………
４ヶ月も経っているのに、
まだ俺は彼女を笑顔に出来ていない
このままでは約束破りになってしまう
…それは――…
だから挽回のチャンスをもらいたくてな
俺は一応、彼女の婚約者なわけだし？
アーサー様…
アーサー！
やばい、義兄さんだ！さては例の仕事の件か…？
すまんが、ちょっと行ってくる！
まったくもう…
本当に慌ただしいですね、我が王は
ではアーサー様が仕事を終わらせている間に
私たちは準備をしてしまいましょうか
準備？
はい。別荘のまわりにはお店がないので
必要なものをここで揃えなくては
楽しい夏休みにしたいですからね
…どうして
え？
あなたも、アーサー様も…
どうしてそこまで親身になってくださるのです
私たちはなにも返せないのに…
そんなこと気になさる必要はありませんよ
ですが！
あのかたはギネヴィア様を放っておけないのです
まるで昔の自分を見ているようだと
え…？
あのかたは幼い頃
バルバロイにお母様を殺されました
その後、バルバロイの脅威から逃れるため
辺境の孤児院へ送られ身分を隠し生きてきました
大切な人と、当たり前の暮らしを奪われ…
あの頃の彼は心を閉ざしていました
今では想像もつかないくらいに
………
ですが、それでも…村での穏やかな時間が
彼の心に安らぎを与えてくれた
王子ではなくただのひとりの子供に戻る時間は
今思えば――
ずっと張りつめていた彼にとって
良い『気晴らし』になったのかもしれない
…きっと、そうだと思います
ありがとうございます
アーサー様がギネヴィア様を気遣うのはきっと
あのときの気持ちを覚えているから
そして私もひとりで寂しそうにしているかたを
放っておきたくはありません
今も、昔も
マーリン様…
どうやら、話はまとまったようだな？
あら、お仕事はもう終わったのですか？
ああ！ついでに夏休みをもぎとってきたぞ！
『領地の視察』という名目付きではあるがな
これで心置きなく楽しめる！
別荘の近くは海もあるから涼もとれるぞ
いやあ、楽しみだな！ギネヴィア！
え？
ギネヴィア！？あなた、いつの間に
…え、えっと、その…
べ、別に、お姉ちゃんを追いかけて
マーケットに来たとかじゃないから！
様子を覗いてたら楽しそうな話してるから
ついうっかり身を乗り出しちゃったとか…
全然、そんなんじゃないから！！
あのねぇ…
楽しい予定があると
ワクワクしてしまいますよね
うんうん、わかるわかる
よし、そうと決まれば善は急げだ
さっそく向かうとしよう！
ところで、アーサー様。その別荘って
管理のかたとかいらっしゃるんですか？
いや…どうだったかな
正直、存在を思い出したのもつい最近だし
え…
うーん…そういえば
あの別荘に最後に行ったのはいつだったか…
…嫌な予感がしてきました
着いたぞ！
ここがログレス王家の別荘だ！
わ～！すっごい！広いし、建物も立派！！
けど――