかる？
いや…わからない
夜も昼もわからない
兄さん、ちゃんと眠った？
ディナタンは？
…わかんない
俺もだ
でもこんなに歩いているのに
私たちお腹も空かない…
気づいたらこの森にいて…
それで…
とにかく脱出して
学園に戻らないと
学園…
…そっか、そうだね
私たち、戻らなきゃ
みんな大丈夫かな…
がんばろう、兄さん！
…あ
どうした？
コート、ほつれてる
繕ってあげるから脱いで、兄さん
できた！
…母さんに似てきたな
そーう？
母さんほど上手には縫えてないけどね
…あれ？
ねえ、声が聞こえない？
声だって？
どこから？
あっちのほう…ほら
…歌？
そう、歌が聞こえる…