=== ディアマンド & スタルーク === --- C --- [スタルーク] 兄上から鍛錬に誘っていただけるとは、 感激です。 [ディアマンド] ああ。 たまには兄弟で汗を流すのもいいものだろう。 [スタルーク] 僕なんか兄上の足下にも及びませんから。 本日は勉強させていただきます。 [ディアマンド] 誰にだって得意不得意はあるものだ。 そうやって自分を卑下するのはお前の悪い癖だぞ。 [スタルーク] 卑下ではなく事実です… ブロディア王子といえば兄上ですから。 [ディアマンド] お前だってブロディア王子だろう。 [スタルーク] 僕はブロディア王子の ディアマンドじゃない方、です。 [ディアマンド] なんだその妙な言い回しは… さては私のいないところで触れ回っているな。 [ディアマンド] とにかく、その心の弱さ… 敵には見せるな。 [ディアマンド] 戦場では己より強い敵と戦わねばならぬときがある。 そのときに弱い部分を見せてはならん。 [スタルーク] はい…心得ます… [ディアマンド] まずは己の長所を伸ばすこと。 それが強い敵と渡り合う術の一つだ。 [ディアマンド] スタルーク、お前は弓が得意だったな。 [スタルーク] 周囲の人たちが言うだけです。 得意というほどでは… [ディアマンド] さっき言ったばかりだろう。 その自信のなさがお前の弱点なんだ。 [スタルーク] 兄上にも弱点はあるのですか? [ディアマンド] ふっ、あると思うか? [スタルーク] 思いません… 兄上は完璧ですから。 [ディアマンド] さぁ、鍛錬を始めるとしよう。 すべてはブロディア王国の未来のために。 [スタルーク] …はい。 [スタルーク] やれるところまで頑張ります。 僕だってブロディアを愛していますので。 --- B --- [ディアマンド] はぁ…はぁ… [ディアマンド] くっ…こんなことでは… はぁ…はぁ…ブロディア王国は守れんぞ… [スタルーク] あ、兄上、どうなされたのですか? そんなに汗をかかれて…! [ディアマンド] スタルークか… 恥ずかしい姿を見せてしまったな。 [ディアマンド] 心配しなくていい。 魔道士たちと鍛錬をしていただけだ… [スタルーク] 兄上が鍛錬でここまで疲弊しているのは 見たことがありません。 [スタルーク] 何かのご病気かもしれません。 すぐに医者を… [ディアマンド] そうではない。 [ディアマンド] …スタルーク。 以前、私に弱点がないのかと聞いたな。 [ディアマンド] これが私の弱点だ。 [スタルーク] 魔道士との鍛錬が…弱点? どういうことなのですか? [ディアマンド] 幼いころ、魔法の扱いに失敗して 大怪我を負ったことがあってな。 [ディアマンド] それ以来ずっと…魔法が怖いのだ。 [スタルーク] 兄上が…? [ディアマンド] もちろん、弱点を克服するために 日々努力している。 [ディアマンド] 魔道士との鍛錬も、そのためのものだ。 [スタルーク] 兄上は完璧で… 弱点などないとばかり… [ディアマンド] 世の中に完璧な人間などいない。 だから鍛錬に励むんだ。 [ディアマンド] スタルーク。 この話は誰にもするなよ。 [スタルーク] もちろんです。 …絶対に言いません。 [ディアマンド] そろそろ私は鍛錬に戻る。 魔道士たちを待たせているからな。 [スタルーク] 兄上、そこまで無理をしなくても… [ディアマンド] ブロディア王国を守るために、 私は強くならなくてはならないんだ。 [スタルーク] ! [ディアマンド] お前と話していたら落ち着いてきた。 だから心配しなくていい。 [ディアマンド] [スタルーク] あ、兄上…! [スタルーク] 兄上に恐いものがあったなんて… そんなこと…全然知らなかった… --- A --- [スタルーク] はっ! [スタルーク] よし、中心に当たった… この調子で、あと50本。 [ディアマンド] いい腕じゃないか。 [スタルーク] 兄上… ご覧になっていたのですか… [ディアマンド] これほどの弓の腕があるのなら、 特技と言ってもいいだろう。 [スタルーク] ありがとうございます。 ですが、まだまだです。 [スタルーク] もっと鍛錬して、上手くならないと… [ディアマンド] いい心がけだ。 それでこそ我が弟。 [スタルーク] ………… [スタルーク] 兄上。僕と… 弓矢で対決していただけませんか? [ディアマンド] ほう。 それは面白そうではないか。 [ディアマンド] 10本中何本中心に当てられるか。 それで勝敗を決めるとしよう。構わないか? [スタルーク] はい。 兄上、いざ勝負です。 [ディアマンド] 驚いた。スタルークが… これほどまでやるとは… [スタルーク] 兄上が10本中9本。 僕が10本中8本…完敗です… [スタルーク] 兄上は酷い人です。僕の弓の腕を褒めておいて、 自分の方が遙かに上をいくのですから。 [ディアマンド] 私にも兄の威厳というものがある。 まだまだスタルークに負けられん。 [スタルーク] …ふふ。 それでこそブロディア王国第一王子。 [スタルーク] こんなに素晴らしい方を兄に持てて… 心強い限りです。 [ディアマンド] 私もスタルークが弟で、 よかったと思っている。 [ディアマンド] こんなにも優しく、 弓の腕で私に迫る人間は他にいない。 [スタルーク] もっと鍛錬して強くなります。 そのときは再戦させてください。 [ディアマンド] ああ、いいだろう。そのときは、 私だってより強くなっているがな。 [スタルーク] …兄上らしいです。 [スタルーク] 僕だっていつかは兄上のように… いいえ、兄上を越えてみせますから。 [スタルーク] そして、あなたのことを… 何があっても、守ってみせる。 [ディアマンド] ん…何か言ったか? [スタルーク] …いいえ、何も。 --- S ---