このサンドイッチ、全部ラシアの手作りか？
すごく多いな
ふたりで食べるつもりだったから
ちょっと多めに作っちゃったんです
なるほどね
ヴェルナルス先生ってよく食べるのか？
そうですね、体も大きいですし
たくさん召し上がりますよ
どれもおいしそうだ
このなかで一番の自信作は？
この鶏肉を挟んだものでしょうか？
スパイスで焼いた鶏肉と
クリーミーなソースが合いますよ
へえ！
じゃ、まずはそれから食べてみようかな
…うん！
ソースが甘酸っぱくて、すごくおいしい
隠し味にヨーグルトを少し入れてます
なるほど
…そういえば、なんで先生とランチを？
このあいだも買い物に行ったって話をしてたし
私はローマ出身で、ヴェルナルス様には
小さな頃から良くしてもらっていたんです
ふうん、小さな頃から…
親戚かなにかか？
はい。といっても、遠い親戚ですけどね
数年に一度、顔を合わせるくらいでした
ただ…私にとってはただの親戚ではなくて
命の恩人、という部分が大きいです
命の恩人だって？
私の実家はローマの田舎にあって
そこで牧畜業を営んでいました
ああ、だから乳搾りだったり
ヨーグルトを作ったりができるのか
はい。ただ、あるときふとしたトラブルで
家が経営難に陥ってしまって…
私はお金と引き換えに
売られそうになりました
そんなときに私を助けてくれたのが
ヴェルナルス様だったんです
ヴェルナルス様はそれからしばらく
私の面倒を見てくれただけでなく
「騎士になりたい」と言い出した私を
全面的にバックアップしてくれました
おかげでこの学園に通うことができて…
フレンとローラとも再会できたんです
- ふたりも驚いただろうな
- なにかの思し召しかも
- 俺もラシアと出会えて良かった
ローマから離れたこの地で再会なんて
ふたりも驚いただろうな
それはもう、すごく
でも驚きよりも嬉しさが強かったです
３人で抱き合って泣いてしまったくらいです
良かったな、本当に
はい！
３人はそういう運命だったんだろうな
神様の思し召しっていうか
私もそんな気がします
そうでなければ、ここログレスで
ふたりと再会なんてできないと思います
本当にこの学園に来てよかった
俺もラシアと出会えて良かったよ
本当ですか！？
ああ。こうやってふたりで楽しく
美味しいランチを食べられるしな
あ、ありがとう…
…どうした？顔、赤くないか？
えっ！？き、気のせいですよっ！
ヴェルナルス先生にフレンとローラか
あの３人と知り合いなら
ルーシャスのことも昔から知ってるのか？
まさか！あの方は皇族ですよ！？
この学園で初めてお目にかかりました
それもそうか
あの…ノワール
お願いがあるんです
私とヴェルナルス様が親戚だってこと
他のみんなには黙っていてもらえますか？
私みたいなおっちょこちょい娘が
身内だって知られてしまったら
ヴェルナルス様の迷惑になってしまうから…
- わかった、言わない
- 知られても問題ないと思う
- もうバレてるんじゃないか？
わかった。言わない
でも、先生は迷惑だなんて思ってないはずだ
えっ？
自分のことを想って
一緒にご飯を食べようと誘ってくれる
そういう存在って
なによりも大事にしたいもんだよ
だからそんなに自分のことを
卑下しなくてもいい
知られてしまっても問題ないと思う
ヴェルナルス先生は
そんなことを恥ずかしがる人じゃない
そう、でしょうか…
みんなもそれを知ったからって
ラシアや先生を色眼鏡でみたりしないよ
もうバレてたりして
私とヴェルナルス先生が
知り合いだってことをですか？
あ、いや、そっちじゃなくて…
ごめんごめん、俺の勘違い
大丈夫だと思う。バレてないと思う
励ましてもらえるのは嬉しいですけど
おっちょこちょいな自分がいつも嫌になります
気にしない気にしない
同じ失敗を繰り返さなければいいのさ
俺だっていつも失敗ばっかりで
妹にドヤされてるよ
そうなんですか！？
実はそうなんです
あの…ありがとうございます
少し気持ちが楽になりました
俺でよければ
いつでも相談に乗るよ