=== クロエ & ジャン === --- C --- [ジャン] あ、あのう… クロエさん… [クロエ] あら、ジャン。 わたしに何か用かしら? [ジャン] 用っていうほどでもないんやけど、 気になってることがあって… [クロエ] 気になること? [ジャン] この胃薬を受け取ってほしいんや。 [クロエ] まあ、ありがとう。 [クロエ] でもわたし、特に悪いところはないんだけど… どうして胃薬をくれたのかしら? [ジャン] いつもけったいなもん食べとるから。 お腹を壊すのも時間の問題や思て。 [クロエ] ふふ。わたしが珍味ばかり食べているから 心配してくれたのね。 [クロエ] でも、安心して。 わたしの胃袋はとても丈夫なのよ。 [ジャン] そうなんや。 でも、油断は禁物やで。 [ジャン] この前は、得体のしれへん目玉みたいなんを 口いっぱいに頬張ってたやないか。 [ジャン] あんなんどう見ても 体に悪いに決まってるで… [クロエ] あれ、とても美味しいのよ。 薬のお礼に今度、おすそ分けするわね。 [ジャン] ええっ!? い、いや、その気持ちだけで充分や。 [ジャン] 何にせよ、気いつけてな。 病気は何よりも怖いんやで。 [クロエ] ええ、わかったわ。 ありがとう、ジャン。 --- B --- [クロエ] ジャン、この薬草でいいのかしら? [ジャン] ああ。さすがはクロエさんやな。 これは解熱の効果が期待できる薬草や。 [クロエ] そうなのね。 あっちにも、たくさん生えてたわよ。 [ジャン] なら少し多めに取っておいてもいいかもな。 おおきに、クロエさん。 [ジャン] 薬草取りに付き合ってくれて、 ほんまに大助かりやで。 [クロエ] ジャンの薬にはみんなお世話になってるんだから。 手伝えて嬉しいわ。 [ジャン] クロエさんは優しい人やな。 [ジャン] でも、気をつけてな。 この辺の森は薄暗い場所が多いんや。 [クロエ] 本当ね。 まるでお化けが出そうな雰囲気。 [ジャン] お化け? [クロエ] ふふ。 ジャンはお化けが怖い? [ジャン] …ううん。 そんなもん怖くないで。 [クロエ] あら、別に強がっているわけでもなさそうね。 [ジャン] お化けなんて、せいぜい人を怖がらせるだけや。 それよりもっと恐いのは…病気や怪我やな。 [ジャン] それは簡単に、 人の命を奪ってしまうんやから… [クロエ] …ええ。 そうね。 [クロエ] なら、少しでも病気や怪我に対応できるように もっと薬草を集めないと。 [ジャン] せやな。治せる病気や怪我だって この世界にはたくさんあるんやから。 [ジャン] ほな、もうちょっとだけ付き合ってもらうで、 クロエさん。 [クロエ] もちろんよ。 --- A --- [ジャン] ………… [クロエ] どうしたの、ジャン。 顔色が悪いわね。 [ジャン] 少し考え込んでしもうて… [クロエ] 何を? [ジャン] 自分は怖いんや。目の前で命が失われていくことが。 それを取りこぼしてしまうことが。 [ジャン] 戦場では毎日と言っていいほど 誰かが傷ついて、倒れてしまう… [ジャン] 平和なときには想像もできひんぐらい 多くの別れも経験することになる… [ジャン] クロエさん。 あんたは怖くないんか? [クロエ] わたしだって怖いわ。 きっとみんなも同じ。 [クロエ] でも、恐怖に立ち向かってでも 成し遂げないといけないことがある。 [クロエ] みんなはそう考えて日々を戦ってるんだと思うわ。 少なくともわたしはそうよ。 [ジャン] 恐怖に立ち向かってでも 成し遂げないといけないもの… [クロエ] ええ。 ジャンにも必ずあるはずよ。 [クロエ] だって、現にこうしてジャンは恐怖から逃げずに 戦場に立っているんだから。 [ジャン] そうやな… ありがとう、クロエさん… [ジャン] 恐怖心が消えることはないかもしれんけど、 逃げずにやっていけそうや。 [ジャン] 自分にはクロエさんっていう 心強い仲間もいるんやからな。 [クロエ] あら、光栄だわ。 [ジャン] 何せ丈夫な胃袋を持ったはるんや。 そんな人は簡単には死なへんよ。 [ジャン] けど…変なもの食べてお腹痛くなったら、 真っ先に自分のとこに来るんやで。 [クロエ] うふふ。そうするわね。 心配してくれてありがとう。 [ジャン] 絶対に、絶対やからな… [クロエ] …約束するわ。わたしは死んだりしないって。 一緒に頑張りましょうね、ジャン。 --- S ---