=== アイビー & ヴェイル === --- C --- [ヴェイル] アイビー… [アイビー] ヴェイル王女… [ヴェイル] …本当にごめんなさい。 [ヴェイル] わたしのパパが… あなたのお父さんを狂わせたこと。 [アイビー] ………… [ヴェイル] 昔はとても、優しかったのだと聞いているわ。 物静かで…民や家族を深く思う王だったと。 [ヴェイル] あんなことがなければ… あなたは今も、お父さんと一緒に… [アイビー] それ以上は言わないで。 [アイビー] 起きてしまったことが全てよ。 そんなことがなければなんて、考えても意味がないわ。 [ヴェイル] そうかもしれないけど… わたしは… [アイビー] 貴方の父の罪は、貴方の罪ではない。 謝罪する必要はないわ。 [ヴェイル] それでは気が済まないの。 お願い。何か償わせて。 [アイビー] 意外と頑固なのね… [アイビー] なら、次に会う時までに考えておくわ… 貴方に償いとして何をしてもらうか… [ヴェイル] ありがとう。 どんなことでも受け入れるわ。 [アイビー] どんなことでも、と言ったわね… 後悔しても知らないんだから。 --- B --- [ヴェイル] …アイビー。 これって… [アイビー] 後悔しても遅いわ… 償いがしたいと言ったのは貴方なのだから。 [ヴェイル] でも… [アイビー] 言い訳は聞きたくないわ。 [アイビー] さあ、償いとして完食してもらうわよ。 この激辛料理を… [ヴェイル] ………… [アイビー] 恐ろしくて声も出ないようね。 [アイビー] でも、安心しなさい。 かわいそうだから一口でも食べたら許してあげるわ… [アイビー] そもそも償いなんて必要ないのに… こうでもしないと貴方が納得しないから… [ヴェイル] もぐもぐぱくぱく! [アイビー] …待って。 [アイビー] なんで美味しそうに食べてるのよ… かなり辛い料理を用意したのに… [ヴェイル] わたし、辛い食べ物が大好物なの。 [アイビー] えっ… [アイビー] でも確か、お父様は… 「あの方は辛い食べ物を嫌悪される」と… [アイビー] 聞き間違いだったのかしら…? [ヴェイル] ど、どうしよう… 美味しくて手が止まらない。 [ヴェイル] こんな思いをしていたら、 償いなんかにならないのに。 [ヴェイル] うっ…うう… 美味しいけど…悲しくなってきた… [アイビー] …ま、いいわ。 [アイビー] 美味しく食べられるのなら、 それに越したことはないし… [アイビー] なんか、あんなに泣いてるし… [アイビー] ヴェイル王女。 これで貴方の償いは終了よ。 [ヴェイル] そ、そんな! そんなわけにはいかないわ。 [ヴェイル] もう、食べるのはやめる。 これ以上普通に食事をするわけにはいかないもの。 [アイビー] それは勿体ないから… 良かったら全部食べて頂戴… [アイビー] それに…今回でわかったのよ。 貴方がつらい顔をしているよりも… [アイビー] …幸せそうな顔をしている方が、嬉しいって。 --- A --- [ヴェイル] アイビー。 この間の償いのことなんだけど… [ヴェイル] ごめんなさい。 わたし、ただ美味しく食事をしただけで。 [アイビー] まだそんなことを言ってるのね… いい加減にしないと怒るわよ。 [ヴェイル] でも… [アイビー] 聞きなさい。 ヴェイル王女。 [アイビー] 確かに私の父は邪竜に魅入られ、 人の道を踏み外したわ… [アイビー] でも、それは貴方のせいじゃない。 [ヴェイル] ………… [アイビー] 納得できない。 そんな顔をしているわね。 [アイビー] 私も何度も言われたわ。 父の罪は、お前の罪ではないと… [アイビー] 一度として… 納得はできなかった。 [ヴェイル] うん… [アイビー] 理不尽で、不可解よね。 [アイビー] 私は貴方に… 父親の罪を背負う必要はないと言っているわ。 [アイビー] 私自身…その言葉が納得できないものだと、 痛いほどわかっているのに。 [アイビー] でも…そう言うしかないじゃない… 私も貴方も…前を向いて…進まなくちゃ… [ヴェイル] アイビー… [ヴェイル] わかったわ。 もう償いたいとは言わない。 [ヴェイル] その代わりにこう言わせて。 [ヴェイル] 人々が笑顔になれる世界を… これから一緒に作っていきたい、と。 [アイビー] ヴェイル王女… [ヴェイル] あなたへの償いかどうかは、 もう考えない。 [ヴェイル] 同じ苦しみを知っている者同士、 助け合って生きていきたいって思ったの。 [ヴェイル] どうかな? [アイビー] ええ、 喜んで貴方の手を取るわ… [アイビー] ありがとう、ヴェイル王女… [ヴェイル] ありがとう、アイビー。 --- S ---