=== セリーヌ & モーヴ === --- C --- [モーヴ] セリーヌ殿。 つかぬことをお聞きしても? [セリーヌ] ええ、構わないわ。 [モーヴ] フィレネのどこかに…大きな広葉樹が 一本だけ立つ丘陵はありませんか? [セリーヌ] 大きな広葉樹? すぐには思い浮かばないのだけれど… [セリーヌ] そこがどうかしたの? [モーヴ] 実は俺はフィレネの生まれなのです。 [モーヴ] 幼少時、その丘陵に 家族で旅行へと出かけたことを覚えていて… [モーヴ] 詳しい地名などはわからないのですが、 その美しい光景をずっと忘れられなくて。 [モーヴ] 願わくば再訪したいと思っているのです。 [セリーヌ] まあ…そうだったのね。 あなたがフィレネの出身だったなんて。 [セリーヌ] けれど、その情報だけでは、 場所を特定するのは少し難しいわね。 [モーヴ] そうですか… 困らせてしまい申し訳ない。 [モーヴ] ずっと忘れられないほど、 俺にとっては大切な思い出の場所だったので… [セリーヌ] そこまでの思い入れがあるのね… [セリーヌ] わかったわ。フィレネ出身の仲間の願いなら、 簡単に諦めることなんてできない。 [セリーヌ] どうか、わたしにも協力させて。 [セリーヌ] フィレネの第一王女として、 その思い出の場所を探してみせるわ。 [モーヴ] ありがとうございます、セリーヌ殿。 --- B --- [セリーヌ] これはどうかしら? [モーヴ] うーん… あまりピンとこないです。 [セリーヌ] じゃあ、こっちの絵画は? [モーヴ] …違いますね。 見たこともない景色です。 [セリーヌ] そう。フィレネの有名な観光地の絵画を 何枚か見てもらったけれど… [セリーヌ] どれもモーヴの思い出の場所では ないみたいね。 [モーヴ] 申し訳ありません。 こんなに用意してもらったのに… [セリーヌ] 他に何か思い出せることはない? その場所の景色以外で。 [モーヴ] ………… [モーヴ] 思い出しました。 [モーヴ] パイ包みです。 母の手作りの。 [モーヴ] 大きな広葉樹の下に座って 父と母と三人で食べたんです。 [モーヴ] 美味かったな… [セリーヌ] うふふ。 素敵な思い出ね。 [モーヴ] すみません。 場所の特定に繋がりはしない情報でした。 [セリーヌ] いいえ、構わないわ。 きっと幸せな時間だったのでしょうね… [モーヴ] ………… [モーヴ] …そうか。 [モーヴ] だから俺は、ずっと… [セリーヌ] モーヴ? [モーヴ] セリーヌ殿。 ここまで協力していただき感謝します。 [モーヴ] ですが、これ以上はもう大丈夫です。 今までありがとうございました。 [モーヴ] [セリーヌ] あっ、ちょっとモーヴ… [セリーヌ] いきなりどうしたのかしら。 --- A --- [セリーヌ] モーヴ。 どうして思い出の場所探しをやめたの? [モーヴ] セリーヌ殿… [モーヴ] 申し訳ありません。 [モーヴ] 協力して頂いたセリーヌ殿には、 説明しなければなりませんでしたね。 [セリーヌ] 話したくなければいいの。 ただ、少し気になってしまって。 [モーヴ] セリーヌ殿に協力してもらえば、いつかは… 思い出の場所を見つけることができたと思います。 [モーヴ] ですが、気づいてしまったのです。 [モーヴ] 俺があの場所を忘れなかったのは、 景色の美しさに圧倒されたのではなく… [モーヴ] あの場所で家族と 幸せな時間を過ごしたからなのだと。 [セリーヌ] …そういうことだったのね。 [モーヴ] 木漏れ日に照らされる優しい母の笑顔。 俺の頭を撫でてくれた父… [モーヴ] 好物のパイ包みを頬張って、幸せだった… あの頃は、不安や恐れなど、何もなかった。 [セリーヌ] モーヴ… [モーヴ] 今更、あの場所を見つけて訪れたとしても、 俺はそれほど感動しないでしょう。 [モーヴ] 大好きだった家族は、 もうこの世にいないのですから… [セリーヌ] ………… [セリーヌ] それでも探しましょう。 あなたの思い出の場所を。 [モーヴ] え? [セリーヌ] ご家族はもういないけれど… 今度はわたしたちと一緒に、そこで過ごしましょう? [モーヴ] セリーヌ殿… [モーヴ] 以前の言葉は撤回します。 思い出の場所探しの協力…引き続きお願いします。 [セリーヌ] ええ。もちろん。 [セリーヌ] 大切な仲間と共に過ごせば… 幸せな思い出が、また新しく生まれるはずだわ。 [モーヴ] …ありがとうございます。 セリーヌ殿。 --- S ---