『薬は嘘をつかない』と
そう教えてくれた人自身が重病だなんて
笑うわ
その人が──…イゾルデの薬学の師？
久方ぶりに便りが来てね
会いに行ってみれば手遅れなほどで
口はうるさいほど動いてたから…あの人
ふふ。変わったのは体調だけ、残酷ね
狂忘症とかそういった類のものではないの
ただの病魔、ただの──…
…
目処はついているわ。けれどね
商人マルイルに聞いても
薬草の群生地に行っても見つからない
もうこうなれば神頼み…
妥当な流れね
大聖堂の司祭が…どうして知ってるんだ？
そんな特別な薬のことを
人々の懺悔を聞くなかで知ったことか
ツテがあったのか…まぁ色々あるみたいね彼も
だけどその薬の所在を話そうとしない…？
ええ。人々へ救いの手を差し伸べるのが
神の務めだと信じていたのだけれどね
しかし司祭は賭けに乗ってくれた
あとは賭けの対象となる…あなた次第
- 賭けの内容がわからないと
- 俺にできることがあるならやるよ
賭けの内容がわからないことには
事前にそれを伝えたところで
あなたの返事が変わるとは思えない
か、変わるだろ…要件によって
ＹＥＳを言ってもらえるであろうことは
想像に難くない。あなたの性格上ね
俺にできることがあるならやるよ
…賭けの詳細すら
聞いていないのに？
俺にできることを用意してくれてるんだろ？
きっと
………まあ、そうかもしれないわね
賭けの内容は簡単
『うきうきプレミアム感謝デーランチ』争奪
がんばれノワールバトル、だっけ…？
今日の昼、城下町のマーケットの屋台に
『うきうきプレミアム感謝デーランチ』が並ぶ
なあ。まず、なんなんだ…！？
『うきうきプレミアム感謝デーランチ』って
年に一度しか作られないレアで特別なランチよ
我が校のコック長考案でね
兵や民への感謝を込めたものらしいわ
真夏の炎天下で焼き上げる具材は絶品のひとこと
街中でリトルバカンス気分
遠出もままならない市井の人は大歓喜
先着順で、ありつけるのは限られた人数のみ
だから毎年ごった返してしょうがない
さらに今年はその破格で極上の一食を
新進のコックが引き継いだ。誰もが期待大よ
『うきうきプレミアム感謝デーランチ』争奪
がんばれノワールバトルって──…まさか
お前がランチにありつければ、賭けは私の勝ち
ランチが売り切れれば…その時点で私の負けよ
…ただノワール、この賭け…お前に利益はないわ
それでも──
イゾルデ
妹の友達を診てくれたことあったよな
？
そんなことも、あったわね
その知識をイゾルデに与えてくれた人なら
俺にとっても恩人だから
………そう
あと、極上で破格のランチは気になるし
…ふふ
そういうことにしてくれるのね
ランチまで辿り着ければ
そのお代ぐらいは出してあげる
頼むわよ
私のランチはお前にかかってるわ