=== クラン & ヴェイル === --- C --- [ヴェイル] クラン。 何をやってるの? [クラン] ヴェイル様。 これは、ピクルスを漬けているんです。 [ヴェイル] ピク…ルス… 聞いたことがない食べ物だわ。 [クラン] 野菜やお肉を酢漬けにして作る、保存食ですよ。 [クラン] 今、新しい味に挑戦してるんですけど、 一つ食べてみますか? [ヴェイル] そうだね。 いただいてみようかな。 [ヴェイル] …もぐもぐ…んー… [クラン] 僕、ピクルス作りには 結構自信あるんですよ。 [ヴェイル] あまり味がしないわ。 [クラン] えっ? [クラン] そ、そうですか? 結構酸っぱいと思うんですけど… [ヴェイル] 味に刺激が足りないのよ。 トウガラシをたくさん追加したらどうかな。 [クラン] そんなことしたら、 ピクルスじゃなくなっちゃいますよ。 [ヴェイル] 本当にそうかしら。 [ヴェイル] クランの思うピクルスが、 本当に正しいピクルスなの? [クラン] えっ… [ヴェイル] ピクルスの概念に捕らわれていたら、 新しい味なんて生み出せないと思う。 [クラン] た、確かに… [クラン] 僕は、自分の知っているピクルスを 作っているだけだったんだ。 [クラン] そんなことじゃ… 今以上に美味しいピクルスは作れない… [クラン] ヴェイル様! すごいです! [ヴェイル] そういうことだから、 トウガラシのピクルスを作ってみよう? [クラン] わかりました! 何事も挑戦ですね! --- B --- [ヴェイル] クラン。 トウガラシのピクルスはできた? [クラン] 今漬けているところですけど… 液が真っ赤で、不安になってきました。 [ヴェイル] 大丈夫、きっと美味しくなるわ。 ふふっ、完成が楽しみね。 [クラン] ………… [ヴェイル] どうしたの? 急に黙って。 [クラン] ヴェイル様って、僕の妹みたいだなって。 [ヴェイル] 妹? なんでそう思うの? [クラン] 根拠もないのに大丈夫って言うところが すごく似てるなって。 [ヴェイル] 何よ、失礼ね。 [クラン] す、すみません! [ヴェイル] ………… [ヴェイル] クランって双子のお兄ちゃんなのよね。 [クラン] ええ。そうです。 [ヴェイル] きょうだいって… いったいどんな感じなのかな… [クラン] え? [ヴェイル] わたしはきょうだいと ずっと離れて暮らしていたの。 [ヴェイル] その時間を埋めるのが難しくって… なんか接し方がよくわからないの… [ヴェイル] だから、いつも二人一緒のクランが、 とても羨ましいわ。 [クラン] ………… [クラン] きょうだいというのは、 空気みたいなものだと思います。 [ヴェイル] 空気…? [クラン] 当たり前に存在するけど、ないと困る。 そんな感じです。 [ヴェイル] そうなんだ… [ヴェイル] わたしもなれるかな… 空気みたいに感じられるきょうだいに… [クラン] 絶対になれますよ。 [クラン] 離れて暮らしていたとしても、 家族であることに変わりないんですから。 [ヴェイル] ありがとう、クラン。 とっても励みになるわ。 --- A --- [クラン] ヴェイル様。 ついにトウガラシのピクルスが完成しました。 [ヴェイル] 本当!? クラン、食べてみてもいいかな。 [クラン] もの凄く辛そうですけど… ど、どうぞ… [ヴェイル] …んんっ! [クラン] ヴェイル様! 大丈夫ですか! [ヴェイル] かはっ…ごほっ、ごほっ… こ、これ…これは… [クラン] ああっ、ヴェイル様が! すぐにお水をお持ちします! [ヴェイル] だ…ごほっごほっ、大丈夫よっ。 [ヴェイル] とっても、美味しいわ! [ヴェイル] これは、癖になる味っ! [クラン] 苦しそうに見えますけど… 本当に大丈夫なんでしょうか。 [ヴェイル] ふぅ… やっと落ち着いたわ。 [ヴェイル] クラン。 あなたも食べてみて。 [クラン] え…? [ヴェイル] 大丈夫よ。 とても美味しいから。 [クラン] は、はい。 ヴェイル様のご命令とあらば…! [クラン] もぐっ…! うっ、うう…! [クラン] か、辛い… [クラン] 辛いけど… 刺激的で… [クラン] すっごく美味しいです! [ヴェイル] ねっ! 挑戦してみてよかったでしょう! [クラン] はい、そう思います! [クラン] ………… [クラン] ヴェイル様。せっかくなので、 もう一つ挑戦してみませんか? [ヴェイル] 挑戦? もっと辛いものがあるの? [クラン] 違います。 僕ときょうだいになることに、挑戦してみませんか? [ヴェイル] えっ? [クラン] 勿論、きょうだいごっこみたいなものです。 [クラン] でもそれで、本当のきょうだいとの接し方も わかってくるのではないでしょうか。 [ヴェイル] なるほど… [ヴェイル] でも、いいの? そんなことをお願いして… [クラン] ヴェイル様には新しいピクルスの作り方を 教えてもらいましたから。 [クラン] そのお礼です。 [ヴェイル] わかった。 わたし、クランときょうだいになってみる。 [クラン] じゃ、お姉ちゃん。 これからよろしくね。 [ヴェイル] わたしが姉でクランが弟なのね。 [クラン] はい。僕にいるのは妹だけなので。 上のきょうだいに憧れていたんです。 [ヴェイル] わたしも、下のきょうだいはいないからいいかも。 じゃあ、クランのことを弟と思うことにするわ。 [クラン] ありがとう、お姉ちゃん! [ヴェイル] ふふ。ちょっと変な感じがするけど… 悪い気分じゃないわね。 --- S ---