スノードン山での戦いに勝利し
ルーシャスはついに聖杯を手にした
その一方、魔女による侵食は進み、ローマ兵は
バルバロイに喰い尽くされようとしていた
多くの兵を犠牲にしても目指す
ルーシャスの願いを当人以外は誰も知る由もない
良いピクニックであったな
聖杯、魔女の根源モルガン、そして勝利
欲するものはすべて手に入った
大姉様は私たちがいただくわ
食べ尽くすにはもう少しかかるけれど
聖杯も、我らのものです
これは私たちがお預かりします
文句はないわね、皇太子殿下？
余らローマはバルバロイの手足
文句など滅相も
いずれにせよ
今のままでは聖杯の力を発揮できないけれど
そのすべを
そなたらは知らぬのか？
私たち魔女は元々モルガンから分かたれた者
彼女の知識の断片は持ち得ているけれど
深層の記憶までは大姉様でなければ…
それを知るのも時間の問題ですけれどね
褒めて遣わすぞ、将軍
…もったいなきお言葉
聖杯を獲得し、更にそれを探しに来た騎士どもを
復帰困難にまで追い込んだ
余が愛するローマの兵たちも
既に大半が喜んでバルバロイに身を捧げた
ブリテン島の東半分はすべてバルバロイの餌場
人的資源が限られているログレスに勝ち目はない
…避難民はいかがされます
なんだそれは？
ロンディニウムにて殉死を拒んだ者…
カレドニアで捕らえた一般市民たちは──
申しておるだろう
「なんだそれは」と
…は
どうして殺して来てくれなかったの、ラシア
…魔女モルガンを制するとともに
聖杯を持ち帰ることに全力を尽くしました
そしてこの勝利は、フレンとローラ
あなたたち姉妹に捧げるための──
そんなのどうだっていいの
どうして妹の仇を殺して来てくれなかったの
すまぬな将軍、下がってくれ
余の愛しき小鳥は機嫌が悪いようだ
…ルーシャスくんは聖杯になにを願うの？
さてな
ルーシャスくんはバルバロイに従ってまで
なにをしようとしているの？
語ったはずだ
不眠の軍勢とともに成す
民たちの眠れぬ日々からの解放
すべての道が君へと繋がる
『ローマによる平和』──
バルバロイこそ因縁の始まりでしょう
恨みこそすれ、それに平伏して虐殺まで…
私、ルーシャスくんがわからないまま
どこを目指している人なのかわからないまま
フレン──
さえずりはときに耳障りだよ
ひとりの人間が他者に理解し切れるほど
単純にできていると思うかね？
余にしてみれば
そなたこそ不合理の塊だよフレン
余の籠に飛び込み、かしましく鳴くだけ
短絡的で愚かしくしか見えぬがな
わからぬよフレン
そなたは余になにを求めている？
…私も、君が見えないよ