=== アルフレッド & アイビー === --- C --- [アイビー] ………… [アルフレッド] アイビー王女。 こんな夜更けに何をしているんだい? [アイビー] アルフレッド王子… [アイビー] ふふ…イルシオン王国の者が 夜中に一人でいたら不審よね… [アイビー] でも、安心して… 裏切って火をつけることなんてしないから。 [アイビー] …まあ、私の言葉なんて 信用できないでしょうけど。 [アルフレッド] そこまで疑っていないよ。 今は君を信じる方に舵を取っている。 [アイビー] …そう。 フィレネ王国の第一王子は甘いのね。 [アルフレッド] 人を信じることを甘いと言うのなら、 その評価で構わないさ。 [アイビー] …それで、他にもまだ何か用が? [アイビー] 私を疑っていないというのなら 早くこの場を立ち去るはずだと思うけど。 [アルフレッド] それはできない。 [アイビー] どうしてかしら… 理由を聞かせなさい。 [アルフレッド] だって、アイビー王女… 迷子だろう? [アイビー] っ!? [アルフレッド] ソラネルは広い。 ここは特に、入り組んでいるからね。 [アイビー] ………… [アイビー] …正解よ。 [アルフレッド] ほら、こっちだよ。 僕が案内するからさ。 [アイビー] ………… [アイビー] …ありがとう。 --- B --- [アイビー] ………… [アルフレッド] アイビー王女。 君とは夜中によく会うね。 [アイビー] アルフレッド王子。 貴方はもう眠っている時間では? [アルフレッド] 今日はいつもより早く目覚めてしまったんだ。 [アイビー] ふふ。 まだ早朝とも呼べない時間なのに。 [アルフレッド] アイビー王女は、ここで何を? [アイビー] 私は…その…眠れなくて。 [アルフレッド] こんな明るいところにいたら、 余計、眠れなくなってしまわないかい? [アイビー] い、いいの。 今はここにいたいの。 [アルフレッド] ………… [アルフレッド] 今晩は風が強い。 [アルフレッド] 風の音が獣の吠える声に聞こえたり、 人の話し声に聞こえたりするんだよね。 [アイビー] い、いきなりなんなの… [アルフレッド] アイビー王女。 一人で寝ていて怖くなったんだろう? [アイビー] なっ!? し、失礼なことを…! [アルフレッド] わかるさ。 [アルフレッド] 僕も子供の頃、風の音で怖くなって。 朝までシーツを被っていた経験があるからね。 [アイビー] わ、私は子供ではないわ…! [アルフレッド] そんなときは楽しかったことを思い出すんだ。 そうすればいつの間にか眠れるからね。 [アルフレッド] それを母上に教わってからは 怯えたまま朝を迎えることはなくなったよ。 [アイビー] ………… [アイビー] そろそろ戻るわ。 夜更かしは健康に悪いし。 [アルフレッド] ああ。 今度はよく眠れるといいね。 [アイビー] …ありがとう。 --- A --- [アイビー] ねえ、アルフレッド王子。 貴方はわかっているのかしら? [アルフレッド] アイビー王女。 いきなりどうしたんだい? [アイビー] 貴方、一度目は迷子の私を案内してくれた。 [アイビー] 二度目は、心安らかに眠れる方法を教えてくれた。 [アイビー] つまり…不本意だけれど、 私は貴方に世話になってばかりなのよ… [アルフレッド] あはは。 それの何が駄目なんだい? [アイビー] 駄目に決まってるじゃない… [アイビー] イルシオン王国の第一王女として… 助けられてばかりなのは許せないわ。 [アイビー] だ、だからほら… 何か困っていることはないの…? [アルフレッド] つまり今度はアイビー王女が、 僕のことを助けてくれるということかい? [アイビー] 借りを返す… ただそれだけのことよ。 [アルフレッド] でも、悪いね。 今は特に何も困ってないんだ。 [アイビー] な、何よ、それ… 私に助けさせないつもり? [アイビー] そんなの許さないわ… 早く何か困りなさいよ。 [アルフレッド] ふふ。 その申し出に困っているけれどね。 [アルフレッド] でも、こういうのは別に、 返さなくてもいいのではないかな。 [アルフレッド] 僕らはもう、仲間なのだから。 [アイビー] っ… [アルフレッド] 困っていたら、当たり前に手を差し述べる。 借りがあるとか…そういう間柄ではもうないよ。 [アイビー] ………… [アイビー] 本当に簡単に… 人を信用するのね… [アイビー] 甘い人だわ…貴方は。 [アルフレッド] そうだね。 それが悪いことだと思っていないから。 [アイビー] ………… [アイビー] 仕方ないから… 私もそんな貴方に影響されてあげるわ。 [アイビー] 貴方のことは…信用する。 [アルフレッド] ありがとう。 嬉しいよ、アイビー王女。 [アイビー] 私も… 信用できる人間が増えて嬉しいわ。 [アイビー] いつか…女王となった時… 王となった貴方が信用に足るのは…救いだもの。 [アイビー] ありがとう…アルフレッド王子。 --- S ---