で、ガウェインの憧れてる
ふたりのヒーローって誰なんだ？
ひとりはアーサーか？
おうよ
アーサー様は
王様だってのに誰よりも前に出て行ける方だ
カッコいいよな！
シビれるよな！憧れるよな！
しかも、それだけじゃなくて
俺みてーに強さにムラッ気のあるヤツを
円卓の騎士に取り立ててくれた
言ってみれば恩人なんだ
だから
俺は一生あの人についていくって決めてる
尊敬を通り越して
もはや忠犬みたいになっちゃってるよね
うっせ！
それだけ慕われたら
アーサーも嬉しいだろうなあ、きっと
で、もうひとりのヒーローってのは？
…俺とラグネルが子供の頃さ
住んでた街が野盗に狙われたんだ
そいつらは入れ替わり立ち替わりやって来ては
街を荒らしていった
抵抗の意志を見せる大人たちもいたんだけど
次第にその数は減って、最後は泣き寝入り
数十人くらいの規模になっていたから
無理もないんだけどな
俺とラグネルは、もうこれ以上我慢できねえって
ヤツらのアジトに乗り込んだんだけど
ガキふたりじゃ大人にはかなわなくてよ
すぐに取り押さえられて、やられそうになった
そんなときさ。ひとりのローマ兵士が
俺たちを救ってくれたんだ
しかも、そのあと野盗を壊滅させて
俺たちの住んでた街も救ってくれた
もうめちゃくちゃ強かったよね！
- それはすごいな
- 話を盛りすぎじゃないか？
たったひとりで？
それはすごいな
俺たちもビックリしたぜ
それまでみたどの大人よりも強かった
いや、今でもあの人より腕の立つヤツって
ほとんど見たことねーかも
一介の兵士がそんなに強かったのか？
名のある将軍とかだったんじゃないか？
あの人の素性は
俺たちも良く知らなかったんだよ
あんまり自分のこと
言いたがらねえ人だったから
俺たちの街に来た理由も
「たまたま通りがかった」とか言ってたしな
たったひとりで野盗を壊滅？
それは話を盛り過ぎじゃないか～？
それが本当なんだって
信じられねえだろうけどさ
ガウェインはともかくとして
あたしも見てるんだから、本当は本当だよ
俺はともかくとして、って
どういうことだよ
ラグネルがそういうなら信じるか
ガウェインはともかくとして
だから！俺はともかくとして、って
どういうことなんだよっ！？
その人は野盗を懲らしめたあともさ
壊された家の修理とかケガ人の手当てとか
みんなのためにいろんなことを
してくれたんだよね
誰かが口にするより早く
願いをくみ取ったみたいに颯爽と現れてさ
そんな人が本当にいるんだなあ
そりゃあガウェイン少年も
「俺もヒーローになる！」って言いだすよね
あんなすごい人を見ちまったら
憧れるに決まってんだろ？
気持ちはわかるけどね
昔っから変わらないんだな、ガウェインは
ところでラグネルは？どんな子供だったんだ？
ラグネルこそ今と変わんないだろ
ガウェインだけじゃない？
あたしが変わってないって思ってるのは
そうか～？
今も昔もずーっと変わらずお転婆だろ
あの人に言われただろ
向こう見ずなところは直したほうがいいって
ガウェインこそ言われてたでしょ
周りをちゃんと見ろとか
まぁまぁ…
それにしても
その人に大きな影響を受けたんだな
たぶん俺はずっと
ししょー…師匠？
そう、ししょー。たたずまいに師匠感があったし
名前も長かったからさ
師匠感ってのはよくわかんないけど
それで、その人は今、どこでなにをしてるんだ？
それだけすごい人なら、どこかの戦場で活躍して
有名になってるんじゃないか？
そうだな
活躍の場をローマの外まで広げてたりするかもな