ブリテン島六世紀
皇太子ルーシャス率いるローマとの間に
聖杯を巡る争いが勃発
バルバロイを味方につけたローマとの戦は
苛烈を極めるも遂にログレスは戦を制し
そして継承者とその劔は遂に聖域化を成し遂げた
世界からバルバロイの脅威は打ち払われ
次へと継がれたのだ
これは、継がれた先の物語
まったく、参っちゃうよねえ！
皆して自分たちの利益の主張ばかりで
そうですね、パーシヴァル様
今考えるべきは庶民の生活だってことくらい
貴族ならわかりそうなものだけどねえ！
本当に勝手なんだからさ！
ああ、まったく嘆かわしいったらないよ！
そう思わないかい！？
ええ。パー坊が誇り高い貴族に育ってくれて
胸がいっぱいだわ…
今そういう話してないんだけど！？
パーシヴァル、戻っていたのか
まぁ、またすぐに出かけるけどね
まったく、アーサー王は本当に人使いが荒いよ
それだけお前のことを頼りにしているのだろう
先の戦いでローマが衰退したことにより
両国間の緊張はようやく落ち着いた
ルーシャス派のローマ兵が一部離反している
という話は気にかかるが…
はい。彼らはロンディニウムの一件を
いまだログレスの仕業と信じています
そしてルーシャスにこそ正義があるのだと
主張し、独自に動いているようで
まぁ、引き下がれなくなってるんだろうね
大陸に戻ったところで
敗残兵の彼らに居場所はないだろうし
それに…こんなことを言うのはなんだけど
彼には人を惹きつける力があった
行き詰まった大帝国の未来を切り開くという
彼の意志に希望を見出した人間も多いだろうし
そいつらにとっては
今も彼こそが皇太子なのさ
一度見てしまった幻想を捨てるのは
そう簡単なことではない、か
…とはいえ、それはあくまで一部の話
数自体はそう多くはないと聞いています
いずれは事態の収拾を図ろうとする
本国に抑え込まれるでしょう
だといいが…
まぁ警戒は怠るべきじゃないだろうね
それに、ローマに限らず
いつまた他の脅威が襲ってくるかもわからない
だから周辺国とは密に連携をとって
侵略に備える必要がある
ログレスを盟主とした協力体制の同盟を結び
他国の貴族たちとも上手く関係を築いて――
そんな大仕事を任せられるのは
このぼくを置いて他にはない！
立派、立派よパー坊
義姉さん泣いちゃいそう！
茶化すな！
あら、茶化してなんかいませんよ
私は本気で思っていますから
貴方が誇らしい、と
俺もそう思っている。お前は立派だ
…お前だけじゃない。トリスタンとイゾルデは
以前から続けていた奉仕活動により精を出し
ガウェインとラグネルは
ログレス国防の要とすべく騎士団の育成に尽力
他も皆――己の為すべきことを見据え
前に進んでいる
まあ、立ち止まっているより動いていた方が
気が紛れるってのもあるかもだけどね
…ノワールのことか
ああ、そうだよ。せっかくぼくの仕事を
手伝う名誉を与えようと思ったのにさ
断られて拗ねてましたよね、パー坊
拗ねてない！
放浪の旅、だっけ？
まったく、庶民の考えることはわからないよ
…まぁ、でも――それが少しでも慰めになるなら
世界中だろうが巡ったらいいと思うけどさ
寄り添えないんだからさ
覚えてないぼくたちじゃ
………
パーシヴァル様、そろそろ
ん？ああ、もう行く時間か
すまんな、呼び止めてしまって
それは別に構わないけど
ところで。キミは今、なにを？
俺は…
ヴォールス卿！街道に獣の群れが出て
人に危害を与えているとの報告が！
わかった。すぐに向かう
相変わらず、ってこと？
ああ。俺はログレスを守っている
前と同じだ。なにも変わらん