わたしの水着が仕上がるのも今日だし
受け取るついでに発注してくるわね
ところでさ、なんで
突然水着をデザインしようと思ったんだ？
だって、またルーシャスに命令されて
ロジーの里に行くんでしょ？
あなたの故郷が見たいって
ああ、そうだけど
ロジーの里には湖があるって
ディナタンが言ってたわ
確かにあるけど…もしかして
そう！非日常での水遊びチャンスよ！
この機を逃す手はないの！
流行に疎いティルフィングに
最先端のオシャレ水着をプレゼントして…
それで、一緒に水遊びをして絆を深めて
お友達になるのよ！！！
………なるほど
ノワール様
これでも殿下は精一杯考えたのです
あぁ、いいアイデアだとは思うよ
でも、なんで俺を呼んだんだ？
それは、ほら…不安じゃない
ティルフィングの好みとかもわかんないし
ティルフィングに直接聞けば…
それが出来ないから頼んでるんでしょうが！
ノワール様、殿下は大変意気地がないのです
はぁ…そこまでしてティルフィングと
仲良くなりたいんだな
…そうだけど。それがなに？
その気持ちを、まっすぐ話せばいいのに
友達になりたいんだったらさ
今更、無理よ。そんなの
だって仕方ないじゃない
「お友達になって」なんて、言ったことないもの
物心ついた頃にはお城に出入りする
女の子や男の子と遊んでいたの
わざわざわたしから言わなくても
向こうから来てくれたわ
だってわたし、王女だもの
その割には、お友達ともっと仲良くなりたいと
ベッドでうんうん悩んだりしていましたが
あの子と親友になりたいと
泣いていたこともありましたっけ
こ、子供ってそういうものじゃない
ギネヴィアは友達に恵まれていたんだな
え？
だって、もっと仲良くなりたいって思うくらい
いい友達だったんだろ？
………うん、そうね
みんな、大好きだったわ
…今のわたしはもう、お姫様じゃないから
待ってるだけじゃお友達は増えない
だから、がんばらないといけないのよ
ギネヴィア…
…じゃ、水着を引き取りに行ってくるから
ここで待ってて！
もう、居心地悪くなるとすぐに逃げるんだから
…すみません
どうして謝るのですか？
なんだか…
ギネヴィアが辛そうな表情をしていたから
辛いことを、思い出させてしまったかなって
いいんです
失ったものを想えば寂しいのは当たり前ですから
でも、だからといって
想うことを止めるのはもっと寂しい
あの国の幸せだった日々を想えるのは
もう私とあの子だけなのですから
ギネマウアさん…
…でもいつまでも失ったものに縋りついて
立ち止まっているわけにはいかない
あの子もそれをわかっているから
こうやって――…
な、なんですかあなたたちは！
おい、さっさと金目のものを出せ！
とっととこのかばんに詰めろ！
強盗…！？
行きましょう、ギネマウアさん！
決まってるでしょう
このまま放っておくわけにはいかないですよ
おい、止めろお前ら！
なんだぁ！？お前ら、学生か？
どうする？
構うことはねぇ、たったふたりだ！
とっとと片付けちまえ！
残念、ふたりじゃないわよ！！
ギネヴィア！？なにしてる、下がってろ！
嫌よ！
ふたりだけに戦わせるわけにはいかないわ
そうは言っても、なんか見てるこっちが
落ち着かないんだって――
…ああ、もう！とっとと終わらせるぞ！