=== ブシュロン & スタルーク === --- C --- [スタルーク] ブシュロン、折り入ってお話があります… [ブシュロン] なんでしょうか。 スタルーク王子。 [スタルーク] ぼ…僕を弟子にしてください! [ブシュロン] えっ!? 弟子!? [スタルーク] や、やっぱり嫌ですよね… 僕みたいな奴が弟子だなんて… [ブシュロン] い、いえ、そういうことではないのです! 弟子とは一体、何の弟子ですか? [スタルーク] 僕は… あなたのような体格がほしいんです…! [ブシュロン] 体格…? [スタルーク] 僕は自分に自信が持てないんです… それはこの体つきにも問題があるのかもと… [スタルーク] ならば筋肉があれば変われるのではないかと、 そう思い至った次第でして… [ブシュロン] 仰ることはわかりました。 つまりは、体を鍛えて自信をつけたいと言うことですね。 [ブシュロン] そういうことでしたら 喜んで鍛錬にお付き合いしますよ。 [スタルーク] ありがとうございます…! ブシュロンは素晴らしい人です…! [スタルーク] 僕みたいなどうしようもない奴を こころよく受け入れてくれて… [スタルーク] はぁ…それに比べて僕なんか… [ブシュロン] そ、そんなことないですよ! しっかりしてください! [スタルーク] 大丈夫です、気を遣ってくださらなくても… 身も心も貧相なのは事実ですので… [ブシュロン] うーん…引き受けたものの… ちょっと心配だな… --- B --- [ブシュロン] 7! 8! 9! [スタルーク] も、もうダメだぁ…! はぁ…はぁ…! [ブシュロン] 王子、どうしたんですか? 腕立て伏せ、まだ9回ですよ? [ブシュロン] あと91回やるんですよ! [スタルーク] はぁ…ぜい… ひい…ふう… [ブシュロン] それとも目標を100回じゃなくて 10回に変えたほうがいいのか…? [スタルーク] ダメですよ、そんなの! ゼロが一つ無くなってるじゃないですか…! [スタルーク] 僕なんかのためにゼロを一つ減らすなんて… ゼロに申し訳ないです… [ブシュロン] では、腕立てはいったん保留にして、 腹筋の鍛錬をしましょう。 [スタルーク] わ、わかりました。 腹筋は…何回ですか…? [ブシュロン] 100回です。 [スタルーク] 100回!? [スタルーク] いや、弱気になっちゃダメだ! 僕は筋肉をつけて、自分に自信を持つんだ! [ブシュロン] その意気です! では、行きますよ! [ブシュロン] 1! 2! 3! [スタルーク] 4! あーっ! もうダメです! わき腹が攣りましたーっ! [ブシュロン] 王子…あと96回もありますよ… [スタルーク] 気持ち的には100回まで行くつもりなんですが、 体がついていかなくて… [ブシュロン] うーん。 困りましたね… [ブシュロン] では、少し休みましょうか。 わき腹が治ったらまた仰ってください。 [スタルーク] わ、わかりました… ぜえ、はあ、つらい… --- A --- [ブシュロン] 98! 99! 100! [スタルーク] やったああああ! [ブシュロン] やりましたね、スタルーク王子! 無事に100回到達です! [スタルーク] はい…! 信じられないです…! ものすごく嬉しいです! [ブシュロン] 俺はできると信じてましたよ。 で、筋肉はどうですか? ついた実感はありますか? [スタルーク] ええ、ほんのちょっと… こことか、力を入れると固くなるんですよ… [ブシュロン] 素晴らしい。 では、自信のほうはどうですか? [スタルーク] それが自信のほうは相変わらずで… [ブシュロン] そうですか… [スタルーク] ごめんなさい。 [スタルーク] 僕ごときダメ人間のために、 貴重な時間を割いて付き合ってもらったのに… [ブシュロン] そんなこと仰らないでください。 [スタルーク] 兄は素晴らしいのに弟は… [ブシュロン] え? [スタルーク] 僕は幼い頃からずっと、 そんな風に言われてきたんです。 [ブシュロン] …なるほど。そんなことを言われて育ったら、 自信を持てなくもなりますね。 [ブシュロン] ですが、王子。 俺だって自分に自信があるわけではないんです。 [スタルーク] そんな恵まれた体を持っているのに… ですか? [ブシュロン] 立派なのは体躯だけで、 中身は泣き虫で方向音痴です。 [ブシュロン] 泣き虫マッチョ。方向音痴の大徘徊筋肉… それが俺の、昔のあだ名です。 [スタルーク] なんという… [ブシュロン] ですので、自分に自信なんてありません。 それでもこうして生きています。 [ブシュロン] 自分に自信を持って生きている人なんて ほとんどいないのではないでしょうか。 [ブシュロン] きっとディアマンド王子だって、 そうだと思いますよ。 [スタルーク] 兄上も… [スタルーク] ふふ、そうですね。あなたはいい人です… 僕みたいな奴に、こんなに優しくしてくれて… [ブシュロン] 当たり前じゃないですか。 王子は大事な俺の弟子なんですから。 [スタルーク] あはは、そうでした。 [ブシュロン] また鍛錬しましょう。 いつでもお付き合いさせていただきます。 [スタルーク] はい、ありがとうございます… 師匠。 [ブシュロン] 光栄です、スタルーク王子。 --- S ---