まだ着かないのか
もうずっと歩きどおしだぞ
もう少しがんばってくれよ
まだ先だから
そなたの故郷はずいぶんと僻地にあるのだな
このローマ皇太子をここまで歩かせるとは
す、すみませんルーシャス様
ディーナが謝る必要ねーっての
そうだよ。そもそも行きたいと
言い出したのは皇太子さまだからね
そう。そしてローマの力を借りたいと
言い出したのはそなたらだ
その交換条件としてルーシャス様は
ノワールの故郷を見ることを望まれ…
そしてお前たちは条件を飲んだ
その条件自体、だいぶ譲歩してやったぞ
そうだろう最強騎士殿
………
権力者の遊戯に付き合わされるほうは
たまったものじゃないね
同感だわ
ま、まぁ皆、がんばろう。もう少しだから！
そ、そうだね、兄さん！
（い、いたたまれない…）
- トリスタンに話しかける
- ランスロットに話しかける
- ディナタンに話しかける
…なんか、悪いな。付き合わせて
本当だよ。このタイミングで里帰りとか
そのうえ、行先がカレドニアとか
監視対象がアクティブだと苦労するわね
いや、俺が望んだわけじゃないんだけど…
なぁ、ランスロット
あんたはロジーの里を知っているのか？
あぁ、何度か様子を見に来ていたからな
様子を見に？
…そうだったのか
話はあとでゆっくりするとしよう
…今は、先を急ごう
あ、あぁ…
ディナタン、平気か？
疲れたら言えよ
大丈夫。これでも私、傭兵団にいたんだから
体力はあるんだよ
いや、それは知ってるけど…
私のことを気にするより
他の人たちを気にかけてあげて
ね、兄さん
ったく、マジで空気最悪だな～
大丈夫かよ、オニーサン
ちょっとくじけそうかも
（とりあえず今は、先を急ぐしかない…）
…この辺りは空気が綺麗ですね
なんだか、心が洗われる気がします
田舎だからね～
里の近くまで行けばまた少し雰囲気も変わるけど
マスター
ロジーの里はどんなところなんですか？
穏やかな場所だよ
人もそんなに多くないし
でも皆、優しかったよね
私たちのこと、詮索しないでいてくれて
…そうだったな
あと里の近くには綺麗な湖があってね
私たち、よくそこで水遊びをしてたの
兄さんなんかパンツ一丁で
湖に飛び込んだりしてたんですよ
あら
そりゃ、子供だったから
そしたらあるときお母さんが
水の底の悪魔の話を聞かせてくれて
水の底の悪魔？
はい。水のあるところには悪魔がいる…
悪魔は深い深い水の底に棲み、人の足を掴んで
引きずり込む機会を待っているのよ…って
まぁ…
いま思えば、子供だけで水遊びをしないように
脅かしていたんでしょうね
その話を聞いてから兄さん、しばらく
湖によりつかなくなっちゃって。ねー、兄さん
今は平気だから！
それに今だったら悪魔がきたら
こっちから迎え撃ってやるさ
兄さん、あんまり調子乗らないの
水は怖いんだからね～
ふふ、微笑ましいですね
…でも、お母様のお話は
あながち間違いではないのかもしれません
えっ？
お母様の仰るように水辺は危険が伴いますから
お母様はあなたがたのことを
とても大切に想っていたのですね
…うん
そういえば、ティルフィングは
水遊びとかしたことあるのか？
水遊び、ですか
そうですね…水浴びくらいなら――…
やれやれ美しい思い出話に水を差す
無粋な輩たちの登場だ
いや、もはやカレドニアはこやつらの巣窟
ならば土足であがりこむ無粋な輩は余のほうか？
んなこと言ってる場合かよ！
ルーシャス様、私の後ろに
継承者の思い出の故郷が
美しいままであればよいな