=== ディアマンド & アイビー === --- C --- [アイビー] …! そこに誰かいるの? [アイビー] 違う…気配がないわ。 まさか、お化け…? [アイビー] だ、だめよ… 私、お化けだけは… [ディアマンド] アイビー王女。 [アイビー] きゃあっ!? [ディアマンド] 驚かせてすまない。だが… 今王女が怯えていたのは、草木の影だ。 [アイビー] え…ただの、草木の影? お化けじゃなくて…? [アイビー] …本当だわ… [ディアマンド] 見間違えるとは、らしくないではないか。 [アイビー] ………… [アイビー] ディアマンド王子… 今のことは他言無用でお願い… [アイビー] 一国の王女が草木を見間違えて 恐れおののくなんて、誰にも言えないわ… [アイビー] ましてや、隣国の… ブロディア王国の王子に助けられるなんて… [ディアマンド] もちろん。 誰にも言うつもりはない。 [アイビー] …恩に着るわ。 [ディアマンド] だが、その様子では、 しばらくは恐ろしいだろう。 [ディアマンド] アイビー王女。 よければこれを受け取ってくれ。 [アイビー] なにかしら…石…? 透き通った水色をしているわね… [ディアマンド] ブロディア産の鉱石だ。 勇敢という意味を持つ。 [ディアマンド] お守りとして使われるものだ。 持っていれば、怯えることはなくなるだろう。 [アイビー] で、でも… 隣国から施しを受けるわけには… [ディアマンド] ではこれは、私個人の気持ちだ。 持っていてくれ。 [アイビー] ………… [ディアマンド] 不要であれば捨てても構わない。 それでは失礼する。 [ディアマンド] [アイビー] あ…ディアマンド王子。 [アイビー] …綺麗な鉱石だわ。 ブロディアでは、こんな石が採れるのね… --- B --- [アイビー] ディアマンド王子… 先日は申し訳なかったわ… [ディアマンド] アイビー王女。 何を詫びる必要がある。 [アイビー] 先日助けられたお礼も… 鉱石をいただいたお礼もしていないもの。 [アイビー] だから一言、 感謝の意を伝えたいと思って… [アイビー] ありがとう。ディアマンド王子。 [ディアマンド] そんなこと気にしなくていい。 [ディアマンド] ブロディアがしてきたことを考えれば、 当たり前の反応だ。 [アイビー] 確かにイルシオンは、 ブロディアに何度も侵攻されたわ。 [アイビー] 多くの血が流れ、民は苦しんだ… もし侵攻がなかったらと思うことは沢山あるわ。 [ディアマンド] 当然のことだ。 だから、私への感謝など必要ない。 [アイビー] でも、貴方は… 個人の気持ちで私を助けてくれた。 [ディアマンド] ………… [アイビー] だから、私も個人の気持ちとして… お礼を言いにきたのよ。 [ディアマンド] アイビー王女… [ディアマンド] そういうことであれば、 その礼は素直に受け取ろう。 [アイビー] …個人間では、こんなにも簡単に 感謝ができるのね。 [アイビー] きっと、謝罪だって簡単なのに。 国同士のやり取りとなると、難しいものね。 [ディアマンド] …そうだな。 [ディアマンド] 父は国を存続させるために、 武力による領土拡大を図った。 [ディアマンド] これがブロディア王国のやり方だが、 私は間違いだと思っている。 [アイビー] ディアマンド王子… [ディアマンド] しかし、父亡き今でも、どうやって 我が国の方針を変えればいいのか… [ディアマンド] まだ答えが出ていない。 私は未熟者だ。 [アイビー] その気持ちは…わかるわ。 [ディアマンド] 急にこんな話をしてしまって、 すまなかったな。 [アイビー] いえ…複雑な心境ではあるけれど… 貴方が優しい人で安心したわ。 [アイビー] 少しだけ、未来に希望が見えた気がする… 私たちが王となった時代の希望が。 --- A --- [アイビー] ディアマンド王子。 貴方に見せたい物があるの。 [ディアマンド] これは… 以前渡した、鉱石の首飾りか。 [アイビー] そう…貴方からもらった鉱石を加工して 簡単な装飾品にしてみたのよ。 [ディアマンド] …実に見事だ。 [アイビー] イルシオンでは、美しい鉱石は採れないけれど… 工芸品を作る技術ならあるの。 [アイビー] ねえ、ディアマンド王子… [アイビー] 力以外でも国を豊かにする方法は… いくらでもあるんじゃないかしら。 [ディアマンド] ………… [アイビー] 私、貴方から鉱石をもらって… 少しだけ勇敢になれた気がするの。 [アイビー] だから今日…このことを、 貴方に伝えに来られたわ。 [ディアマンド] 礼を言う、アイビー王女。 此度は…一国の王子として。 [アイビー] え…? [ディアマンド] …ブロディア王国の体質を変えるのは 簡単なことではない。 [ディアマンド] だが、戦争で利益を得たところで、 それが尽きれば次の戦争を生むだけだ。 [ディアマンド] そんなことを続けていていいわけがない。 変えなければならないんだ。 [ディアマンド] ブロディアとイルシオン…二国の文化が融合した この首飾りを見たら希望が見えた。 [ディアマンド] …約束しよう。ブロディアは、 私の代では平和な統治をしてみせる。 [アイビー] ディアマンド王子… [アイビー] その言葉、しかと受け止めたわ。 もちろん、私たちも全力を尽くす… [アイビー] もし、ブロディアと和解ができたら… そのときはイルシオンとの交易路を作りましょう。 [アイビー] イルシオン王国にブロディア王国の鉱石を 輸入させてちょうだい。 [ディアマンド] この首飾りのような商品を作ることができれば、 お互い争わなくても利益を得られるだろうな。 [ディアマンド] …いい案だ。 [アイビー] 実現したら素敵ね。 [ディアマンド] 実現させてみせるさ。 [ディアマンド] アイビー王女。友として握手を交わそう。 この世界を平和にしていくために。 [アイビー] 喜んで。ディアマンド王子。 隣国同士…わかり合うための第一歩として。 --- S ---