=== アルフレッド & ブシュロン === --- C --- [アルフレッド] ふむ… ふむふむ… [ブシュロン] ………… [アルフレッド] うんうん。 今日もいい筋肉だね、ブシュロン。 [ブシュロン] えっと、ありがとうございます。 アルフレッド様。 [アルフレッド] 特に腕のここの部分がいいんだよね。 少し触ってもいいかな? [ブシュロン] どうぞ。 [アルフレッド] ぺたぺた… [アルフレッド] ああっ、素晴らしい! まるでフィレネの国宝だ! [アルフレッド] 前腕の方も羨ましいね。 僕にはない造形美だよ… [ブシュロン] …まだお触りになりますか? [アルフレッド] これはすまない。 つい夢中になってしまったよ。 [アルフレッド] しかし本当に見事なものだ。 ブシュロンの筋肉は僕の憧れだよ。 [アルフレッド] 一体、どんな鍛錬をしたら そこまでの筋肉を得ることができるのだろうか。 [ブシュロン] 特別なことは何もしていません。 [アルフレッド] ブシュロンは決まってそう答えるね。 [アルフレッド] だが、そうなるとやはり不思議だ。 この筋肉は自然発生的に生じたものなのか… [アルフレッド] ふむ… 実に不思議だよ。 [アルフレッド] ぺた。 ぺたぺたぺた。 [ブシュロン] ………… [ブシュロン] …少し。 [アルフレッド] ん? 少しなんだい? 何かその筋肉について思い当たることが? [ブシュロン] いえ。 少し…くすぐったいです、アルフレッド様。 [アルフレッド] それはすまなかったね。 --- B --- [アルフレッド] おはよう、ブシュロン。 もう夜明けだ。起きてくれ。 [ブシュロン] …おはようございます、アルフレッド様。 朝の見回りでしょうか? [アルフレッド] いや、見回りはしない。 [ブシュロン] では、なぜこんな早朝に俺のところへ? [アルフレッド] 今日はブシュロンを観察しようと思ってね。 [ブシュロン] …俺を観察ですか? なぜそんなことを? [アルフレッド] もちろん、 その筋肉の秘密を解き明かすためさ! [ブシュロン] え? [アルフレッド] 君はその筋肉を得るために 特別な鍛錬はしていないと断言する。 [アルフレッド] ならば、何気なく過ごす日常生活の中にこそ 筋肉を生み出す秘密があると考えたわけさ。 [ブシュロン] は、はあ… なんとなくは理解できました。 [アルフレッド] そうか。それは良かった。 なら、早速始めよう。 [アルフレッド] 僕は少し離れたところから隠れて君を観察する。 何も気にせずいつも通りに過ごしてくれ。 [ブシュロン] では、まだ早いので二度寝しますね。 よろしいですか? [アルフレッド] もちろんだ。 僕は君の寝顔を見守るとしよう。 [アルフレッド] 昼になりブシュロンは読書を始めたが… 特に筋肉を刺激している様子はないな。 [アルフレッド] 本自体の重さがそんなにあるわけではなかった。 いたって普通の読書だ。 [ブシュロン] …ううっ。グスッ。 [アルフレッド] あ、泣いた。 ブシュロンは昔から感動屋さんだからね。 [アルフレッド] なるほど、釣りか! 大物を釣り上げるときなら筋肉に刺激がありそうだ! [ブシュロン] はは。 釣れた釣れた。 [アルフレッド] …冷静に考えると釣りが筋肉と結びつくわけないね。 鍛錬以上に激しい釣りなんて見たことないし。 [アルフレッド] ふっ… ずいぶんと楽しそうな顔をしている。 [アルフレッド] …不思議だ。 [アルフレッド] ブシュロンを観察してみたが、 特に筋肉に負荷を与えるような生活ではなかったね。 [ブシュロン] お役に立てず申し訳ないです。 無駄な一日を過ごさせてしまいました。 [アルフレッド] いや、無駄ではなかった。 とても有意義な一日だったよ。 [アルフレッド] たまにはこうやって 幼馴染と一日中過ごすのもいいものだね。 [ブシュロン] アルフレッド様… [アルフレッド] ただ、今度は隠れて遠くから眺めるのではなく 近くで一緒に読書や釣りなどを楽しもうと思ったよ。 [ブシュロン] はは。 俺も賛成です、共に楽しみましょう。 --- A --- [アルフレッド] むう… [アルフレッド] なかなか釣れないものだね、ブシュロン。 [アルフレッド] 何かコツを教えてくれないか? たとえばどう筋肉を動かせばいいのかとか。 [ブシュロン] アルフレッド様。 俺は釣りで筋肉を意識したことはありません。 [アルフレッド] なら、何をすればいいんだい? [ブシュロン] 忍耐強く待つ、でしょうか。 [アルフレッド] なるほど。 さっそく実践してみよう。 [アルフレッド] ………… [アルフレッド] ………… [アルフレッド] ブシュロン。 いいことを思いついたよ。 [アルフレッド] ここに大きな網を投げ入れて、 その筋肉で力の限り引き上げるんだ。 [アルフレッド] そうすれば一気にたくさんの魚を取れる。 [ブシュロン] そうですね、アルフレッド様。 ですがそれはもう釣りではありません。 [アルフレッド] …確かにそうだ。僕が間違っていたよ。 [ブシュロン] もし釣りに飽きたのなら、 別に付き合っていただかなくても… [アルフレッド] はは。見抜かれていたか。 正直、じっとしているのは向いていない。 [アルフレッド] だが、釣りをやめたくもない。 [ブシュロン] どうしてですか? [アルフレッド] ブシュロン。 君とこうして二人で過ごす時間が楽しいからだよ。 [ブシュロン] アルフレッド様… [アルフレッド] 君とは幼馴染で気心が知れた仲だ。 でも、最近は二人で過ごすことはなかったからね。 [アルフレッド] 今はこんな時間を大切にしたい。 [アルフレッド] さ、釣りを続けよう。 何も釣れなくても僕はかまわない。 [ブシュロン] ………… [ブシュロン] 元々の体質なのか、俺は特別な鍛錬をしなくても 筋肉が体につきやすいようです。 [ブシュロン] …そんな体質で良かったです。 この身体でアルフレッド様を守れますから。 [アルフレッド] ブシュロン! 釣り竿が引いている! [ブシュロン] はは。大物みたいですね。 逃がさないでくださいよ、アルフレッド様。 [アルフレッド] も、もちろんだとも! だが、糸が… 釣り糸が切れそうだ! [ブシュロン] 俺も手伝います! 二人で釣り上げましょう! [アルフレッド] 君がいれば勝ちは決まったようなものだね! 観念するがいい、大物の魚よ! --- S ---