=== エーティエ & セリーヌ === --- C --- [エーティエ] 二人でお茶をするのは久しぶりですわね。 セリーヌ様。 [セリーヌ] エーティエったら。今は気軽に呼んでちょうだい。 わたしたちは幼馴染なのだから。 [エーティエ] わかりましたわ。セリーヌ。 お茶のお味はいかがですか? [セリーヌ] すごくおいしいわ。 素敵な茶葉を用意してくれてありがとう。 [セリーヌ] 香りが芳醇で甘みが強い… これは北部の茶畑のオリジンティーね。 [エーティエ] 詳しい産地まで見抜くとは… さすが紅茶好きですわね。 [セリーヌ] ほら、エーティエも飲んで。 他のものとは、香りが違うから。 [エーティエ] ありがとうございます。 それでは、いただきます。 [エーティエ] ………… [セリーヌ] どう? [エーティエ] …うーん。あたくしには、 他の地方のオリジンティーと同じに思えます。 [セリーヌ] うふふ。相変わらずね。 エーティエは昔から紅茶の味に疎いんだから。 [エーティエ] あたくしが疎いのではなく、 セリーヌがすごいんですのよ。 [セリーヌ] あら…? [セリーヌ] エーティエ、どうしたの。 [エーティエ] 何がでしょうか? [セリーヌ] ティーカップを持つ手が震えてる。 ほら。 [エーティエ] ああ、いえ…なんでもございません。 気のせいですわ。 [セリーヌ] そう? それならいいけれど… --- B --- [セリーヌ] 今日も紅茶が美味しいわね。 ひと息つけるこの時間が、わたしは好きよ。 [エーティエ] あたくしもですわ。大変なことも多いですが、 この時間があるから頑張れていますの。 [セリーヌ] 本当ね。 [エーティエ] あたくしたちが、一緒にお茶をするようになったのは いつ頃からでしょうか。 [セリーヌ] はっきりとは覚えていないわ。 でも随分幼い頃から、既にこうしていたわね。 [セリーヌ] あのころ、お兄様は本当に病弱で… わたしは毎日心配していたわ。 [エーティエ] そうでしたね。そしてその心配が、 セリーヌを強くしたのですわ。 [セリーヌ] 何かあったときに… お兄様を支えて差し上げなければと思ったから。 [セリーヌ] でも、わたしが強くなったころには、お兄様は 筋肉鍛錬ですっかり元気になられていたけれど。 [エーティエ] うふふ。たくましく変わられたご兄妹の姿、 今でもはっきりと覚えていますわ。 [エーティエ] そして、あたくしはアルフレッド様の臣下となり、 筋肉鍛錬を勧められ、今ではすっかりこの通り… [セリーヌ] …エーティエ。 [エーティエ] どうかされましたか? [セリーヌ] あなた、やっぱり手が震えているわ。 [エーティエ] あっ… [セリーヌ] もしかして具合でも悪いの? 何か、病気でも? [エーティエ] 違いますわ。 ただ、ティーカップが重たいだけですの。 [セリーヌ] それはもちろん知っているわ。 [セリーヌ] あなたはお兄様の臣下となってからは、 鍛錬と言っては鉛入りのティーカップを使っていた… [セリーヌ] でも、最近は手が震えたことなんてなかった。 いつも軽々と持ち上げていたじゃない。 [エーティエ] セリーヌ… 実は… [エーティエ] 実は、ティーカップを新調したのです。 [セリーヌ] え? [エーティエ] 持ってみてくださいませ。 [セリーヌ] うぐっ!? な、なにこの重さ…! ちょっとした砲丸より重たいわ…! [エーティエ] 職人に頼んで作っていただいたんですの。 これでさらなる強化が期待できますわ。 [セリーヌ] はあ…こんなティーカップでお茶していたら、 手が震えて当然ね。 [エーティエ] そういうわけでございます。 [セリーヌ] …良かった。エーティエに何かあったら、 わたしはきっと、立ち直れないわ。 [エーティエ] セリーヌ… 心配をかけて申し訳ありませんでしたわ。 [セリーヌ] いいの。何ごともなくてよかった。 また一緒にお茶をしましょうね、エーティエ。 --- A --- [セリーヌ] エーティエ、見て。 [セリーヌ] オリジンティーに蜂蜜を入れてみたのだけれど、 これは新発見かもしれないわ。 [エーティエ] 本当ですか? では、あたくしも… [エーティエ] ! [エーティエ] 本当ですわ。これは絶品ですわね。 [セリーヌ] うふふ。 エーティエはすごいわ。 [エーティエ] すごい…? 何がですの? [セリーヌ] ほら、もう手が震えなくなっている。 筋肉がついた証拠ね。 [エーティエ] そうではありませんわ。 普通のティーカップに替えただけですの。 [セリーヌ] どうして? もしかして、もう鍛錬はやめるとか…? [エーティエ] 鍛錬は続けますわ。 ただ、セリーヌの前ではやめようかと。 [セリーヌ] ごめんなさい。 わたしがうるさく気にしたせいね。 [エーティエ] いえ、違いますわ。 [エーティエ] 鍛錬は大事ですが、 セリーヌと過ごす時間はもっと大事ですから。 [エーティエ] ゆったりとしたお茶の時間にまで、 鍛錬をするのはやめようと思いましたの。 [セリーヌ] エーティエ… [エーティエ] 戦局は日に日に厳しくなってきております。 [エーティエ] こうして二人でいられる時間だって、 いつかは取れなくなってしまうかもしれません… [エーティエ] だから、セリーヌと一緒のときは、 鍛錬のことを考えないようにしたいのです。 [セリーヌ] ………… [エーティエ] セリーヌ? [セリーヌ] …今の言葉、感激してしまったの。 そんな風に思ってもらえていたなんて。 [エーティエ] 当然ですわ。セリーヌは… あなたはかけがえのない親友なんですから。 [セリーヌ] わたしも同じ気持ちよ。 エーティエ。 [エーティエ] ありがとう。 光栄ですわ… [セリーヌ] …あら? また手が震えているけれど… [エーティエ] これは鍛錬ではありません。 涙をこらえるのに必死で。 [セリーヌ] エーティエったら… さ、ほら。こんな時ぐらいわたしに甘えて。 [エーティエ] うぅっ…セリーヌ… [セリーヌ] うふふ。 そんなに強く抱きしめないで。 [セリーヌ] って… う…うぐっ… [セリーヌ] エーティエ…ちょっと力が… 本当に苦しいわ… --- S ---