プリンセス・バトルロードを通して
痛感しているんだ
どうした、ノワール？
いや、なんでもない…
そうか？
…あのな
やはり、ガラハッドが女の子らしく
振る舞うなんて無理なんじゃないかと思う
- 俺のことなら気にしなくていい
- 振る舞えてきている
ひょっとして付き合ってる俺に
迷惑をかけてるとか思ってないか？
俺は結構楽しませてもらってるし
女の子らしくなったキミも見てみたい
続けたらいいじゃないか
フィエナのためにもさ
ありがとう
ノワールは優しいな
だが…
どうしてもあと一歩が踏み出せないんだ
女の子らしく
振る舞えてきてると思うけどな
そうだろうか…
いや、これがよくないのかもしれない
ノワールや姉上の言葉を
素直に受け入れられない、この姿勢が
そもそも、どうしてガラハッドは
フィエナのレッスンに付き合っているんだ？
これは恩返し…
いや、罪滅ぼしというのが正しいだろうか
恩返し？罪滅ぼし？
少し長くなるが
聞いてもらえるか？
ああ、もちろん
どこかで話したかもしれないが
僕には家族がいない
バルバロイに母を殺され
ひとりで泣いているところを
コルベニック城のみんなに保護された
コルベニック城のみんなは
僕を快く受け入れてくれた
なかでも姉上は
僕に特別優しくしてくれた
いつもそばにいてくれて
服やおもちゃをたくさんプレゼントしてくれた
でも僕はそんな想いを無下にした
姉上を拒絶したんだ
フィエナを拒絶していた？
…どうして？
ひとりぼっちになり生きる目的すら見失った僕に
優しくする理由がわからなかったからだ
優しい顔の裏で
僕を嘲笑っているのではないかとすら思った
- 大変だったんだな
- フィエナはそんな子じゃない
キミの過去にそんなことがあったのか
大変だったんだな
当時の僕は神様を呪ったよ
「なぜこんな目に遭わせるのか」と
でも、そんな僕を
姉上が救ってくれたんだ
フィエナはそんな…！
そうだ、ノワール
姉上はそんな人じゃない
僕はそれをよく知っているんだ
僕がどれだけ心にカギをかけても
姉上はそれをこじあけてきた
そしてこう言ったんだ
「私、きょうだいが欲しかったんだ」って
あまりにあっけらかんと言うものだから
そのときは思わず吹き出してしまったよ
でも、おかげで心がすっと軽くなった
吹きだした僕を見た姉上は嬉しそうに笑って
それまで以上に優しく接してくれた
お爺様の前に僕を連れて行って
「妹ができたの！」と紹介してくれたときの
ふたりのあたたかな微笑みは
今でも忘れられない
そんな優しい姉上を
僕はまたキズつけてしまった
僕がワガママに騎士道を押し付けたせいで
姉上に嫌われてしまった
- 騎士道と女の子らしさは両立可能
- 絆はそんなカンタンに壊れない
- フィエナ、悲しかったろうな…
騎士道と女の子らしさは両立できるさ
ガラハッドにはその自信がない
レッスンもうまくいかなかった
たった一度の失敗で諦めるのか？
キミの騎士道はそんなものなのか？
僕の騎士道…
そうだな、こんなことで諦めたら
つまらない騎士道で終わってしまう
たった数回のケンカで…
いや、ケンカにも満たないただの言い合いで
家族の絆は壊れやしないよ
むしろケンカを重ねて強くなっていくものさ
予想していなかったことに驚いたかもしれないが
フィエナはキミを嫌いになってなんかいない
むしろ本音をぶつけてくれたことを
喜んでいるんじゃないかな
ノワール…！
そういうものだろうか
ああ、そういうものだよ
ふたりのあいだに
そんなことがあったのか…
フィエナ、悲しかったろうな…
何度も何度も同じ過ちを繰り返す…
僕はなんて愚かなんだ…！
でも、もしも本当に辛いのなら
レッスンを続けなくてもいいと思う
フィエナだって無理強いはしないはず
あとはガラハッドがどうしたいかだよ
僕は…
まだ、わからない
少し考えさせてくれ