エレインお姉ちゃん！
ノワールお兄ちゃん！
すっかり元気になったみたいね
よかった、安心したよ
でも、どうしてあのとき
ひとりでここを出て行ったんだ？
ごめんなさい…
ぼく、どうしてもお姉ちゃんに会いたくて
えっ？
私に会いに…？
お屋敷で使用人さんたちが
お姉ちゃんが大ケガしたって話してたから
お見舞いをしてあげたかったんだけど…
お姉ちゃんたちに迷惑かけちゃった
本当にごめんなさい
- 無事でよかったよ
- みんなに迷惑をかけるな
無事でよかったよ
トビーがいなくなったときいて
エレインなんか半泣きだったんだぞ？
せ、先輩っ！
そんなことは…ありますけど
無茶をするな！
みんながどれだけ心配したと思ってる！？
ううっ…
ま、まあまあ、ノワールさん…
先輩
そんなに怒ったら可哀そうですよ…
私があんなことを言ったから
ロンディニウムに行ったんだとばかり…
あんなこと？
お父さんの…ことだね
ぼくね
なんとなくわかってたんだ
ロンディニウムの戦いのあと
たくさんの人が街を出て行ったけど
戻ってきた人も大勢いた
でも、お父さんはいなかったんだ
だから、なんとなくわかった
トビーくん…
あのとき嘘をついてしまってごめんなさい…
ぼく、目はよく見えなくなっちゃったけど
その代わりに、人が話してるときに
気持ちがわかるようになった気がするんだ
あのときのお姉ちゃんは
ぼくのために泣いてくれてた
悲しかったけど、嬉しかったよ
ぼく、かわろうと思うんだ
お母さんが死んじゃってお父さんも戻ってこない
もう生きていたくないって思ってたけど
エレインお姉ちゃんがここに連れてきてくれて
みんなのお手紙を読んでくれた
元気になって
お姉ちゃんたちに恩返ししたい
早く目を治して
いろいろ見られるようになりたい
お兄ちゃんが着てるっていう変なコートとか
お姉ちゃんのお顔とか！
私の顔なんて
別に見る必要ないわ
だってお姉ちゃんは
『アストラットの美姫』なんでしょ？
お姉ちゃんの心はほかの誰よりも
キレイに見えるよ？
- エレインほど綺麗な女性はいない
- …だってさ、エレイン
わかってるな、トビー
そのとおりだ
エレインほど心の綺麗な女性はいない
だよね！
…だってさ、エレイン
自信をもっていいよ！
俺もトビーの意見に賛成だ
キミほど心の綺麗な女性はいないと思う
せ、先輩！
や、やめてください、恥ずかしいです…
あははっ
どうしたんだ、トビー
突然笑いだして
ノワールお兄ちゃんと話してるときはね
エレインお姉ちゃんの心が
すごくポカポカしてるように見えるんだ
これってエレインお姉ちゃんが
ノワールお兄ちゃんのことを好…
トビーくんッ！？
余計なことを言うと怒るわよ！
ご、ごめんなさい！
まったくもう！
救えたな
え？
トビーを救ってやれたな
『アストラットの美姫』が
…はい
まだはじめの一歩を踏み出せたくらいですけど
ここから自信を持って歩いて行こうと思います
それで、あの…さっきトビーくんの言ったこと
真に受けないでくださいね！？
トビーの言葉？
ああ、「変なコート」のことか？
気にしてないよ、言われ慣れてるから
でも、ちょっとサイズが合ってないだけで
そこまで変だとは思わないんだけどなあ
…え？
あ、ああ、はい、そうですね…