この森の奥に
例の教団のアジトがあるのか
おそらくな
まだ合流していなければいいのだが
ふたりとも、止まって
バルバロイ！？
クレア、これは…
………
ハァ、ハァ…
犬に噛まれたキズが思いのほか深くて
歩いてくるのに手間取っちまったが
もう少しで教団のアジトだ
計画は失敗しちまったけど
まだすべてが終わったわけじゃねえ
「俺は連続殺人鬼『血の蒐集家』だ
怒らせたらどうなるかわかってるだろう？」
…とでも言ってヤツらを脅して
魔力を手に入れればこっちのもんだ
ほう
怒らせたらどうなるんだ？
え？
う、うわああああああああ！！
うっ！？
こ、これは…
やはり…
血の蒐集家の怒りを買ってしまったわね
本物のってことか？
ええ
間違いないわ
ひどい殺されかただ
「忘れたほうが良かったと思えるくらい
悲劇の記憶を刻んでやる」か
- 本当に悲劇だけなんだろうか
- 記憶を誰に遺したかったんだろう
忘れたほうが良かった記憶って
悲劇だけなんだろうか
どういうこと？
ジャスパーにしてみれば
幸せだった頃の記憶を忘れられれば
こんなことには
ならずに済んだかもなってさ
そうね
そうかもしれない。けれど…
守りたい記憶があるから強くなれる
…そんなこともあると思うわ
クレア…
ジャスパーは家族も知り合いも
いなかったと聞いた
じゃあ、血の蒐集家は
ジャスパーのこの姿を誰に見せたかったんだ？
…
血が乾ききっていない
あいつはまだこのあたりにいる
今から追うつもりか？
お爺ちゃんの仇がすぐそばにいるの
逃がすわけにはいかないわ
…と言いたいところなのだけれど
今回はやめておいたほうがよさそうね
いいのか？
ずっと探していた仇なのに
もちろん、できることなら
今すぐ追いかけたいところだけど
わたしたちはこれまで
不審な襲撃を二度も受けている
恐らく、これは警告だと思うわ
警告？
まだ雌雄を決するには早い
そういうことよ、きっと
なるほど…
成長したな、クレア
少し前までのお前なら
制止の声も聞かずに走り出していただろう
そうかしら
頼りになる助手たちに感謝しないとね
ところでノワール
その手に持っているものは？
ああ、そうだった
ジャスパーの遺体のそばの木に
こんなメッセージカードが貼ってあった
「まがいものを見つけ出してくれたことに感謝
２代目名探偵とまみえる日を楽しみにしている」
感謝状？
…いや挑戦状か
- 受けて立たないとな
- 頑張ってくれ
受けて立たないとな、２代目名探偵さん
助手のひとりとして
もちろん俺も協力させてもらう
ふふっ
期待しているわよ
自分は助手ではないと言ったはずだが…
血の蒐集家とやり合うんだな
応援するよ、頑張ってくれ
…負けるつもりはないわ
お爺ちゃんのためにもね
どんな相手が現れても自分が守ってやる
安心しろ、クレア
さて、ふたりともお疲れさま
これで一件落着よ
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