私は「聖杯へ導く妖精」の巫女
つまり、妖精の力の受け皿として育てられたの
妖精が加護を施した湖に、小さい頃から身を浸し
擬似的な妖精の力をこの身に宿した
それは何のためだったかわかる？
ガラハッド
えっ？
妖精がいなくなったときの保険では？
そう。そのための聖杯城の巫女
お役目が「ふたつある」って言ったの覚えてる？
…ひとつは聖杯探索の指針となること
聖杯の場所を示すこと、だな？
そのひとつ目は、妖精不在のなかで
バルバロイの脅威に立ち向かうための手段
そしてふたつ目の役目は本来…
妖精を途絶えさせないようにするための方法
………妖精の身代わりとなること
姉上が、妖精の身代わり………！？
世界救済のために必ず妖精が
犠牲にならなきゃならないのを避けるために
つ、つまり
フィエナが犠牲になることで…
初めは軽い気持ちだったの
妖精さんの聖杯探しのお手伝い…ぐらいの
妖精の身代わりになれるこの力は
聖杯探知の力を得るなか副次的に身に付いたもの
所詮『妖精まがい』
全然完璧なものじゃない
本物の妖精の因子を借りて
…はじめて身代わりになれる
私の命で
サラスへの道を拓ける
だ、だめだよ！
あなたがいるから出来るの、ディナタン
マーリンがいなくなった時点で
本当なら私たちに打つ手はなかった
ノワールがディナタンを守り続けてくれたから
私がこうして役目をまっとう出来るんだよ
…こ、こんなことのために
守ってきたわけじゃない…！
- 誰も喪いたくないから
- 母さんの遺言だから
- たったひとりの家族だから
誰も喪いたくないから──
私もそうだよ
きっと皆そうだよ
ランスロットも、ディナタンも
同じ気持ちなんだよ
母さんの遺言だから──
お母様もまた
妖精ニニアンのお付きだったんでしょ？
この事態も予見してた
ノワールなら守り抜けると信じていた
平和な日々を夢見てたんだよ、きっと
たったひとりの家族だから──
だから、身を粉にして守り抜いたんだよね
傭兵から…騎士となって、継承者として
私もたったひとりの家族を守りたいの
自分がどうなったとしても
…どうしたら、せ、正解なんだよ
あ、あ、アタシ、なんも言えねえ
ディーナが死ぬのはぜってー避けてえ
けど、それじゃあ世界が終わる
み、身代わりを頼みゃあ
当然ディーナが罪悪感でクソ苦しむ
あなたはどうしたい？
ガラハッド
あ、姉上…！
ガラハッドは………っ
私、いくじなしだったんだ
おじい様や銀卓騎士の皆の意志を聞いても
円卓の騎士たちの選択を目の当たりにしても
聖杯を得た時点でこのことを私が言い出せば
事態はこんなに悪化しなかったんだよ
妖精マーリンも救えたはずなの
なのにずるずると…ずっと見過ごしてきた
本当のことを言えなかった
怖くて、私に出来ることから逃げてたの
死が怖くない者など…いない
けどランスロットやノワールを見て思ったの
多くの遺志が受け継がれているのを
ディナタンが死ぬのは駄目だよ
巻き込むものが多すぎる
それにこれから聖域化が待つ継承者を
支える家族が必要だもん
…おじい様もきっとさびしいのが辛かったんだ
それをノワールのお父さんが守ってくれてた
ノワールのお父さんがおじい様に家族をくれて
家族はおじい様を支えてくれたんだよ
私も…おじい様の遺志を継ぐ
どんづまりの今、私にならできることがあるから
ガ、ガラハッドはどうなるんです！
ガラハッドの家族はもう姉上しかいないのに！
置いてくよ。ガラハッド
息苦しくても生きて
この世界で出来る限り長く
きっと正しい道なんてないから
私が命を絶てば聖遺物化される
皆の記憶から私の存在は消えてなくなる
バイブスで繋がったガラハッドと
継承者だけは私を記憶に留めることになる
………だから道を選ぶ権利があるとすれば
ノワールとガラハッドのふたり
だけどお願い
私に…家族を護らせて