………
…この人、もしかしたら
本当に世界を救いたかったんでしょうか
そうかもしれません
- 悪い奴じゃなかった
- それでも許せない
…もとは悪い奴じゃなかったのかもな
ただ、自分の大切なものを守るために
力を求めていただけで
…俺となんら変わらない
『人間』だったはずなのに――…
けれどバルバロイと同調したことで
すべてが狂ってしまった
…人としての自我を最後に取り戻せたのは
せめてもの救いでしょうか
………
…それでも、俺は許せない
あいつが言ったこと
なにを勝手な…なにも知らないくせにって
怒りでどうにかなりそうだった
そんなこと言ってもしかたないのに
俺だってなにも知らなかったんだから
なにも、知らなかったから…
先輩…
…でも、俺がなにか言うより先に
ふたりが怒ってくれたから
………
だから、なんか気持ちがすっとした
ありがとう、ふたりとも
………
…届けないんですか？その手紙
ふたりのことが、心配なんです
兄さんと、ギネヴィアさんのことが
ディナタンさん…
だって…あんなギネヴィアさん
私、見たことなかったんです
ギネヴィアさんはいつだって
自分の気持ちに正直な人で
そんなギネヴィアさんがあんな顔するなんて
あんな――泣くこともできない、みたいな顔
………
なにがあったか、聞けない
なにがあるのか、聞けない
だって、聞くのが怖いんです
私がこんなに怖いんだから、ふたりはもっと怖い
きっと、もっと…辛い
だから――
だから、伝えられなくて
でも、なにかしたくて
ふたりのために
私にできることはないかって考えて
…うん
でも、私だってあの人と同じで
全然、なにも知らないから
なにも知らないくせに
勝手なことを言うわけにはいかなくて
ふたりのことが、だいすきだから
…なら、届けましょう
………
ちゃんと届けないと、伝わらないから
…！
………