=== ジェーデ & カゲツ === --- C --- [カゲツ] ジェーデ! 頼もう! いざ尋常に勝負じゃ! [ジェーデ] 頼まれない。 勝負も断る。 [カゲツ] 出会い頭に辛辣…! なぜじゃ!? [カゲツ] そなたはブロディア王国あげての武術大会で、 優勝するほどの実力の持ち主と聞いたぞ! [カゲツ] 一騎当千のその力! 出し惜しみするなどもったいない! [ジェーデ] 命令されたわけでもないし… 別に戦う理由はないわ。 [カゲツ] それは困る。 困るぞ、ジェーデ。 [カゲツ] そなたほどの強者と手合わせできぬとは! 我慢ならん! [カゲツ] どうすれば手合わせしてくれるのじゃ? 余にできることならなんでもするぞ! [ジェーデ] なんでもと言われても… [ジェーデ] …そうだ。 [ジェーデ] それなら、貴方のことについて、 いろいろと聞かせてくれる? [カゲツ] そんなことなら、お安い御用じゃが… なんのために? [ジェーデ] 物語を書くための参考にしたいの。 魅力的な人物を描くには必要なことよ。 [カゲツ] わかった。 余は自分のことを話せばいいんじゃな? [ジェーデ] ええ…そうよ。 取引成立ね。 --- B --- [カゲツ] 余が生まれたのはソルム王国北東の辺境の地… 白の砂漠と呼ばれるところじゃ。 [カゲツ] 土地柄、訪れる人も少なくてな。 独自の文化というか、他とは変わったところが多い。 [ジェーデ] たとえばどんなこと? [カゲツ] 余の服装は、 そなたたちから見れば変わっておるじゃろ? [カゲツ] 建物などもすべて、 木でできた独特の建築様式じゃ。 [カゲツ] それに信仰対象も違う。余の故郷には、 神竜信仰も邪竜信仰もないからのう。 [カゲツ] 余たちが信仰している竜は細長く、 他の国では一切、見たことがない。 [ジェーデ] ふむ…それは珍しいわね。 一度、見てみたいわ。 [カゲツ] 手合わせをしてくれるなら 絵巻物も見せてやろう。 [ジェーデ] 魅力的な提案だけど まだカゲツに聞きたいことがあるから。 [ジェーデ] 次は家族構成を教えて欲しいわ。 [カゲツ] 家族は両親、弟、妹がおる。 [ジェーデ] カゲツが長男なのね。 [カゲツ] うむ。 本来なら家督を継ぐ責任があるのじゃ。 [カゲツ] だが、余には無理じゃった… [カゲツ] あのままずっと故郷で過ごし、 外の世界を知らずして死ぬことなど。 [ジェーデ] ………… [カゲツ] だから余は… [カゲツ] 「外の世界を勉強してきます。探さないでください」 と置手紙をして、故郷を飛び出した。 [カゲツ] それで今に至るというわけじゃな。 [ジェーデ] まるで冒険小説の主人公のようだわ。 カゲツにそんな過去があったなんて… [カゲツ] ははは。 ま、誰にでも歴史はあるということじゃな。 [カゲツ] では、そろそろ手合わせ願えるかのう? [ジェーデ] そうね。約束だったし。 お相手するわ。 --- A --- [カゲツ] いやー、さすがじゃ! まさかあそこまで追い詰められるとは! [ジェーデ] カゲツの腕も見事だったわ。 結局、勝敗はつかなかったし。 [カゲツ] 今回の結果は引き分けじゃな。 だが、実りの多い手合わせであった。 [ジェーデ] ええ。 そう思うわ。 [カゲツ] しかし、ジェーデはなぜそんなに強いのじゃ? 実は武家の生まれなのか? [ジェーデ] いいえ。 私は普通の家で生まれ育ったわ。 [ジェーデ] 父は宝石鑑定士で、 母は宝飾品を作る職人よ。 [カゲツ] 戦いとは無縁の家庭のようじゃが。 [ジェーデ] そうね。 私も最初は母の仕事の手伝いをしていたの。 [ジェーデ] でも、手先が器用じゃなくて… だから、そのうち鉱山の用心棒を始めたのよ。 [カゲツ] 用心棒じゃと? 急展開すぎぬか? [ジェーデ] そう? 昔から体を動かすのが好きだったし。 [ジェーデ] 鉱石を狙う悪党も多かったから 毎日、いい運動ができて満足した生活だったわ。 [カゲツ] な、なるほど… 強さの秘密が少しわかった気がするぞ… [ジェーデ] そんな生活を続けていたら、 『鉄壁のジェーデ』なんて異名をつけられていたわ。 [ジェーデ] その噂を聞きつけた城の兵士に、 武闘大会への出場を勧められて… [カゲツ] 見事、優勝したというわけか。 [ジェーデ] その功績を認められ、 王子の臣下となったの。 [ジェーデ] 自分のことを話す機会なんて あまりなかったけれど… [ジェーデ] 人に歴史あり… カゲツが言った通りね。 [カゲツ] そうじゃな。余たちは歴史を紡ぎ、 明日に向かっていくのじゃ。 [ジェーデ] 一枚一枚、 読み進めていく小説のように…ね。 [カゲツ] ときに、ジェーデ。 手合わせの再戦はいつにしようかのう! [ジェーデ] いつでも構わないわ。 [ジェーデ] カゲツとの手合わせも、 私の歴史の一部になるのだから。 --- S ---