=== ブシュロン & リンデン === --- C --- [ブシュロン] うっ…ぐっ… [リンデン] おやおや。 大の男が涙を流して、どうしたのじゃ? [ブシュロン] あ、実は本を拾いまして… [ブシュロン] 中身を読んでみたら、 これがとても感動的で、涙が止まらないんです。 [リンデン] ほう。 どんな本じゃ? [ブシュロン] 『L』という名の偉大な賢者の物語です。 [リンデン] ふむ…どんなものか、 話してくれんかの? [ブシュロン] 話はLの少年時代から始まります。 彼はイルシオン国内の学園を首席で卒業しました。 [ブシュロン] その後、Lは王城兵に取り立てられ、 一時は王子の臣下も務めました。 [リンデン] ふむふむ… [ブシュロン] その王子は有力な国王候補だったのですが、 後継に選ばれたのは別の者で… [ブシュロン] 王子は失意のうちに城を去ることになり、 Lはそれを呆然と見送るのです。 [ブシュロン] とりあえず、ここまで読みました… うぅっ… [リンデン] ほら、これで涙を拭け。 [ブシュロン] ありがとうございます… [ブシュロン] 俺は感動しやすい体質なんですが、 それだけではなく… [ブシュロン] 城を出ていく王子の無念さや、 見送るLの気持ちを考えると、もう泣けてきて… [リンデン] …その本に興味が出てきた。 また読み進めることがあったら、内容を教えておくれ。 [ブシュロン] はい、もちろんです。 ちーん! [リンデン] わしのハンカチが… --- B --- [リンデン] ブシュロン、また本の続きを話してくれ。 [リンデン] と言いたいところじゃが、 その前にこれを渡しておこう。 [ブシュロン] おいしそうな焼き菓子ですね。 [リンデン] わしが焼いたんじゃ。 中にはリンゴが入っておる。 [ブシュロン] リンデン殿、料理をなさるんですか? [リンデン] サンダーの魔法で、じっくり焼いたのじゃ。 さ、食べてみておくれ。 [ブシュロン] いただきます… [ブシュロン] あっ、おいしい! サンダーでこんなにおいしい焼き菓子が作れるなんて! [リンデン] びっくりじゃろう? では、本の続きを聞かせてくれ。 [ブシュロン] Lが仕えた王子は国王に選ばれず 城を出ていってしまったのですが… [ブシュロン] その後、Lは王城兵の女性と出会い 彼女の優しさに癒されます。 [ブシュロン] Lは彼女と結婚し、 平凡ながら幸せな生活が始まります。 [ブシュロン] …今回はここまでです。 [リンデン] なるほど。同じく王城兵だったわしには、 身近な話のように思えて興味深いのう。 [リンデン] それにしても、今日は泣かないんじゃの。 [ブシュロン] 本当は号泣したいんです。 Lの奥さんの献身的な姿が実に感動的で… [ブシュロン] でも、泣いてばかりいるのも、 お恥ずかしいですし… [リンデン] なんだ。我慢していたのか。 [リンデン] だったら気にせんで、思い切り泣けばいい。 [ブシュロン] そ、そうですか? ではお言葉に甘えて… [ブシュロン] うううっ!! [リンデン] 鼻水が噴出しておる。 ほら、これで拭くのじゃ。 [ブシュロン] 何度もありがとうございます…! ちーん! --- A --- [リンデン] ブシュロン、今日はクッキーを焼いてきたぞ。 いつものサンダーでな。ほれ、お食べ。 [ブシュロン] いつもすみません。いただきます。 干しブドウが入っていておいしいです… [リンデン] 今度はどこまで読んだんじゃ? [ブシュロン] ついに最後まで読んでしまいました… [リンデン] そうか。 では話してくれ。 [ブシュロン] …はい。 結婚後、Lは平凡ながら幸せな日々を過ごしました。 [ブシュロン] 夫婦は互いに手を取り合い、困難を乗り越え、 子どもたちの成長を見守りました。 [ブシュロン] しかし、子どもたちが独立して、これから夫婦二人きりの 時間だというとき…妻が死去します。 [ブシュロン] 妻の好物である焼き菓子を、 Lがサンダーで焼いているときに… [ブシュロン] ………… [ブシュロン] うっ… [リンデン] 泣くな、ブシュロン…と言いつつ… おかしいのぅ、今日はわしも涙もろいようじゃ… [ブシュロン] ここまで読んでわかりました。 これは、リンデン殿のお話だったのですね。 [リンデン] そうじゃ… 『L』はリンデンのLじゃったんじゃよ… [ブシュロン] でも、どうして? [リンデン] わしは遠くない将来、死んで妻の元へと旅立つ。 そうなる前に、半生を書き記しておこうと思ってのう。 [リンデン] ところが、それをうっかり落としてしまったのだ。 [ブシュロン] ではこの物語は、リンデン殿が!? すみません、勝手に読んでしまって。 [リンデン] いや、あんたに拾ってもらえてよかった。 本当にそう思う。 [ブシュロン] よく書かれた、素晴らしい物語でした。 [リンデン] これからも仲よくしておくれ。 わしの人生の最後の一頁まで… [ブシュロン] もちろんです。 [リンデン] さて。 今日は気分がいいからもう一品、作ろうかの。 [リンデン] サンダーの料理は時間がかかるから、 その間に若き友人の半生でも聞かせてもらおうか。 [ブシュロン] ええ、喜んで。 では、まずは俺の両親のことから… --- S ---