=== 第23章 四狗 === (溶岩地帯) エレオス上空の結界を解除するため、 神竜軍は邪竜紋のある地帯を訪れる。 --- OP --- [ヴェイル] こっちよ。力の反応を強く感じる… 竜紋の場所はもう近いわ。 [リュール] ありがとうございます、ヴェイル。 私では殆ど感知できなくて。助かります。 [ヴェイル] 待って、誰かいる。あれは… [リュール] セピアと、グリ…ですね。 [ヴェイル] ! [リュール] 竜紋を守っているようです。 平気ですか、ヴェイル。 [ヴェイル] …パパと戦うのなら、 この道を行くなら、避けられない。 いつかは、向き合わなくちゃいけないわ。 行こう。 [リュール] はい。 [ヴェイル] …セピア、グリ。 [セピア] ヴェイル様! お待ちしておりまし… [ヴェイル] ………… [セピア] …そう。貴方が来たのね。 それなら、あのヴェイル様は、 死んだということでいいのかしら。 [ヴェイル] ええ。 [グリ] 最後まで油断ならないもんだぜ。 まさか欠陥品のほうが勝つとはな。 [リュール] その言葉、取り下げてください。 ヴェイルを悪く言うことは許しません。 [セピア] お前は…! [グリ] オイオイ、いったいどうなってんだよ。 死んだはずだろ。 [リュール] 私は、指輪の力で紋章士となりました。 この世界を救うために。 [ヴェイル] パパを止めに行くわ。二人とも其処をどいて。 [セピア] それはできません。 ソンブル様が異界の扉を開かれるまで、 この竜紋を守るのが私たちの役目。 例えヴェイル様のご命令でも退けませんわ。 [ヴェイル] では、ここで死ぬ覚悟があるのね。 [セピア] 私たちを殺すと仰るのですか。 悲しいですわ。 貴方のこと、本当の家族のように お慕いしておりましたのに。 [ヴェイル] その言葉、嬉しかったわ。 わたしを騙す嘘だとわかるまで。 今のわたしにとって…セピアとグリは、 パパの従者で、倒すべき敵でしかない。 [グリ] セピアとグリは、か。 含みがあるな。 [ヴェイル] モーヴとマロンは、わたしの騎士よ。 …マロンの最期のこと、聞いたわ。 わたしを助けようとしてくれたって。 どうして殺したりしたの。 わたし、あの子に、お礼もさよならも言えなかった。 [セピア] マロンは私を裏切ったのだから、当然ですわ。 あんなに目をかけてやったのに。 [ヴェイル] わからない。セピアは…どうしたかったの。 四狗が家族だっていうのなら、どうして壊したの。 [セピア] 愛するが故ですわ。思い通りにならないのなら、 要らないと思って当然でしょう。 [リュール] そんなの、違います。 それは本当の愛ではない… [セピア] そうなんですの? 本当の愛なんて、 持っていたことがないのでわかりませんわ。 理解されずともいいのです。 私のことは、私だけが理解していればいい。 永遠に分かり合えませんわ。私たちは。 …私はソンブル様のために動きます。 千年前からあの方のために尽くして、 今更やめられませんもの。 [グリ] オレも、ここで寝返るなんてことはしない。 例え負けてもな。 [ヴェイル] そう。 じゃあ、これでさよならだね。 …戦闘準備をお願い。 [リュール] いいんですか? [ヴェイル] もう…これ以上話しても益はない。 でも見逃せるほど、やさしくもなれない。 少しは思い出だってあったけど、全部ここまで。 せめて、さよならぐらいは伝えて…パパを止めに行く。 --- ED --- [セピア] ふふふ…貴方がたの勝ちですわ。 ソンブル様、申し訳ございません… [リュール] 勝負ありましたね。 私たちは、先に行きます。 [ヴェイル] …さよなら、セピア。グリ。 今度は、お別れが言えてよかった。 [セピア] そうですわね。 でも、グリにはもう…聞こえていませんわ。 向こうで私が伝えておきますから、 安心してくださいな。 [ヴェイル] …わかったわ。 [セピア] ………… 最後に、一つだけ忠告を。 このままだと、次の竜紋は壊せませんわよ。 [ヴェイル] ! どういうこと? [セピア] 竜紋があるのは、この先の… かつて高山地帯だった場所ですわ。 けれどグラドロン浮上の際、局地的に地形が崩れ、 竜紋のあった場所は浮上せず海の底に。 壊すのはおろか、 辿り着くことさえ困難ですわよ。 [リュール] 海の底…!? [ヴェイル] 確かに、気配が一つだけ、 やけに弱く遠くにあると思っていたの。 まさか、浮上せず取り残されていただなんて。 [リュール] …一体、どうすれば。 [セピア] 簡単なことですわ。 地形を変化させればいいんです。 これをお持ちくださいな。 竜紋のある場所を浮上させる魔法具です。 [ヴェイル] 魔法具? どうしてセピアが、そんなものを… [セピア] 我が種族である魔竜族は、魔の力を持つ竜… 自身の力で魔法具を作れますの。 とはいえ普通は、お守り程度のものですけれど。 強大な効力の魔法具を作れば、寿命を削ることとなる。 地形を変化させるだなんてそんなもの、 まず無事ではいられない… [ヴェイル] …セピア、まさか。 [セピア] お察しの通り。 これは、私の命と引き換えです。 [ヴェイル] ! [セピア] 運が良かったですわねえ。 神竜様、ヴェイル様。 魔竜族であれど、これほどのものを作れるのは 私ぐらいしかいませんのよ。 私は幼い頃から、それはそれはとんでもない程の 魔力を持っていましたの。 あるときに暴走し、父も母も、仲間も、 みぃんな私が死なせてしまいましたけれど。 …まあ、全て昔のことです。 そういうわけで、この魔法具をお使いくださいな。 [ヴェイル] どうして、こんなこと。 [セピア] …わかりませんわ。自分でも。 ただ、最後だと思ったら、 こうしたほうがいいような気がしましたの。 魔法具の効果は数刻程度ですので、 竜紋を壊すなら急いでくださいな。 お気をつけて、ヴェイル様。 この場所からご武運を祈っておりますわ。 [ヴェイル] なによそれ… 今更、どうして!? なぜ、最後に、取り返しがつかなくなった後に、 そんなこと言うの!? せめて戦う前に、そう言ってくれれば… あなたを許すことだって… [セピア] 最後だから、ですわ。 [ヴェイル] え? [セピア] もう取り返しがつかないから、これきりだから… 優しくできるんですの。 最初にそうしてくれたら許せた? 共に戦えた? 寝言を言わないでください。 そうなっては命を惜しまれ、魔法具は作れません。 今頃、皆で素潜りの練習でもしていますわ。 そのほうが、お望みでしたかしら? [ヴェイル] ………… セピア。わたしは… やっぱり、あなたのこと、わからないわ。 [セピア] それで結構。 理解不能な者のことなど忘れてくださいな。 いつまでも覚えていられるなんて、 そんなの気味が悪いじゃないですか。 [ヴェイル] そうね。でも… この先パパを止めて、平和が来て… 何百年、何千年経っても、 あなたのこと、忘れてなんかあげない。 [セピア] 困った方。 話は終わりです。さっさと行ってください。 それとも、無様に死ぬところまで見ないと 安心できませんかしら? [ヴェイル] …っ。 [リュール] 行きましょう、ヴェイル。 [セピア] そうそう。 最後くらいは綺麗さっぱりといきましょう。 さようなら、ヴェイル様。 そして、新たなる紋章士 。 [リュール] …さようなら。 [ヴェイル] さようなら、セピア。 ………… …今まで、ありがとう。 [セピア] 勿体なきお言葉ですわ。 Default [グリ] …お優しいことだな。 [セピア] あら? まだ生きていたの。 [グリ] 致命傷の痛みを少しでも多く味わいたくてね。 何せ、こいつは一生に一度しか味わえねえ。 憐れんで止めでも刺されたら最悪だからな。 [セピア] それで死んだふりしてたの? 最期まで、趣味が悪いわね。 [グリ] なぜ…竜紋のことを教えた。 [セピア] 言ったじゃない。最後くらいは綺麗さっぱり… [グリ] 嘘はいい。オレには本当のことを言え。 [セピア] …ソンブル様への仕返しよ。 私はここで死ぬというのに… あの方だけ夢が叶うだなんて、悔しいじゃない。 竜紋が壊されたことに気づいて、 私が死んだことを思い知ればいいわ。 [グリ] そうしたいと思うほど、 ソンブル様が好きだったのか。 [セピア] あの方が欲しかったんじゃない。 ソンブル様の子が欲しかったの。 私はずっと、家族がほしかった。 私だけ愛してくれる人が欲しかった… 四狗は家族だって、あの言葉、本気だったわ。 あのころが一番、楽しかった。 私と、グリと、マロンと、モーヴで、 ヴェイル様とソンブル様をお守りして… [グリ] だがそれは、もう戻らない。 守りたかったなら、壊すなよ。 諦めるなら、もっと早く諦めろ。 そうしたらオレも死ななくて済んだってのに。 [セピア] 貴方だけ彼方側に行けばよかったじゃない。 [グリ] あんたを一人にできなかった。 そう言ったらどうする? [セピア] え…? [グリ] 四狗は家族。 [グリ] オレだって、その言葉が好きだった。 親の顔なんて覚えちゃいないオレにとって、 あんたは母親みたいなもんだった。 身体を痛めつけることだけで、ソンブル様への忠誠を示す 壊れた信徒だったオレに、声をかけてくれた時から… 母親みたいで、姉みたいで…神様みたいで。 オレの一番大切な人だった… [セピア] グリ…何の冗談を… [グリ] 冗談で、ここまで付き合うかよ… 馬鹿が… [セピア] …そうね。馬鹿だわ、私は。 [セピア] こんなに近くに…ほしいものはあったのに… もっと早くに、わかっていれば…… …いえ、何もかも過ぎたこと。 赦してちょうだいね…… 家族…だもの…… ありがとう……グリ…… ………… [セピア] [グリ] …セピア? …先に眠ったか。 オレももうすぐ行くぜ… ここに留まる、意味もねえ…… もう…どこも…痛くねえんだ…… --- EV --- [ヴェイル] 竜紋を破壊するためには、 眷属となっているセピアとグリを倒さないといけないわ。 [リュール] 何です、今のは!? [ヴェイル] …あの二人が撃ったのね。 眷属は、竜紋の力を使えるわ… 気をつけて。また同じ攻撃をしてくるはずよ! [セピア] もう退くことは許されないわ。 刺し違えてでも…竜紋を守るわよ。 " [グリ] 刺し違えるぅ? いつになく弱気だな。 刺されるのはオレだけで済ませるさ。それに… 今のオレたちには、この力がある! ほら、どんどんブチ込むぜぇ! [セピア] もう、退くことは許されない。 刺し違えてでも…竜紋を守るわ。 グリ…貴方の仇は取ってあげる。 炎に焼かれなさい、すべて…! [グリ] セピアの奴は動けない… なら、オレがヤってやるしかねぇよなぁ? 今のオレには、この力がある! ほら、どんどんブチ込むぜぇ! [リュール] やりました… 竜紋を破壊できましたね。 --- MOVIE --- --- BT --- [グリ] …はは…これが、ずっと憧れた… 致命傷って…やつか… " [セピア] そう…辿り着いてしまったのね。 死ぬのは私か…それとも、貴方かしら? [セピア] ようこそ、ヴェイル様。 私を殺しに来られたのですわね。 [ヴェイル] …ええ。 [セピア] その目… ソンブル様に、よく似ていらっしゃるわ。 もう一人の貴方様よりも、 今のヴェイル様が、いちばんあの方にそっくり。 [ヴェイル] あなたはわたしを見ないね、セピア。 いつも、わたしを通して… パパや、もう一人の私を見てる。 はじめてあなたと会った時は、優しい人だって思った。 あの頃は…セピアのこと、好きだったわ。 " [セピア] 私は最初から、貴方が嫌いでしたわ。 いいえ、どうでも良かったという方が正しいでしょうか。 [ヴェイル] ………… [セピア] 貴方はソンブル様の操り人形。 用が終わったら捨てられるだけの駒。 でも、不思議ですわね。いつかは… こんな日が来るような気もしていましたの。 [ヴェイル] わたしがセピアを殺す日が? そう…それなら、好きにはなれないね。 [セピア] 来てくださいな、ヴェイル様。 今この時からは…貴方様自身を見ていますわ。 [セピア] あらあ、神竜様。 貴方とも、長い付き合いになりましたわねえ。 [リュール] 知っていたんですね。 千年前の私のことを… [セピア] Relax [セピア] ええ、会ったことはありますわ。 でも本当に、詳しくは覚えていませんの。 何しろ…ソンブル様の御子はそれはもう、 たくさんいらっしゃいましたから。 通り過ぎるだけの虫たちのことなんて いちいち覚えていないのと同じことですわ。 [リュール] 虫ですか。私は。 [セピア] 立派な神竜様ですわ、今はね。 けれど、数千年も生きていると… 過ぎた命など数えなくなるものですわよ。 神竜様もきっと、おわかりになるわ。 [リュール] そんなもの、わかりたくありません。 これから先…一生。 [セピア] あはは! まあそうですわね! わかる前に、貴方はここで、今度こそ… …死ぬんですもの。 [セピア] モーヴ。本当に私を殺すのかしら? 信じていたのに… [モーヴ] かつては俺も信じていた。 俺たちの進む道は正しいのだと… 四狗は、家族だと。 $ [セピア] …意外だわ。貴方からその言葉、 聞けるとは思わなかった。 [モーヴ] 認めたくはないが、俺も寂しい人間だ。 柄にもなく四狗に絆されていた。 だから、止めることができなかった。 マロンを失ってしまうまで。 [セピア] …望むなら戻れるわよ。まだ。 [モーヴ] 馬鹿を言うな。貴様の所業で縁は分かたれた。 あるのは残骸だけだ。 拾って繋げる程の情けすら全て、 奪い去ったのは貴様だ…セピア。 [セピア] ソンブル様…私は…… [グリ] オレは四狗でいるさ。 最後の最後までな… [グリ] ヴェイル様じゃねぇか。 やっとご褒美をくださるのか? [ヴェイル] ご褒美…? [グリ] もう一人のヴェイル様が言ってくださったんだよ。 任務に成功したら痛めつけてやるってな。 ずっと楽しみにしてたんだ。何せあの方は 冷酷で、嗜虐的で、圧倒的なお力で…! でも、結局… オレに一度も手を上げることはなかった。 [ヴェイル] その前に、いなくなったから… [グリ] そうだよ! あんたが殺したんだ! だから、なあ…オレは期待してるんだぜ。 今度は…あんたがオレをどんなふうに殺すのか。 [ヴェイル] …わたし、グリのことは許せないけど、 最初から憎かったわけじゃない。 あなたがそうまでして留まった意味も、 わたしには、少しだけわかるから… 酷くはできない。 ご褒美は…あげられないよ。 [グリ] さすが邪竜の御子様。 殺しても死なねえとは恐れ入るぜ。 [リュール] あなたには感謝しています。 私に真実を告げてくれたのですから。 四狗としてのやり方は許せませんが… 一つだけ聞かせてください。 セピアに脅されているというわけではないのですね? " [グリ] はぁ!? ふざけてんのか!? オレは自分自身の意思でここにいる!! [リュール] …そうですか。 [グリ] ハハハ! お優しいことだなァ! オレは有難くもお慈悲をかけていただいたのか! だがその問いで、お前はオレとセピアを愚弄した! 許さねえ許さねえ許さねえ!! 全ての痛みを味わわせて、 今度こそ殺してやる! [グリ] わざわざ仇討ちに来たのか? それとも、やっぱり戻りたいか? 四狗は家族だったんだ… オレたちは兄弟みたいなものだろ。 恋しくなっても、誰も責めねえよ。 [モーヴ] 貴様にもう、語ることはない。 ただ討ち果たすのみ。 [グリ] お固いねえ、最後まで。 ま、おかげで遠慮なく殺せるか… --- DIE ---