=== ラピス & シトリニカ === --- C --- [シトリニカ] はぁっ! はっ! たぁっ! [シトリニカ] ふぅ… [シトリニカ] 昨日よりはよくなっているかしら。 でもまだまだね… [ラピス] シトリニカ。 こんな時間に何してるの? [シトリニカ] きゃっ!? [シトリニカ] …あらまあ、ラピス。 別に何もしていないわ。 [シトリニカ] 強いて言えば、 舞踏会でのステップを思い出していただけよ。 [ラピス] はあ…嘘が下手。隠してもお見通しよ。 密かに特訓してたのね。 [シトリニカ] ええ、認めるわ… [ラピス] こんな遅くまでやったら、体を壊しちゃうわよ。 もうゆっくり休んだほうがいいわ。 [シトリニカ] ラピスはそれでいいわ。 でもわたしはダメなの。 [ラピス] え? [シトリニカ] あなたぐらい強かったら、 夜中に特訓なんかしなくてもいいけれど… [シトリニカ] でも、わたしは違うわ。 もっと強くならなきゃいけないの。 [ラピス] シトリニカ。 そんなことは… [シトリニカ] さあ、あなたは休んできてちょうだい。 わたしも、もう少し特訓したら休むから。 [ラピス] ………… [ラピス] …わかったわ。でも無理しないでね。 おやすみ、シトリニカ。 [シトリニカ] おやすみなさい、ラピス。 --- B --- [ラピス] お父ちゃん、お母ちゃん。いつも小包ありがとう。 今日は何を送ってくれたんだろう… [ラピス] なんてね。 何を送ってくれたのかは、もうわかってるの。 [ラピス] ジャジャーン。 わぁ、おいしそうなお芋…! [シトリニカ] ラピス、何をしているの? [ラピス] わーーっ! あ、ああ、シトリニカ!? [ラピス] ちょっと、もう… 夜中にその顔で突然、現れないでよ。 [シトリニカ] ひどいこと言わないの。 どんな顔で現れたっていいでしょう。 [シトリニカ] こんなことだったら舞踏会の仮面でも 被ってくればよかったわ。 [ラピス] ごめんなさい。冗談よ。 [シトリニカ] まあ、おいしそうなお芋がたくさん。 ブロディアの田舎の特産品ね。どうしたの? [ラピス] その…えっと… [シトリニカ] 送り主はご両親ね。でもこの送り元って… あなたのご両親、この村にお住まいだった? [シトリニカ] もっと町のほうだと聞いていたけれど… [ラピス] ………… [ラピス] …シトリニカ。もう、本当のことを言うわ。 あたしの両親は町には住んでいないの。 [シトリニカ] え? [ラピス] あたしの両親は、いえ…親戚もみんな、 この芋が特産品の田舎に住んでいるのよ。 [シトリニカ] そうだったの? でも、あなたは前に… [ラピス] ええ、あたしは嘘をついたの。ごめんなさい。 みんなには言わないで。 [シトリニカ] わかったわ。 でも、どうしてそんな嘘を… [ラピス] …くだらない見栄よ。 [ラピス] ずっと気にしていたの。 スタルーク様は王族だし、シトリニカはその親戚。 [ラピス] 高貴な二人と組むには… 村の出身のあたしは、あまりにも場違いだから… [シトリニカ] そんなことはないわ! 生まれなんて… [ラピス] 気にするのよ。シトリニカぐらい良い生まれなら、 いいんだろうけど… [ラピス] でも、あたしは違うから… [シトリニカ] ラピス… [シトリニカ] 同じね、わたしたち。 [ラピス] え? [シトリニカ] あなたは生まれを、 わたしは力不足を気にしている。 [シトリニカ] そしてそれを、自分ではない もう片方が持っている… [ラピス] …! [シトリニカ] あなたの秘密、誰にも言わないわ。 今日も鍛錬をして、休むわね。 [シトリニカ] おやすみなさい、ラピス。 [ラピス] おやすみ…シトリニカ。 --- A --- [ラピス] シトリニカ、待ってたわ。 [シトリニカ] ラピス、どうしたの? [ラピス] 今日はあたしも特訓に付き合わせてほしくて。 一人より二人のほうがいいでしょう。 [シトリニカ] えっ? でも、こんな時間に悪いわ… [ラピス] 悪いのはあたしの方よ。 この前はごめんなさい。 [ラピス] それに、大事な友だちが頑張ってるのに、 悠長に寝ているわけにはいかないわ。 [シトリニカ] ラピス…あなたって子は… 本当に優しいんだから… [シトリニカ] そうだ。 特訓の前に、これを受け取ってちょうだい。 [ラピス] なあに? この紙。 [シトリニカ] 町にある、わたしの家族の邸宅の住所よ。 [シトリニカ] 今は家族は住んでいないけれど、 管理のために使用人だけ住まわせているの。 [ラピス] どうしてこれを、あたしに? [シトリニカ] 田舎の出身ってこと、誰にも知られたくないのよね? だったら小包の送り元も気にしないと。 [シトリニカ] 今度からはこの住所を使って。 [シトリニカ] ご両親が小包をここに送れば、あとは使用人が うまく住所を書きかえて、あなたに転送してくれるわ。 [シトリニカ] みんなでここに住んでもらってもいいし、 別荘にしても構わない。 [シトリニカ] 好きなように、うまく使ってね。 [ラピス] ………… [ラピス] シトリニカ…ありがとう。 あたしのこと、そんなに考えてくれてたのね… [シトリニカ] お礼なんていいの。 親友として、当然のことだわ。 [ラピス] でも…あたし、これは受け取れない。 [シトリニカ] えっ? どうして… [ラピス] あたしは家族が大好きで誇りに思ってる。 たとえ裕福じゃなくても。 [ラピス] このことはまだ…みんなの前では言えないけど、 でも、あなたの前では隠さずにいたい。 [シトリニカ] ラピス… [シトリニカ] ふふ、わたしたちっておもしろいわね。 お互いが自分にないものを持っていて… [ラピス] そうね。 そしてお互いに、困ったときは手を差し伸べあう… [シトリニカ] 悪くない関係ね。 [ラピス] ええ、本当に。 [ラピス] …もしかしてスタルーク様は、このバランスを 考慮してあたしたちを採用したとか… [シトリニカ] それはないわ。 あなたはいつも彼のことを買い被りすぎよ。 [ラピス] えっ? そ、そ、そんなことないわ…! [シトリニカ] うふふ、顔が真っ赤よ。 まるで宮廷に敷かれたカーペットみたい。 [ラピス] もう…からかわないで。 [ラピス] そうだ。真っ赤と言えば、うちの村のトマトは絶品よ! いつか食べにきて。 [シトリニカ] 素敵。ぜひ行かせてもらうわ。 [ラピス] でもお金は持ってこないでね。 うちの村は物々交換だから… [シトリニカ] あら楽しそう。物々交換って一度やってみたかったの。 じゃあ、ネックレスでも持っていこうかしら。 [ラピス] あはは、シトリニカのネックレスなんて持ってきたら 一生分のトマトと交換になっちゃうわよ。 --- S ---