=== リュール & セリーヌ === --- C --- [リュール] 今日のお茶会、楽しかったです。 ありがとうございました、セリーヌ。 [セリーヌ] そんな。 お礼を言うのはこちらです、神竜様。 [セリーヌ] 神竜様とお話できて嬉しかったです。 おかげで紅茶の味も格別でした。 [リュール] 花の香りが素晴らしかったですね。 あんなに美味しいお茶があるなんて。 [セリーヌ] お口に合ってよかった。 実は、フィレネ王国の茶葉なんです。 [セリーヌ] 口当たりも優しく、香りも柔らかで… まるでフィレネを象徴しているかのよう。 [セリーヌ] わたしの、一番のお気に入りなんですよ。 [リュール] フィレネの人々は争いを好まず、 牧歌的な生活を好むと聞きました。 [リュール] あの紅茶は フィレネの特色にぴったりだと思います。 [セリーヌ] 神竜様はこんな伝承はご存知ですか? [セリーヌ] フィレネの王宮には精霊が棲み、 善良なものには幸福を約束する。 [セリーヌ] しかし泥棒や侵入者には… いたずらをして追い払う。 [セリーヌ] ふふふ。 いたずらをして追い払うですよ? [セリーヌ] 罰を与えるでもなく、傷を負わせもしない。 抑止力になるのか疑問です。 [リュール] でも、素敵な伝承ですね。 [リュール] そんな伝承が伝わる国だからこそ、 フィレネの人々はみんな優しいのでしょうね。 [セリーヌ] そうかもしれません。 神竜様、良かったらまたお茶をご一緒しましょう。 --- B --- [セリーヌ] ………… [リュール] 険しい顔をしていますね、セリーヌ。 何か問題でも起きたのですか? [セリーヌ] 神竜様… 先日、ご馳走した紅茶を覚えていらっしゃいますか? [リュール] もちろんです。 とても美味しい紅茶でしたから。 [セリーヌ] 実は最近、 あの茶葉を狙った盗賊が増えているようなのです。 [セリーヌ] 輸送経路を変えても無駄で 被害も日に日に大きくなっています。 [リュール] そんな… [セリーヌ] 普段なら国で起こっている問題に わたしが手を出すことはありません。 [セリーヌ] しかし、今は非常時ですし、 茶葉に関してはお兄様よりも詳しいので… [セリーヌ] お母様から直々に この件に対処するよう求められたのです。 [リュール] イヴ女王が… [セリーヌ] 教育の一環なのかもしれませんね。 [セリーヌ] お兄様がいるとはいえ、 わたしもフィレネの第一王女ですから。 [リュール] それでセリーヌはどう対処をするのですか? [セリーヌ] 泥棒にはいたずらをして追い返す… [セリーヌ] 伝承のように平和にいけば どんなにいいことでしょうか… [セリーヌ] ですが、現実はそんなに甘くありません。 [リュール] セリーヌ… [セリーヌ] 容赦はしません。 フィレネの民を苦しめる者たちには。 [セリーヌ] 民の平和を守るためなら わたしはどんなことでもします。 [リュール] ………… [セリーヌ] 神竜様はそんな顔をしないでください。 これはわたしが負うべき責務ですから。 [セリーヌ] それでは、失礼いたします。 --- A --- [セリーヌ] 神竜様、先日はご心配をおかけして 申し訳ありませんでした。 [リュール] 茶葉を狙う賊は、どうなったんですか? [セリーヌ] 国から資金を出し、 輸送隊に倍の護衛をつけました。 [セリーヌ] 襲撃犯をあえて逃がし、追跡することで 賊の本拠地を特定することもできたそうです。 [セリーヌ] …先ほど、本拠地を壊滅させるように 指示を出したところです。 [リュール] そうでしたか… [セリーヌ] 賊とはいえ、わたしの指示で 命を落とす者も出るかもしれません。 [セリーヌ] それでもわたしは、 この決定に後悔はありません。 [セリーヌ] フィレネの平和を乱す者を 許すことはできませんから… [リュール] ですが、セリーヌは辛そうですね。 [セリーヌ] …いいえ。 [セリーヌ] わたしには辛いと感じる資格はありません。 決断を下した者なのですから。 [リュール] 決断を下すことや、後悔の有無… そんなもの、心の痛みには関係ありません。 [セリーヌ] …神竜様は優しいですね。 [セリーヌ] わたしはフィレネを守るためなら どんなことでもするでしょう。 [セリーヌ] 平和のためならば躊躇なく剣を抜き戦う。 その心構えはできています。 [セリーヌ] ですが… [セリーヌ] 心構えができているからといって、 戦いを喜びはしません。 [セリーヌ] それが… わたしの弱いところなのだと思います。 [リュール] 弱さではなく、優しさ。 私はそう思いますよ。 [リュール] フィレネの民が持つ優しさだと。 [セリーヌ] ありがとうございます、神竜様… --- S --- [セリーヌ] 神竜様。少しお話できますか? [リュール] もちろんです、セリーヌ。 [セリーヌ] 以前、わたしは神竜様に こんなことをお話ししました。 [セリーヌ] わたしはフィレネの平和のためなら 剣を持ち戦う覚悟がある。 [セリーヌ] 平和のために、 平和的ではない手段も用いると。 [リュール] はい。 覚えています。 [セリーヌ] ですが今、その決意が揺らいでいます。 [セリーヌ] わたしはもう、フィレネの平和のために 残酷になることができないかもしれません。 [リュール] その辛さは理解できます。 セリーヌは優しい人ですからね。 [セリーヌ] いいえ、違います! わたしは…卑怯で愚かなんです。 [セリーヌ] わたしが残酷になれないのは、 神竜様に嫌われたくないため…ですから。 [リュール] セリーヌ… [セリーヌ] お願いです、軽蔑してください。 [セリーヌ] 第一王女として国を守る立場にありながら、 個人の思いを優先する愚か者だと。 [セリーヌ] 今ここで嫌われてしまえば…わたしはまた、 フィレネの平和のために残酷になれますから。 [リュール] ………… [リュール] セリーヌ、これを受け取ってください。 [セリーヌ] これは… 『約束の指輪』!? [リュール] 軽蔑なんてしません。 セリーヌを、ずっと傍で見守ると約束します。 [リュール] フィレネ王国のため、セリーヌ自身のために、 どれだけ身勝手な決断をしようと… [リュール] 私はあなたの傍を離れません。 [セリーヌ] で、ですが… 神竜様は残酷なわたしなどお嫌いになるはず… [リュール] セリーヌが優しい人だと私は知っています。 あなたの決断がどんなものだとしても… [リュール] その心の悲しみを一緒に背負いたい。 それが私の思いです。 [セリーヌ] 神竜 様… [セリーヌ] もう何も怖くはありません。 神竜様が傍にいてくれるのなら、それだけで… [セリーヌ] わたしはとても、幸せです。 [セリーヌ] 神竜様、優しいあなたがお傍にいてくだされば、 わたしはもっと強くなれます。本当に、ありがとう。