生きることって博打の連続でしょうけど
負けが込んだその賭けの先にあるのは確実な死
結果が明白なギャンブルなどつまらないわ
すぐに降りるべきよ
にしてはいつも明白な勝利を得るべく
堅実なイカサマを仕掛けているように見えるが？
まだ根に持っているの？
お前が私に格安で譲ってくれた弓のこと
…あれは譲ったのではない
騙し取られたのだ
なんの話だ？
聞くな
情けない話だ
いい取引をさせてもらった話よ
お前の賭けに合意のうえではあった。それはイイ
カモにされたことも情けないが…それもまあイイ
だが
そう容易に渡してもらえるヤツではないぞ
リアムから聞き出したわ
ロンディニウムにいる偏屈な商人が
致死薬を売ってると
俺も知らない顔ではないがイイ噂を聞かない
珍妙な商品を取り揃えつつ簡単には売らず…
相手の財布を空っぽにし
衣服や靴までむしり取るという
商人というより賊の類だ…
どうやってそんなことを？
──ねえ
どうしてヴォールスがついてくるわけ
間もなく始まるカレドニアとの戦に備えてな
ロンディニウムで仕入れをするついでだ
名探偵は店番？
涼しい顔をしていたが
賭けに負けたことがまあまあ悔しかったらしい
お気の毒ね
こうして自分を護衛につけたのは
クレアなりの賛辞と受け取ってもらいたい
私を止めにきたわけじゃないのね
ノワールみたいに
- 考え直さないか
- 気持ちはわからないわけじゃない
…考え直さないか？
賭けの片棒を担いでおいて言うことかしら
探していたものが
致死薬と知っていれば…
師を救おうという私の動機に
共感してくれたわけではなかったの？
気持ちは、わからないわけじゃない
俺も母さんが苦しむ姿を目の前で見ていた
何度も…救ってあげられないか考えたよ
………それは、つらかったわね
いまもどうしたら良かったかわからない
だからキミを止めるべきか行かせるべきかも──
あの人は薬に堪能であるがゆえ
自身の病は薬で治るものでないとわかっているわ
気休めなんか…口が裂けても言えなかった
薬は嘘をつかないから
あの人が望んでいる。私はそれに応える
それが救いでなくてなんなの
…きっと、本人にしかわからない痛みがある
だけど…その長く続く苦しみによって──
本来なら望まないことが
頭をいっぱいにしてしまうこともある
わかっているわ
ずっと考えてきたことよ
死にたくないのに死にたいと
そう思ってしまうことなんてままあるわ
だけど──…だったら、どうしろというの
放ってはおけない、終わらせるのもダメ？
私が大切な人にしてあげられることって、なに？
だけど
もう、いいわ
だけど、親しい人から死を勧められるのは
死ぬよりつらいじゃないか
…下がっていろ
散漫なまま戦うのも酷だろう
いいえ。やるわ
イゾルデ
バルバロイに苛まれる地において薬は無力だけど
私たちこそが今の世界における特効薬だと──
あの人はキラーズになった私を
喜んでくれたわ
してあげられることは、これぐらいだもの