=== オルテンシア & リンデン === --- C --- [オルテンシア] リンデン。 お姉様が呼んでいたわよ。 [リンデン] オルテンシア様。 わざわざすみませぬ。 [オルテンシア] いいのよ。他の用事のついでだから。 あら、その絵画… [オルテンシア] とっても…綺麗な人… もしかして、リンデンの娘さん? [リンデン] この油絵は妻を描いたものです。 [オルテンシア] リンデンの奥さんなの? こんな美人の奥さんがいたなんてすごいわ。 [リンデン] オルテンシア様にそう言っていただけるとは 妻もきっと喜んでおると思います。 [オルテンシア] 是非挨拶がしたいわ。 今度紹介してちょうだいね。 [リンデン] 残念ですがそれはできませぬ。 妻はすでに亡くなっておりますからのう。 [オルテンシア] あっ…ご、ごめん… あたし…知らなかったから… [リンデン] ほっほっほ。 気にすることはありませんぞ。 [リンデン] わしらのあいだには三人の子供がいて それぞれが独立して立派に生活しております。 [リンデン] わしは賢者として多くの魔道兵も育て上げました。 天国の妻もきっと喜んでいると思いますよ。 [オルテンシア] リンデンはとても優秀なのね。 奥さんも鼻が高かったんじゃないかしら。 [オルテンシア] そうだリンデン。あたし直属の先生にならない? あなたに教わればあたし、もっと強くなれると思うの。 [リンデン] 嬉しい申し出ですが… それは難しいのですじゃ。 [オルテンシア] どうして? [リンデン] 今のわしでは、オルテンシア様を教育する 体力はありませんのじゃ。 [オルテンシア] そっか。 戦もあるものね。無理を言ったわ… [リンデン] オルテンシア様が学ばれるには もっと若い教育者が最適ですよ。 --- B --- [オルテンシア] ねえ、リンデン。 [オルテンシア] あたし直属の先生になる話… もう一度考えてくれない? [リンデン] オルテンシア様… 前に言ったとおりわしでは力不足ですじゃ。 [リンデン] オルテンシア様は、籍を置いておられる イルシオンの学園でも優秀だと聞きました。 [リンデン] そう焦って強くなろうとする必要もありませぬ。 [オルテンシア] ………… [オルテンシア] お父様はあたしが一人前になる前に 死んでしまったわ。 [オルテンシア] だから急がなくちゃいけないの。 もう…後悔はしたくないから。 [リンデン] オルテンシア様… [オルテンシア] あたしもリンデンの子供のように、 父親を安心させるような強い人間になりたいの。 [オルテンシア] あなたにならそれができるでしょ? [リンデン] オルテンシア様の気持ちは充分に伝わりました。 ですが…わしにはできない理由があるのです。 [オルテンシア] …どんな理由なの? [リンデン] ハイアシンス様亡きあと、 イルシオン王国は危機的状況です。 [リンデン] 一つでも軋轢が生じれば、 すぐにでも国は崩壊してしまうでしょう。 [リンデン] 愛するイルシオン王国を守るためにも、 今はその立て直しに全力を尽くしたいのです。 [リンデン] 今の情勢ではオルテンシア様に じゅうぶんな時間を割くことができませんのじゃ。 [オルテンシア] この前、お姉様に呼ばれていたのも そのことだったのね… [オルテンシア] リンデン。 わがまま言ってごめんなさい。 [オルテンシア] お姉様やリンデンが必死に頑張ってるのに あたしは…自分のことばかり考えていたみたい。 [リンデン] あなた様のお考えも立派です。 [リンデン] オルテンシア様はオルテンシア様で、 ご自分にできることをなされば良いのです。 [オルテンシア] うん。 ありがとうリンデン… [オルテンシア] あたしにできることがあったらなんでも言ってね。 これでもイルシオンの王女なんだから。 --- A --- [オルテンシア] ………… [オルテンシア] あたしは… イルシオン王国のために何ができるんだろ。 [オルテンシア] 自分にできることって…なんなのかな… お父様…教えて… [リンデン] ハイアシンス様なら、 今のままで良いと仰るはずですぞ。 [オルテンシア] …リンデン。 [オルテンシア] どうして、そう言い切れるの… お父様はもう…死んでしまったのに… [オルテンシア] お姉様と違って…お父様には いっぱい迷惑をかけてしまったのよ。 [オルテンシア] きっと、天国のお父様は… あたしにがっかりしているはずだわ。 [リンデン] わしは元々ハイアシンス様の兄王様の臣下でしてな。 そのことはあなた様もご存じだと思いますが… [リンデン] 当時は…ハイアシンス様のことを、 良く思っていなかったのです。 [オルテンシア] お父様のことを? それは…全然知らなかったわ… [リンデン] 当時は後継者争いもあって、わしらの派閥は ハイアシンス様とは対立関係にあったのです。 [リンデン] 結局、兄王様は後継者争いに敗れ… 失意のうちに国を去ることとなりました。 [リンデン] わしは兄王様が選ばれなかったことに納得がいかず、 ハイアシンス様を恨みました。 [リンデン] しかし…あるとき、ハイアシンス様が仰ったのです。 「リンデン、お前は今のままでいい」と。 [オルテンシア] …! [リンデン] 当時はなぜそんな言葉を仰ったのか、 よく意味はわかりませんでした。 [リンデン] しかし、あるとき気づいたのです。 国を思う気持ちは同じだったのだと… [リンデン] ですからわしも、オルテンシア様は そのままでいいと言い切れます。 [オルテンシア] リンデン… [リンデン] それに、親は子供を愛しているものですよ。 [リンデン] ハイアシンス様がオルテンシア様に がっかりすることなど絶対にありませぬ。 [リンデン] 三人もの子を育てたわしが言うのです… 間違いありませんぞ。 [オルテンシア] そうね…とっても説得力があるわ。 [オルテンシア] ありがとう。 あなたの話を聞いたら少し元気がでたわ。 [オルテンシア] あたしはあたしらしく、少しずつ、 お父様に胸を張れるように頑張る! [リンデン] ええ、その意気です。 [リンデン] わしも助言ぐらいならできますぞ。 迷ったときはいつでも相談してくだされ。 [リンデン] オルテンシア様が将来どのように成長されるか、 楽しみにしております。 [オルテンシア] ありがとう、リンデン。 --- S ---