=== ディアマンド & ジェーデ === --- C --- [ジェーデ] ………… [ディアマンド] どうだ? [ジェーデ] あ、ディアマンド様… [ジェーデ] 異常ありません。 とても静かな夜です。 [ディアマンド] そうか。 [ジェーデ] こうして警備に立つと、 先日のことを思い出します。 [ディアマンド] 先日のこと? [ジェーデ] 吹雪の中、イルシオンとの国境を 守っていたときのことです。 [ディアマンド] ああ… ひどい雪だったな… [ジェーデ] あのときの私は、ディアマンド様と 合流できるか不安でなりませんでした… [ディアマンド] 私もだ。 [ジェーデ] えっ? [ディアマンド] 優秀な臣下を失いたくない。 その一心で歩き続けた。 [ディアマンド] ジェーデの姿を見つけたときは、 安堵して胸をなで下ろしたものだ。 [ジェーデ] そんな…もったいないお言葉です… ありがとうございます。 [ディアマンド] そろそろ夜が明ける。 戻って仮眠を取ってくれ。 [ジェーデ] わかりました。 [ディアマンド] ご苦労だった。 執筆のほうも、楽しみにしているぞ。 [ジェーデ] …はい。 そちらも、滞りなく。 --- B --- [ディアマンド] ふっ…ははは! [ディアマンド] あーっはっはっは! だめだ…笑いすぎて…苦しい…! [ジェーデ] ディアマンド様…大丈夫ですか? [ディアマンド] 大丈夫なものか…危うく死にかけた…! ジェーデの執筆の才能は恐るべきものだな。 [ジェーデ] 私の小説でそんなに笑っていただけて、 たいへん光栄です… [ジェーデ] 今、どこを読まれているんですか? [ディアマンド] 『おとぼけ☆アンバーくん』の第十九話だ。 [ジェーデ] あぁ…アンバーくんが苦労して 武術大会で優勝したところですね。 [ディアマンド] そうだ。誇らしげに故郷に帰ったのに、 故郷の人たちは誰も信じない… [ディアマンド] アンバーくんはシクシク泣き出し、 アルパカに乗り、草原を走って涙を乾かす… [ジェーデ] しかし降りた瞬間、アルパカに唾を吐きかけられ、 より落ち込むという… [ディアマンド] ここはもはや、ただの戯話ではない。 芸術の域に達しているぞ。 [ディアマンド] 次の新作はいつ上がる? [ジェーデ] それが、そのことでお話が… 実は、しばらく小説を書くのを止めようかと… [ディアマンド] なんだと? [ディアマンド] 確かに、戦も苛烈になってきた。 それも仕方のないことなのかもしれないな。 [ジェーデ] はい。 それもあるのですが… [ジェーデ] 最近は、何を書いても おもしろくなく思えるようになってしまって… [ディアマンド] …不調ということか。 [ジェーデ] いったん筆を置こうと思います。 期待していただいたのに、申し訳ありません。 [ディアマンド] 謝ることはない。 私はいつまでも、続きを楽しみにしている。 [ジェーデ] ありがとうございます。 また書けるようになりましたら、すぐにでも… [ディアマンド] いや、しばらく休んでくれていい。 その間は… [ディアマンド] …私が代わりに書こう。 [ジェーデ] えっ? [ディアマンド] 安心してくれ、番外編だ。 一度やってみたいと思っていた。 [ジェーデ] あの…本気ですか? [ディアマンド] もちろん本気だ。 書き上がったら呼ぶ。それまで待っていてくれ。 [ジェーデ] わ、わかりました… --- A --- [ディアマンド] ジェーデ、出来たぞ。 読んでみてくれ。 [ディアマンド] 私が書いた番外編、 『おとぼけ☆アンバーくんのアルパカくん』だ。 [ジェーデ] ほ、本当にお書きになられたのですね… [ジェーデ] わかりました。 それでは拝読いたします… [ディアマンド] ………… [ジェーデ] ふふ…面白いです。 でも… [ディアマンド] どうした。 遠慮せず言ってみろ。 [ジェーデ] ここの部分ですが…少し変えれば、 もうひと笑いは取れるかと。 [ディアマンド] ふむ。 ではどうするのがいいのだ? [ジェーデ] 私だったら… アルパカくんの毛を一斉に爆発させます。 [ディアマンド] ふっ… [ジェーデ] そして次の瞬間、前よりもサラサラな毛に 突如として生え変わり… [ジェーデ] 乗ろうとしたアンバー君を勢いよく滑らせ、 地平線の彼方まで飛ばします。 [ジェーデ] それを見届けたアルパカくんは、 せつなそうに地面に唾を吐くのです。 [ディアマンド] くっ… [ディアマンド] はははは! [ディアマンド] なるほどな。さすがとしか言いようがない。 確かにそれこそ、最適の流れだろう。 [ジェーデ] ありがとうございます… ですが、ディアマンド様のお話も素晴らしいです。 [ジェーデ] ぜひこのまま、続きを… [ディアマンド] いや…私の原稿は、こうだ。 [ジェーデ] えっ…!? どうして、丸めてしまわれるのですか! [ディアマンド] これは役目を果たした。 ジェーデが生き生きと話を書けたからな。 [ジェーデ] 話を…? [ディアマンド] 先ほどのアルパカくん、見事だった。 今の要領で執筆すればいいのではないか? [ジェーデ] ! そんな、もしかして… [ジェーデ] 私を元気づけようとして… 原稿を書いてくださったのですか? [ディアマンド] わざと下手に書いたと言いたいのか? 私はそんなに器用な男ではない。 [ディアマンド] 本気で執筆したものの、天才の前に砕け散った。 それだけのことだ。 [ジェーデ] ディアマンド様… [ジェーデ] …いいえ。そうではないのでしょう。 きっと、貴方は最初から… [ジェーデ] ありがとうございます… [ディアマンド] おっと。 そろそろ任務の時間か。 [ディアマンド] ジェーデ。 今夜の警備はいい。私だけでやる。 [ジェーデ] しかし… [ディアマンド] 不調なのは、戦で疲れているせいもあるだろう。 たまにはゆっくり休んでくれ。 [ディアマンド] …新作、楽しみにしているぞ。 君の小説が、私の最高の息抜きだ。 [ジェーデ] わかりました… ありがとうございます。 [ジェーデ] このジェーデ… 我が主君が必要としてくださる限り、 [ジェーデ] 貴方様の御身を、そして、その御心を… 守り続けると誓いましょう。 --- S ---