=== ルイ & クロエ === --- C --- [クロエ] ルイ。 またわたしのことを見ていたわね? [ルイ] はい、しっかりと。クロエさんを中心に、 素敵な女性たちが集まっていましたね。 [ルイ] なんと素晴らしい光景か… 見ているだけで僕は最高に幸せです。 [クロエ] そうして堂々と言われると、 まっとうな趣味のように勘違いしてしまいそうよ。 [ルイ] 仲良く話す女性たちを眺めるのが好き。 それが趣味なのはおかしなことでしょうか。 [ルイ] 触れたいわけでもなければ、 会話に加わりたいわけでもないのに。 [クロエ] 本当に見ているだけがいいのね。 [ルイ] 美しい風景を楽しむのと同じですよ。 心を穏やかにし、静かに眺めるんです。 [ルイ] 無害で健全な趣味だと思っていますし、 クロエさんなら理解してくれるはずでは? [クロエ] そうね。 不本意だけれど、理解できるわ。 [ルイ] クロエさんも絵になる組み合わせを見つけると うっとりと見つめたまま動かなくなりますからね。 [クロエ] 姫と騎士…王子と従者。ペガサスと少女。 素敵な組み合わせはいくらでもあるもの。 [クロエ] わたしは、御伽噺に出てくるような光景を じっと眺めることが好きだわ。 [ルイ] つまり僕とクロエさんは、 同好の士ということですね。 [ルイ] どうでしょう。 今度二人で鑑賞会をしませんか。 [ルイ] 互いの興味を引く光景を、 共に遠くから眺めましょう。 [クロエ] 楽しそうね。 いいわ。ぜひやりましょう。 --- B --- [クロエ] 見てごらんなさい、ルイ。 あの食事をしている男女、素敵だと思わない? [クロエ] 女の子が男の子にあーんして、 男の子がそのお返しをして… [クロエ] 仲睦まじくて素敵だわ… まるで御伽噺に出てくる王子様と王女様みたい。 [ルイ] 確かに素晴らしい光景ですね。 見ているだけで胸が高鳴ります。 [ルイ] たまにはこうして、クロエさんがお好きな光景を 眺めるのも悪くないですね。 [ルイ] ………… [クロエ] あら。悪くないと言ったわりには あまり満足していなさそうだけど? [ルイ] すみません… やはりいつもよりは物足りなさを感じています。 [クロエ] うふふ。 やっぱり女の子だけの集まりの方がお好み? [ルイ] いえ、そうではありません。 [ルイ] 僕が物足りなさを感じているのは クロエさんが原因なんだと思います。 [クロエ] わたしが原因? どういうこと? [ルイ] クロエさんは皆さんから慕われていますから、 いつも仲間たちが集まってきます。 [ルイ] 愛すべき仲間とクロエさんが仲良さそうにしている… その光景のなんと素晴らしいことか。 [ルイ] 可能ならば永遠に眼に留めておきたい。 それほどまでに僕に幸せを与えてくれていたのです。 [ルイ] ですが、その反動でしょうか。なんだか… クロエさんがいないと物足りなさを感じてしまうのです。 [クロエ] ありがとう。 一応、褒められているのよね。 [クロエ] でも、他の子に今みたいなことを言うのはダメよ。 [クロエ] 同じ趣味を持っているからこそ、 わたしには理解できたけれど… [クロエ] 普通の子にしてみれば ただの変態さんの独白にしか聞こえないからね。 [ルイ] ははは。 肝に銘じておきますね。 [クロエ] それじゃ、そろそろ行きましょうか。 先ほどから素敵な男女がこちらをにらんでいるし。 [ルイ] これ以上、邪魔をしては気の毒ですね。 場所を変えましょう。 --- A --- [ルイ] クロエさん。 今日も素敵な方たちを観察しに行きましょう。 [クロエ] ええ、ルイ。 素敵な出会いがありますように。 [ルイ] そうだ。 よろしければ、これをどうぞ。 [クロエ] これは…魚の干物? [クロエ] こんな色の干物は見たことないわ。 [クロエ] 青と緑と黄色が鮮やかに混ざっていて… 一見、食べ物とは思えないわね。 [ルイ] あまり市場には出回らない、 珍しいものだそうです。 [ルイ] クロエさんは珍味、お好きですよね? 観察中に小腹が減ったときにでもと思って。 [クロエ] ありがとう、ルイ。 こんなに美味しそうなものを頂けるなんて嬉しいわ。 [クロエ] でも、わたしが珍味好きだって話していた? [ルイ] 今までどれだけクロエさんを観察したとお思いですか? 今の僕はちょっとしたクロエさん博士ですよ。 [クロエ] ふふ。 やっぱりルイは変わっているわね。 [クロエ] でも、わたしも人のことは言えないかな。 [ルイ] どういうことですか? [クロエ] はい、干しブドウをどうぞ。 お口に合うといいけど。 [ルイ] ありがとうございます、クロエさん。 僕、ブドウが大好物なんです。 [クロエ] 知っているわ。 わたしもよくルイを観察してたから。 [ルイ] クロエさんが僕をですか? [クロエ] あなたがわたしを見ていたように わたしもあなたをよく観察していたの。 [クロエ] だって、ルイは誰と一緒でも絵になる人だから。 本当に御伽噺の中から抜け出してきたみたいよ。 [ルイ] ははは。 つまり僕たちはお互いに観察し合っていたと。 [クロエ] そしてお互いのことに、とても詳しくなった。 ふふ。不思議な仲の深め方をしたわね。 [ルイ] 本当ですね。 [ルイ] 直接の交流よりも、観察し合うことで 仲を深めたなんて聞いたことありません。 [クロエ] いいじゃない。 共通の趣味を持ったわたしたちらしいわ。 [ルイ] 確かにそうですね。 [クロエ] それじゃあ、おやつも用意できたことだし いつもの観察を始めましょうか。 [ルイ] ええ。 存分に楽しみましょう、クロエさん。 --- S ---