もう平和なんざ来ねえ
…知らなかった
ペシミストなんですね、モルくん
バルバロイの増殖は止まらねえどころか
その速度は増し続けてる
聖杯がなきゃ
ブリテンは呑み込まれて終わりだ
…それを知りながら
アーサーは聖杯を壊した
どういう動機かなんて知りたくもねえが
ペシミストって言やあアーサーのほうだぜ
世を儚んで全部ぶっ殺しちまおう…なんざ
ハタ迷惑にも程がある
…あなたも
私の目にはそう見えました
あ？
いつもいつもいーっつも
周りに当たり散らしてるからですよ～
王たるもの、少なからず下々の者を
ないがしろにせずにはいられぬからな
オレは名を馳せてェだけさ
想像しただけでもシンパイで胸が躍るぜ
『モルドレッド』はどう語り継がれンのか
栄誉？不名誉？まさかと思うが小悪党？
王殺し、謀反人、地獄行き、なんでもござれだ
暴君としてでも歴史に名を刻む
名を出せば誰もが顔をしかめるようにな
オレの名が後世まで多くを不快にする
これほど痛快なことはねえぜ
歴史も伝説も
消されちゃたまんねえよ
禍々しい墓場だ
この『虐殺の橋』はね
あまねく過ちの墓標
お揃いでどうも
なにもない丘陵地帯だからこそ穢れを溜めこめる
大きな墓場も設けられる…♪
これは高架橋なの
ブリテン中にバルバロイを送り込むためのね
…道理で余らへの派兵が早かったわけだ
このスケールにはローマ皇太子も驚かされるが
建造用の材料も石材や鉄鉱石じゃなく
大量のバルバロイの骸を使ってるんですよぉ
だがアーサーの狙いは
魔女に利するものではなかったな
………黙りなさい
ブリテン各地にいるバルバロイのもとに
アーサーの息がかかったバルバロイを送り込み…
同士討ちさせんとしたのだろう？
余らが従え、敗れたバルバロイたちのように
アーサーはキラーズもバイブスも
妖精もバルバロイも平等に消そうとしている…
そうだよ
だからアンタらも消さなきゃなんないの
儚いな
己の意志を奪われ、従うだけの模造品どもは
王のなり損ないどもが
…クラリス
はい。モルくん
ひとりでやれるな？
先にいくぜ
死地に己のキラーズを置いて行くか？
なんとまあ薄情な
お優しいシスターが
熱心な信徒様をやれんのかよ
………仲は悪くなかったですね
ちゃんと戻って来いよ、クラリス
…やだなあ、モルくん
いつもそうじゃないですか
もうなにもかも遅い…
だあれも幸せになんかなれませんよぉ…♪
さようなら。モルくん
あんな暴君を信奉してどうするの？
万一彼が王になってもそれこそ平和にはならない
そんなの
わかり切ってますよ？
…え？
だからいつも赦しを請うんです
あの人の代わりに。救いがなくとも
「平和にならなくてもごめんなさい」
「幸せにしてあげられなくてすみません」
そして
祈るんです
「せめて、語り草になりますように」
エイメン