=== リンデン & モーヴ === --- C --- [リンデン] モーヴよ。今、時間はあるか? あんたに実験の協力をして欲しいんじゃが。 [モーヴ] リンデン殿。 かまわないぞ。何をすればいい? [リンデン] このとうもろこしを 上空に放り投げて欲しいのじゃ。 [モーヴ] お安い御用だ。 だが、それの何が実験になるのだ? [リンデン] 上空のとうもろこしに、 エルサンダーをぶっ放すとはじけるんじゃよ。 [リンデン] わしの計算ではそれが とうもろこしの一番の調理法なんじゃ。 [モーヴ] …危なくないのか? [リンデン] それはまあ… 実験に失敗はつきものじゃからな。 [リンデン] 最悪、モーヴがはじけることになるやも。 [モーヴ] なら協力は断る。 [リンデン] なんでじゃ! 年寄りに優しくしろと習わんかったのか! [モーヴ] 人に向けてエルサンダーを放つな、 とは習わなかったのか? [リンデン] くっ… 年寄りみたいなへりくつを言いよって。 [モーヴ] もっとためになる実験ならば いくらでも協力しよう。 [モーヴ] だが、とうもろこしのために命を差し出すことはできん。 悪いな、リンデン殿。 [リンデン] むぅ…仕方ない。 実験は諦めるとしよう。 --- B --- [モーヴ] むっ? リンデン殿、何か落としたぞ。 [リンデン] これはうっかりしておったわい。 礼を言うぞ、モーヴ。 [モーヴ] これは…美しい女性の人物画か。 [リンデン] ほっほっほ。 美しいか。もっと言っておくれ。 [リンデン] 描かれているのは、わしの妻じゃからな。 [モーヴ] ほう。 この人がリンデン殿の奥方なのか。 [リンデン] 見た目だけじゃないぞ。 性格も優しくてな、最高の妻じゃったよ。 [リンデン] もう亡くなってずいぶん経つが、 いまだに妻への思いは募るばかりじゃ。 [リンデン] はぁ…もう一度、会いたいのう… 妻の手料理が、笑顔が、全てが懐かしい… [モーヴ] そう悲しくならないでくれ。 俺でよければ力になる。 [リンデン] そうか。 ありがとうのう、モーヴ。 [リンデン] では、このとうもろこしを上空へ放り投げてくれ。 [モーヴ] なぜそうなる!? [モーヴ] それはエルサンダーを放ち とうもろこしをはじけさせる実験ではないか! [リンデン] 妻はとうもろこしが大好物じゃったからのう。 おいしく食べる方法を知りたがっているはずじゃ。 [リンデン] さ、いつでもいいぞ! ぶっ放す準備はできておる! [リンデン] 狙いだってばっちりじゃ! 多分、いや、ほぼ失敗はせん! [モーヴ] すまんがお断りだ。 じゃあな、リンデン殿。 [モーヴ] [リンデン] モーヴ! 待ってくれ、モーヴ! --- A --- [リンデン] ………… [モーヴ] リンデン殿。 奥方の人物画を見ているのか。 [リンデン] はっはっは… これは情けないところを見られてしもうたな。 [リンデン] 年甲斐もなく… いつまでも未練たらしいマネをしてしまう。 [モーヴ] それだけ奥方への愛情が深いということだ。 何も情けなくはない。 [リンデン] そうか… [リンデン] わしには三人の子がいるが、 みんなすでに立派に独立していてな。 [リンデン] それぞれの家庭があり、生活もあるから 年々、会える機会も少なくなってきておる。 [リンデン] そうなるとどうしても… 過ぎ去った思い出というものが輝きだしてな。 [リンデン] 現在ではなく、 過去に目を向ける回数が多くなってくる。 [リンデン] それがいいのか、 悪いのかはわからんがのう。 [モーヴ] 振り返りたくなる思い出があるということは それだけ充実した人生を生きたという証だ。 [モーヴ] 願わくば俺もそうした生を歩みたいものだ。 これまでの人生は…後悔の方が多いからな。 [リンデン] 大丈夫じゃ。あんたならいくらでも歩めるさ。 わしなんかよりも充実した人生をな。 [モーヴ] ふっ。年長者の言葉は素直に受け取っておこう。 礼を言うぞ、リンデン殿。 [リンデン] うむうむ。 では、わしの実験に付き合ってもらうとするか。 [モーヴ] やっぱりそうなるか! [リンデン] エルサンダーではじけさせたとうもろこしの味… 知らずに過ごせば後悔することになるぞ。 [モーヴ] …はぁ。 狙いは外さないでくれよ。 [リンデン] ほっほっほ! 任せておくのじゃ! さあ、実験の始まりじゃ!! --- S ---