そろそろ開演か…
ディナタンさんが心配ですか？
ラヴェイン
ノワール君、私は君に謝らなくてはなりません
ディナタンさんに多くを背負わせすぎてしまった
…え？
本来であれば生徒会長である私が先頭に立って
生徒たちを励ますべきなんです
けれど私は彼女の優しさに甘えてしまった
甘えて――期待してしまった
それはきっと、彼女の重荷になったことでしょう
だから彼女の声は奪われてしまった
…え？
…魔術師に
無事に回復したそうです
そしてそのほとんどが、私たちが
魔術師を倒すよりも先に回復していた
…！どういうことだ
力を失ったのはあくまで一時的だったんです
キッスさんの追加調査によれば
冒険者たちもすぐに回復していたとか
これは私の推測ですが…恐らく彼には
他者の力を奪う能力などなかったのではないかと
例えば魔法で対象の精神を一時的に不安定にし
身体的なトラブルを生じさせる
それによって力を奪ったと思い込んでいた…
そう考えるのが自然だと思います
精神的に不安定に…
じゃあ、ディナタンは――…
………
…いや、もしそうだとしても――
一番責任があるのは俺だよ
俺がもっとしっかりしていれば
ディナタンに心配をかけることもなかった
ノワール君…
大切な人も守れず、家族に心配かけて
継承者なんてろくなもんじゃない
…なんでアイツはあそこまで
継承者に拘ったんだろうな
…少し前に、とある村が
バルバロイの襲撃によって壊滅しました
その村に、ひとりの魔術師がいたそうです
彼は継承者に強い憧れを持っていた
蔓延るバルバロイの脅威から
いつか、継承者が世界を救うのだと
…！
もしかするとその強い憧れが転じて狂気となって
バルバロイと同調してしまったのかもしれません
大切なものを失い、己の記憶も徐々に蝕まれ
いつしか自分こそ継承者であると信じ込むことで
失った多くを埋めようとしていたのかもしれない
………
今となっては、もう知る由もないことですが
そろそろ開演だってさ、早く席に行こうぜ
ああ、そうだな
ねえ、ディナタンちゃん大丈夫なの？
だって、まだ――
大丈夫だろ。ディナタンがやるって言ってんだ
俺らが信じなきゃ始まんねーよ。なっ？
…そうだな
そんなことより、ノワール
上手くやれよ！
ギネヴィアを笑顔にできるのは
お前だけなんだからな
…！
それじゃ、俺たちは行こうぜ
あとはおふたりごゆっくり
………
………
- エスコートする
- 普通に話しかける
…お手をどうぞ、お姫様
へ？なにそれ
え、エスコートだろ！
ずっと黙ってたと思ったらいきなりそれ？
似合わないことしないでよ～！
そ、そんなに似合わないか？
ぜーんぜん、似合わない
いいのよ、ノワールはいつも通りで
…ひ、ひさしぶり
そんなに久しぶりでもないけど
そうかな？そうかもな…
でも…なんか、すごく久しぶりな気がする
…そうね。なんだかんだいって
ずっと一緒にいたもんね
………
………
…ギネヴィア、あの…
ねぇ、ノワール
ん？
…コンサート、一緒に見ても、いい？
…もちろん
入場する生徒は、こちらの冊子を
忘れず受け取ってくださーい
ほら、ギネヴィアの分
…ありがと