クラスのみんなにも手伝ってもらったけど
それらしき情報は集められてないな
モルドレッドに声かけてきた
あの男の居場所もわからないし…
そもそも手がかりがほとんどねえからな
希望があるとすれば…
すれば？
向こうが
またこっちにすり寄ってくる、だ
俺たちが調査してることがバレたら
逃げられないか？
それはどうだろうな
今のままなら逃げる理由は少ない
こっちは未だにヤツの名前もわからねえどころか
ほとんど情報を得られていねえ
告発すらできねえんだ
むしろ、わざわざ逃げるほうが怪しくなる
それに…
向こうにとっても都合はいいはずだぜ
欲しかった飾りが自分を探してるのはな
- 擁立できるものがあればいい、と
- このままずっと進展なし
擁立できるものさえ手に入れば
黒幕は得をするってことか？
わかってきたじゃねーか
でも、手に入っても
飾れなきゃ意味はなくないか？
その判断は手に入れたあとにすればいい
このままずっと進展なしで
永久に見つけられないなんてことないよな？
えらく消極的だな。最後まで付き合うって
オレに言ったてめえはどこ行ったよ
ここまで手がかりが得られないとは
思ってなかったからさ…
本当に、見つかるのか？
釣り針は垂らしたんだ
あとは待つしかねえだろ
わかったよ
なあ、ちょっといいか？
聞きたいことがあるんだ
なんだよ
いろんな人が
あんたはアーサーを嫌ってるって言ってた
正直
俺も最初はそう思ってた
でもあんたはアーサーへの侮辱に怒り
アーサーへの反感を煽るウワサを否定してる
本当のあんたはどっちなんだ？
オレはな、ＧＳが嫌いなんだ
え…？
青春だ絆だと甘い言葉で煽り立て
誰かに犠牲を強いてたアーサーも嫌いだ
それは…
だが、誰かを犠牲にしなけりゃ
誰も守ることができねえ
この世界は
そういうクソみたいなシステムになってる
本当のオレはどっちか、か…
どっちなんだろうな
オレはアーサーが嫌いだ
だが…
ヤロウはヤロウで
苦悩があったんだろうと理解してるつもりだ
え…？
ノワール。アーサーを見て
奴が苦悩してると思ったことは？
しばらく前まではなかった
アーサーはいつも明るくて…
誰かを、みんなを励ましてくれる
明るくて強い人だったから
そうだ
ヤロウは常にそうあらんとした
王は苦悩を見せられない
なぜなら王が苦悩すれば民は惑うからだ
故にどんな苦悩を抱えていようとも
それを表に出してはならない
王は常に堂々と振る舞い
その口から語られる未来は
明るくなければならない
希望が無ければならない
――その目に映る未来が
どれほど絶望に満ちていようともな
アーサーには…絶望の未来が見えてた…？
さぁな
オレはアーサーじゃねえから知らねえ
だがヤロウも
能天気に王をやってたわけではねえだろうよ
アーサーは
俺が知らないことを知ってるようだった
俺が知らない
そして、多くの人間が知らない
苦悩、してたのかな。アーサーは
オレは、今のアーサーは
ヤロウの苦悩の表れだと思っている
え？
苦悩して、苦悩して
苦悩して…その先で決意した
だから、
オレはそう思ってる
苦悩に、耐えられなくなって…？
そこまでは、わからねえ
正直に言うとな
オレはアーサーこそが理想の王だと思っていた
どれほどの苦悩があれど、それを漏らさず
人々を導く者として希望を与え続ける
皆が思い描く『理想の王』の体現者だとよ
確かに…こんなことになる前の
学園にいた頃のアーサーは俺の目にもそう映った
そうだ。とてつもなく
本当にとてつもなく気に入らねえが
あの甘い言葉を並べる男こそが
理想の王だとオレは認めていた
苦悩を隠し、すべてを背負い
臣民のために身を尽くす王
人々が求める王の姿を見せ
その裏で最善策を求めてもがき続ける
そういう…孤独な王だ
苦しい道だな
ああ、そうだ
だが、それこそが王の道であり…
オレの理想たるアーサーが歩んでいた道だ
じゃあ、今のアーサーは…