=== アイビー & カゲツ === --- C --- [カゲツ] むむっ! むむむむむっ! [カゲツ] きたきたきたきた! アイビー様、今晩のおかずは唐揚げじゃ! [アイビー] …そう。 [カゲツ] 反応が薄いのう。 アイビー様は唐揚げがスキではないと見える。 [アイビー] そんなことないわ… 別に普通よ。 [カゲツ] ならば、なぜそんな怪訝な顔をしているのじゃ? [アイビー] ………… [アイビー] …カゲツのその予知能力、よく当たるわよね。 [アイビー] くだらないものしか予知できないようだけど、 的中率は今のところ百発百中… [カゲツ] その通りじゃ! 褒めてくれてよいぞ! [アイビー] いえ… 得体が知れない能力で不気味だわ… [カゲツ] なんとー!? [アイビー] カゲツ自体も得体が知れないから苦手よ… [カゲツ] うう、しょっくじゃ… アイビー様は余のことが嫌いであったか… [カゲツ] でも、余はアイビー様がスキじゃ! だから、なんの問題もない! [アイビー] ………… [アイビー] …ふふっ。 [アイビー] 変な人ね。 [カゲツ] おおっ! これは破顔一笑! アイビー様が笑ったぞ! [カゲツ] その笑顔が見られるのなら、 嫌われることくらいなんでもないのう! --- B --- [カゲツ] アイビー様! 余の出身地は白の砂漠という場所じゃ! [アイビー] カゲツ、いきなりなんなの? [カゲツ] アイビー様は余のことを、 得体が知れぬ存在だから嫌いと申した。 [カゲツ] だから、余の得体を説明しようと思ったのじゃ! そうすれば余のことをスキになるかもしれないしのう! [アイビー] …そう。 一応、理屈は通っているわね。 [カゲツ] 余の得体さえ知れれば、身分の差を飛び越え、 アイビー様と友人になれるかもしれぬ! [カゲツ] これは試さぬわけにはいかん、ということじゃ! [アイビー] …ふふっ。 [カゲツ] それでえーっと、続きじゃ。 余は長男で可愛い弟と妹がいるのじゃ。 [カゲツ] 父は剣の名手、母は不思議な力を持つ巫女でな。 余の予知能力は母譲りかもしれぬ。 [カゲツ] 素晴らしい家族に恵まれた余じゃが、 外の世界への憧れが強くてな。 [カゲツ] とうとうある日、置手紙を残し 故郷を飛び出て旅に出たというわけじゃ! [アイビー] ………… [カゲツ] あー… これは失敗じゃったな。 [カゲツ] 考えてみれば余の身の上話など アイビー様にとってはつまらぬものなのに… [カゲツ] それに気づけず一方的に話してしまった。 本当に申し訳ない、アイビー様… [アイビー] いいえ、そんなことないわ。 むしろ…嬉しかったの。 [アイビー] カゲツはこんな私と友人になるために、 色々と考えてくれたのだと… [アイビー] ありがとう… カゲツ… [カゲツ] …! これはもったいなきお言葉。 [アイビー] それにね、カゲツ。 私、貴方のこと嫌いじゃないわ。 [アイビー] 得体が知れないから苦手って言ったの… 苦手と嫌いは違うでしょ? [アイビー] それに今は… もうそんなに苦手じゃないし… [カゲツ] なんと! しからば友人になれる日も近いな! [アイビー] ふふっ… そうかもしれないわね… --- A --- [カゲツ] アイビー様! 時は満ちた! [カゲツ] 余とアイビー様は今こそ友人になるときじゃ! さあさあさあ! [アイビー] ………… [カゲツ] うむ… 満目蕭条じゃ。 [カゲツ] まだ時は満ちていなかったようじゃのう… [アイビー] カゲツ、そうじゃないわ… [カゲツ] むむ? [アイビー] 私はね… 人と比べて友人が少ないの… [アイビー] 幼少時に大人の汚い姿ばかりを目にしてきたから… 人を簡単には信用できなくなってしまった… [アイビー] そんな風に育ったから… [アイビー] 友人と呼べる存在を作れるまでに すごく時間がかかったの… [カゲツ] アイビー様は第一王女じゃからな。 交流できる相手も限られていたじゃろうし。 [カゲツ] その厳しい環境は容易に想像できる。 さぞや辛かったことじゃろう。 [アイビー] ………… [アイビー] だからね、不思議なの… [アイビー] カゲツのように言葉を交わしただけで 友人になろうとする人が… [アイビー] それにこうして身分の差など気にせずに 私と友人になってくれようとすることとか… [カゲツ] はっはっは! 余が単純なだけじゃ! [アイビー] 少し前まで、その単純さは、 私には理解不能だった… [アイビー] だから、貴方が… 得体の知れない存在に映った… [アイビー] でも今は、その単純さこそ 貴方の何よりの魅力に見えるわ。 [カゲツ] なんと嬉しいお言葉じゃ! [アイビー] だ、だからカゲツ… [アイビー] 私と友人に…なりましょう… [カゲツ] それはまことか!? わーい! もちろんじゃ、アイビー様! [カゲツ] これからも余たちはずーっと仲良しじゃ! [アイビー] ふふっ… ありがとう、カゲツ… --- S ---