…不思議だな
ここに来たのは久しぶりのはずなのに
なんだか、ついこの間までいたみたいだ
兄さんも？実は、私も
なんでだろうね
さぁ…今思えばあの森、この湖に
雰囲気が少し似ている気がする。だからかな
…そうかもね
ディナタンはなにを持ってきたんだ？
これ…『不格好なコート』団の徽章
ブライアンさんの徽章は私がもらって
代わりに私のものをお別れの品にと思って
そうか
ブライアン、きっと喜ぶよ
兄さんはなにを持ってきたの？
…仮面？
ブライアンさん、そんなの持ってた？
- 父さんのものだよ
- ブライアンの友達のものだよ
これは…父さんのものだよ
父…さん…？
誰の？…私、たちの？
そう。俺たちをずっと守っていてくれた
優しい父さんが遺していったものだ
私…父さんのこと…
大丈夫
父さんはわかってくれる
それに今も見守ってくれているから
俺とディナタンを
でも…父さんとは
ここでお別れしなきゃならない
これは…ブライアンの
とても仲の良かった友達のものだよ
…？
私も知っている人？
知っているけど知らない
…そんな人かな
…どういう、こと？
いつか話せるときが来たら話すよ
もう！
ランス兄ちゃんみたいなこと言って
…私たち、忘れてていいのかな
忘れてしまうのは仕方ないことなのかな
この世界で
…わからない
けど、仕方ないことなんだ。きっと
…うん
どこかにほんのちょっとでも
記憶は残ってないのかな
どこかにきっと思い出になって残ってるよ
この湖みたいに
…そうだといいな
だから今はこれを返そう
俺たちの想い出のこの湖に
さよなら…ありがとう、ブライアンさん
さよなら、ブライアン
さよなら…父さん
父、さん――…？
本当に大切なことをお前たちに
教えられなかった
何故お前が継承者に選ばれたのか
何故お前でなければならなかったのか
すべては妖精の願い
いや――…
…さん、兄さん！
へっ！？ど、どうしたディナタン
どうした、はこっちの台詞だよ！
湖を覗き込んだまま全然動かないんだもん
いったいどうしたの？
いや…なんでもない
もう、しっかりしてよね。兄さん
（今のは――…）