=== ブシュロン & エーティエ === --- C --- [エーティエ] ブシュロンさん。 今日こそ観念してくださいな。 [ブシュロン] 観念? なんの話だ? [エーティエ] あなたの筋肉についてですわ。 ブシュロンさんはどんな筋肉増強剤をご愛飲で? [ブシュロン] あはは、またその話か。 そういったものは飲んでいないぞ。 [エーティエ] 嘘はいいんですの。 どうか白状してくださいな。 [ブシュロン] 嘘などついていない。 [ブシュロン] 俺は筋肉がつきやすい体質なんだ。 ただそれだけのこと。 [エーティエ] …本当にそうでしょうか? [エーティエ] 実はあたくし、ブシュロンさんのことを 密かに観察させていただきましたの。 [ブシュロン] えっ? そうなのか? [エーティエ] あなたは朝の鍛錬が済んだら、 あとはずっと釣りか読書… [エーティエ] あたくしが走り込みをしている間も、 ずっとボーッと釣りか読書をしているだけ。 [エーティエ] それで、そんな恵まれた体格に なれるはずがございません。 [エーティエ] 何か素晴らしいものを飲んでいるに 違いありませんわ! [ブシュロン] ええと… [エーティエ] まさか! 危険な薬物ですの!? だとしたら厳罰ですわよ! [ブシュロン] そんなもの飲むわけないだろ! 本当に、何もしていない! [ブシュロン] 全く…こんな事で問答を続けていたら、 アルフレッド様の臣下として妙な噂が立つだろう。 [ブシュロン] 俺はもう行く。 またな、エーティエ。 [エーティエ] おかしい… 絶対におかしいですわ… --- B --- [ブシュロン] ふぅ… のどかな木漏れ日は最高だな… [エーティエ] ブシュロンさん。 [ブシュロン] わっ! びっくりした! なんの用だ、エーティエ? [エーティエ] これより少し観察をさせてくださいまし。 [ブシュロン] 観察って、何をだ? [エーティエ] ブシュロンさんをですわ。 そして、筋肉の秘密を解き明かすのです。 [ブシュロン] そうか… まあ、好きにしてくれ。 [エーティエ] ありがとうございます。 [エーティエ] ふむ。見た感じは何もないですわね。 服に重りも仕込んでありません。 [エーティエ] と思ったら、お腹の部分に鋼の感触が! なんだ、やっぱり秘密がありましたのね! [ブシュロン] それは筋肉だ。 [エーティエ] ま、まあ…失礼いたしましたわ。 てっきり何か仕込んでいらっしゃるのかと。 [エーティエ] 例えば、お腹に巻くだけで腹筋がつく 便利な道具とか。 [ブシュロン] そんなものつけていない。 手に入れたらエーティエに譲るさ。 [エーティエ] なんて仲間思いですの… [ブシュロン] ああ、なんだか腹が減ってきたな。 弁当でも食べるか。 [ブシュロン] いただきまー… [エーティエ] お待ちくださいませ! [ブシュロン] な、なんだよ!? [エーティエ] そのサンドイッチにこそ、 秘密が隠されているのでは!? [エーティエ] くんくん… くんくん… [エーティエ] ぱくっ! [ブシュロン] あー! 俺のサンドイッチ! [エーティエ] ………… [エーティエ] おかしいですわね。 普通のサンドイッチですわ。 [エーティエ] 特殊な薬物の類いでも 塗り込まれていると思ったのですが。 [ブシュロン] だから、俺は本当に何もしていないんだって。 俺の昼飯、返してくれよ… --- A --- [エーティエ] ブシュロンさん、謝りますわ。 [ブシュロン] え? [エーティエ] あのあとずーっと見ていたものの、 結局、何もつかめませんでした。 [エーティエ] あなたは本当に生まれながら、 筋肉がつきやすい体質なのですわね。 [エーティエ] 疑ったりして、ごめんなさい。 [ブシュロン] まあ、わかってもらえたならいいさ。 [エーティエ] …一つだけ、弁解したいことがあります。 [ブシュロン] 弁解? [エーティエ] あたくしは、あなたの体格を 妬んでいるわけではありませんの。 [エーティエ] 同じ主君に仕える臣下として、 あなたから多くを学び、同じように強くなりたい… [エーティエ] そう思っただけなのです。 [ブシュロン] 俺と同じに… [エーティエ] ええ。ブシュロンさんに比べたらあたくしは、 戦力としてどうしても劣ってしまいますわ。 [エーティエ] ですから、あなたに追いつきたいのです。 アルフレッド様のためにも、フィレネ王国のためにも…! [ブシュロン] エーティエ、バカなことを言うな。 [ブシュロン] もしエーティエが俺と同じになったら、 この隊はおしまいだ。 [エーティエ] どうしてですの? [ブシュロン] 確かに俺の体格は恵まれている。 お前の好きな筋肉だってどんどんついていく。 [ブシュロン] だが俺には、方向音痴などの欠点も多い。 [ブシュロン] 今までだって何度、戦の最中に道に迷って エーティエに助けてもらったか。 [ブシュロン] 俺には俺のよさがあり、 エーティエにはエーティエのよさがある。 [ブシュロン] 違っている二人が生み出す力… 俺たちの強さは、そこにあるんだと思う。 [エーティエ] ブシュロンさん… [エーティエ] ええ。 あなたの仰る通りですわね。 [エーティエ] あたくし、恥ずかしいですわ。 筋肉をつけることにしか目が行っていなくて。 [ブシュロン] 筋肉は争うものじゃない。 ともに手を取り合うための架け橋… [ブシュロン] これが俺のマッスルポリシーだ。 [エーティエ] …よくわからないですが、グッときましたわ。 [ブシュロン] 空気を和ませようとしたが、 失敗してしまったようだな。すまない。 [ブシュロン] さあ、握手だ。 エーティエ。 [ブシュロン] アルフレッド様のため、そしてフィレネ王国のため… これからもよろしく頼む。 [エーティエ] ええ、こちらこそ。同じ臣下として、 ともに手を取り合ってまいりましょう。 --- S ---