お、おい、ノワール！どうした！？
どこへ行く！？
いいから
いいから、って…
なんの説明もないんだが！？
急ぎの用だというからついてきたが
いったいなにが――
アーサー様！
アーサー様！お元気でしたか？
ずっとお見掛けしないので気になってて
なんだか、顔色悪いですよ？
B級グルメが足りてないんじゃないですか？
わー！アーサーさまだー！
ずっと来てくれないから、寂しかったよ～
みんな…
…すまない。少し立て込んでいてな
不安定な情勢で皆には気苦労をかける
心配なことも多いだろうが、しばし堪えてくれ
私たちが心配なのはアーサー様のことです
無理してるんじゃないかって
俺の？
私たちのためなら無理をしてでも頑張ってしまう
アーサー様はそういうお方ですから
アーサー様はいつだって
私たちを守るために戦ってくれてる
だからこそ私たちも
あなたが率いるログレスを信じられる
信じて、頑張れるんです
だからアーサー様もあまり無茶しちゃダメですよ
まさか、俺を心配してくれるとは
…皆、優しいな
俺が王として至らないばかりに
皆を危険に晒してしまっている
…もっと俺が強ければ
聖杯や…不確かな伝説にすがらずとも
すべてを引き受けられる強い王であれば
アーサー…
- 至らなくなんかない
- 悪いのはルーシャスや魔女だろ
- 俺も守れなかった
至らなくなんかない
あんたはあのときできることをした
俺たちはそれを知ってる
この町の人だって
お前がそう言ってくれるのはありがたいが
王は結果がすべてだ
俺の采配の結果、多くを守れなかった
だったら、ついてきてる俺たちや
心配してくれる町の人は？
それだって、あんたが王として
やってきたことの結果だ
あんたは悪くない
悪いのはルーシャスや魔女だろ
そうかもな
だが向こうには向こうの考えがある
敵は俺たちの都合よくなど動いてくれない
そう王は承知していなければならない
そうやって全部自分で抱え込んで
それが、あんたが目指していた王の姿なのか？
それは…
あんただけじゃない
俺も守れなかった
俺は…継承者なのに
ノワール…
すまない。お前にそんなことを
言わせるつもりはなかった
…まったく、俺が弱音を吐いてどうするんだ
お前のほうがよほど背負うものが大きいのに
みんながあんたを心配するのは
あんたが王様としてちゃんとやってきたからだろ
いつも街の様子に目を配って
学園を守るために奔走して
そんなあんたをみんなが見て知ってるから…
だからあんたを王と認めて、ついていくんだ
ノワール…
…あーあ。なんか、腹減ったな
ほら
ホットドッグ…
さっきあんたが町の人に囲まれてるときに
買っておいた。俺のおごりだ
…こういうのは初めてだな
…立派な王になると、誓ったんだ
あの頃、ホットドッグをほおばりながら
民と同じ目線に立ち、民とともに生きる
そんな立派な王様になると
…現実をまだなにも知らなかった子供の
青臭い誓いさ
でも、忘れてないんだろ
…ああ。そうだ。忘れてはいない
忘れたりするものか
あの青い誓いは今も俺の胸にある
３人で食べたホットドッグの味とともにな