=== シトリニカ & ユナカ === --- C --- [シトリニカ] …ユナカ。 あなた、今度の町の会議で何をするつもりなの? [ユナカ] なんの話でござるか? [シトリニカ] 知っているのよ。あなたが、ブロディアの有力者が集う 会議の詳細を嗅ぎ回っていることは… [ユナカ] …えっ? [シトリニカ] ブロディアの国も民も、みんなわたしの宝物… 下手なことをしたら、ただじゃすまないわ。 [ユナカ] 待ってくだされ。 何か誤解されているのではないかと… [シトリニカ] そうかしら。そもそもあなた、本当は何者なの? 素性を偽っているわよね? [ユナカ] そ、それは… [シトリニカ] 答えられないわよね。 だってあなたの正体は… [シトリニカ] ブロディアの暗殺者だから。 [ユナカ] !? [シトリニカ] わたしなんかに見抜かれるとは 思っていなかった? [シトリニカ] わたしは物知らずに見えるかもしれないけれど、 国を愛する気持ちは誰にも負けないわ。 [シトリニカ] 調べはついているの。 白状しないなら、みんなに話すだけよ。 [ユナカ] ………… [ユナカ] 仰る通り。 わたくしめはブロディアの暗殺者でした。 [ユナカ] ですが、それは過去のこと… そのようなことからは、もう足を洗っております。 [シトリニカ] どうかしら。 [ユナカ] 本当です。 せめて話だけでも聞いていただきたい。 [シトリニカ] ………… [シトリニカ] わかったわ。 では日を改めて、じっくり話を聞かせて。 [シトリニカ] でも、覚えておいて。大事なものを守るためなら、 わたしは鬼になれる。本気で危険を排除するわ。 [ユナカ] はい。覚えておきます。 --- B --- [シトリニカ] では、話を聞かせて。 もし嘘をついたら… [ユナカ] 嘘などつきませぬ。 幼少期から話をさせていただきます。 [ユナカ] わたくしめの本名はユナカではなく、 ラリマー。 [ユナカ] 生まれはブロディアの断崖の村で、 貧しい両親のもとに生まれました。 [ユナカ] 物心がついた頃、『私』は捨てられました。 拾ったのは殺し屋の男… [シトリニカ] ………… [ユナカ] 男は言いました。 「働き手がほしかった」と。 [ユナカ] 男は私に殺しの技術を教え込みました。 [シトリニカ] なんのために? [ユナカ] 楽して金を儲けたいからと言っていました。 [シトリニカ] 殺しの仕事をあなたに押し付けたってことね。 [ユナカ] はい。 [シトリニカ] そんな過去があったのね… [シトリニカ] でも、だからと言って情けをかけるつもりはないわ。 [ユナカ] もちろん、情けなど無用です。 それに話はまだ終わりではありません。 [シトリニカ] 続きを話して。 [ユナカ] …!? [シトリニカ] どうしたの? [ユナカ] 人がきた模様です。 続きは次の機会に。 [シトリニカ] わかったわ… --- A --- [シトリニカ] ユナカ、この間の続きを話して。 [ユナカ] …はい。 [ユナカ] 私は仕事と割り切って、 殺し屋の男とともに、淡々と人を殺めていきました。 [ユナカ] すると、ある日、男が病に倒れました。 [ユナカ] 男は不治の病に侵されていて、 余命いくばくもなかったのです。 [ユナカ] 男は言いました。私を拾った本当の理由は、 「後継者がほしかったからだ」と。 [ユナカ] そして、今まで稼いだ金を差し出すと、 これを報酬に自分を殺してくれと依頼してきました。 [シトリニカ] え…!? [ユナカ] 正直、ろくでもない男でした。 でも、彼のおかげで生きることができたのも事実。 [ユナカ] …私は、男の願いを聞き入れることにしました。 [シトリニカ] ………… [ユナカ] それ以降、わたくしめは殺しから足を洗い、 今日まで生き抜いてきました。 [ユナカ] 名前もユナカに変え、 別人として生きるようになったのです。 [シトリニカ] そうだったのね… [ユナカ] それで、例のブロディアの 有力者が集う会議のことですが… [シトリニカ] そう。それよ。 それがあなたを疑うきっかけだったんだから。 [ユナカ] 少々、根回しをしておりました。 [シトリニカ] 根回し? [ユナカ] ええ。実は…恵まれない子どものための基金を 立ち上げたいと考えていまして。 [ユナカ] それを会議の中で、 皆さまにご提案したいと。 [シトリニカ] …! [シトリニカ] そ、それでいろんな人に会議の話を 聞いていたということ? [ユナカ] はい。わたくしめのような境遇の子どもたちの 力になりたいと。その一心です。 [シトリニカ] ………… [シトリニカ] わたしったら滑稽ね。 これじゃ道化師のようだわ… [ユナカ] いえ、いいのですぞ… 気にしておりませぬ… [シトリニカ] ユナカ。お詫びと言ったらなんだけど、 その基金の立ち上げ、わたしにも手伝わせて。 [ユナカ] えっ? [シトリニカ] 戦いが日に日に熾烈さを増していく中で、 親を失った子どもたちが町に増えているの。 [シトリニカ] ブロディアの人々も、そのことに心を痛めていて 何とかできないかと話していたところよ。 [シトリニカ] お願い。わたしを使って。 あなたを疑った罪滅ぼしをさせてちょうだい。 [ユナカ] 罪滅ぼしだなんてとんでもない。 そのご提案、むしろ感謝しかありませぬ。 [シトリニカ] よかったわ… [シトリニカ] あなたのしようとしていることは素晴らしいことよ。 絶対に実現させてみせるわ。 [シトリニカ] 長い付き合いになると思うけど よろしくね。 [ユナカ] こちらこそ。 このご恩は一生、忘れませぬぞ。 --- S ---