…
…やっぱり止めよう、行くの
…えっ？
妖精の森に行ってくるって言ったら
マァルも嫌そうな顔してたし
「また迷子になったりすんなよ」って
送り出してはくれたけどね
- 心配してるんだよ
- あれは迷子だったのか？
- 悪い場所じゃなかった
マルディサントは
ディナタンを心配してるんだよ
うん。わかってる
マァルは私のこと、すごく思ってくれてる
その気持ちは、ちゃんと伝わってるから
マスターだから？
…ううん。友達だから
あれは迷子だったのか？
確かに、ずっと森から出られなかったけど
…ううん。多分、違う気がする
上手くは、言えないけど
でも、私たちが森にいた時間はきっと
意味のある時間だった…って思う
今思えば、いいところだったのかもな
穏やかで、つらいこともなにもなくて
あそこにいた時間も悪くはなかった
兄さん…
…悪い
こんなこと、言うべきじゃなかったよな
…いいんじゃないかな。私しか聞いてないし
それに…実は、私もちょっとだけ
同じこと思ってたから
…あの森で私たち
ふたりだけで暮らしてたんだよね
ああ
こうして近くにいても、まだ感じる
微弱だけど…あったかいなにか
なんで私たちがあそこに飛ばされたのか
そして外に出られなかったかはわからないけど
でもやっぱり…森は
私たちを守ってくれてたような気がする
…そうだな
俺もそんな気がしてるよ
…私ね。ちょっとだけ思うんだ
あのまま、森にいれば…
守られていればよかったんじゃないかって
あのまま森を出なければ、
なにも知らずにいられたのかなって…
学園で出来た友達、先生
たくさんの人が傷ついて、亡くなって
仲間だった人と、戦うことになって――…
…なんでこんなことになっちゃったのかな
ディナタン…
…ごめん。駄目だよね、こんなこと思っちゃ
みんな、がんばって立ち向かってるのに
あの森に行ってみようと思ったのは
気持ちを整理したかったからなの
受け入れられないこと、たくさんあるけど
…でも、前に進まなきゃって思うから
だから、後ろ向きな気持ちは
この森に置いていこうって
- 無理に頑張らなくていい
- 一緒に頑張ろう
…無理に頑張らなくていい
急にいろんなことがありすぎたし
ううん。駄目だよ
ここで頑張らなきゃ、いつ頑張るの
だって私は継承者のキラーズなんだから
…言い出したら聞かないのは相変わらずか
じゃあ、せめて無理だけはするなよ
弱音ならいくらでも聞くからさ
えへへ…ありがとう
頼っちゃうから
ああ
一緒に頑張っていこう
任せて。兄さんの力になれるよう
私、精いっぱい頑張るよ
だって私は兄さんの武器なんだから
兄さんと話してたらなんとかなる気がしてきたよ
やっぱり兄さんは頼りになるね
当たり前だろ、兄貴なんだから
うん…そうだね
そうだよね、兄さん