=== リュール & クロエ === --- C --- [リュール] すぅ…すぅ… [クロエ] ふふふ。 かわいい寝顔ですね。 [リュール] はっ!? く、クロエ!! [クロエ] お目覚めですね、おはようございます。 [リュール] ま、またですか!? 私の寝ている姿をずっと見ていたのですね!? [クロエ] はい、申し訳ございません。 [リュール] 外で居眠りをしてしまった時は、 そっとしておいてください。 [リュール] 祭壇で起こされる時とは違って、 目を覚ましたとき、驚いてしまうので… [クロエ] わたしも神竜様を驚かせたくはありませんわ。 [クロエ] ですが千年もの間、眠り続けた神竜様は 御伽噺の登場人物そのものですから… [クロエ] その寝姿はあまりにも神々しく、 どうしても眺めていたくて。 [リュール] 気持ちはわかりました。 でも、寝顔がきっと情けないので! [クロエ] そんな事はありませんけれど… [クロエ] そうだわ。 では、こういうのは如何ですか? [クロエ] 目覚めたときにわたしがいる、 その状態が普通になれば驚きませんよね? [クロエ] ですので、これからは 毎晩、一緒に眠るという方法も… [リュール] 却下です! [クロエ] まあ、残念です… --- B --- [クロエ] 千年もの間、眠り続け… [クロエ] 目覚めた後、 仲間と共に邪悪な者たちとの戦いへ… [クロエ] 神竜様はまごうことなき 御伽噺の登場人物そのものです。 [リュール] そ、そうなのでしょうか。 [クロエ] はい。 神竜様ほど特別な人はそうそういません。 [クロエ] 決して平凡な人生を歩むことはなく、 刺激と興奮に満ちた人生を歩む運命… [クロエ] ああ、羨ましいです。 [リュール] ………… [クロエ] 神竜様? [リュール] 色々な人の思いを背負い戦う。 その人生に後悔はありません。 [リュール] 平凡な人生を歩むことはない。 それも本当のことなのでしょう。 [リュール] でも、私にとっては平凡こそが 羨ましいと思う時があるな…と。 [クロエ] ! ごめんなさい。 御伽噺のような生き方に憧れるあまり、つい… [クロエ] 神竜様のお気持ちを考えることができませんでした。 本当に申し訳ありません。 [リュール] クロエに悪気がないのはわかってますよ。 謝らないでください。 [クロエ] ですが… それでは、わたしの気がおさまりませんわ。 [クロエ] そうだわ。お詫びに何か 美味しいものをご馳走させてください。 [クロエ] 昨日、珍しい深海魚の酢漬けを手に入れたんです! 気を失うほど酸っぱいですが美味しいですよ。 [クロエ] 今、お持ちしますので… ぜひ召し上がってください! [リュール] だ、大丈夫です! それは! 気持ちだけで、充分ですから! --- A --- [リュール] クロエは御伽噺のような生き方に 憧れているんですよね。 [クロエ] はい。 子供の頃からずっと。 [クロエ] わたしは貴族の生まれで…ずっと、 両親に決められた人生を歩んでいましたから。 [クロエ] 女の子として、平凡に生き、結婚し… 相手の家のために尽くすよう教育をされました。 [クロエ] 大好きな市井の食べ物だって、 口にすることは許されなかったんですよ。 [クロエ] 親の思う平凡な貴族としての人生なんて、 わたしは大嫌いでした。 [リュール] クロエ… [クロエ] だから…常に自由で、新しくて、胸が高鳴るような、 そんな生き方に憧れていたんです。 [リュール] そうだったんですね。 私はクロエの過去を知らずに…すみません。 [クロエ] 謝らないでください。もう過去のこと。 騎士になって、その夢は叶ったんです。 [クロエ] セリーヌ様や、神竜様と出会ったことで、 夢に描いていたような生き方ができています。 [クロエ] 神竜様や王族の方たちと共に戦うなんて 御伽噺の冒険譚よりもすごいと思いませんか? [リュール] そう言われるとそうかもしれませんね。 [クロエ] 今のこの戦いもいつの日か、 御伽噺として語り継がれるんでしょうか。 [リュール] その可能性はありますね。 そうなると… [リュール] クロエが御伽噺の登場人物として描かれる日も そう遠くないかもしれません。 [クロエ] え!? そ、それは… 照れてしまいますが、嬉しいですね。 [クロエ] 御伽噺を聞いた子供たちが憧れるような、 立派な騎士にならないと。 [リュール] クロエなら絶対に大丈夫ですよ。 私が保証します。 [クロエ] ふふふ。 ありがとうございます、神竜様。 --- S --- [リュール] どうやら私は、 クロエに影響されてしまったようです。 [クロエ] わたしに? それは、どういうことでしょうか。 [リュール] クロエが御伽噺のような生き方に憧れるように、 私もある生き方に憧れを持ってしまいました。 [クロエ] まあ、それは素晴らしいです…! [クロエ] 憧れを持つことができれば、 それに向かって前進できますから。 [リュール] …そうとも言い切れません。 [リュール] 私が思い描く生き方は、 私一人の努力だけでは到達できないので… [クロエ] 何か必要なものが? [リュール] クロエ、あなたです。 [クロエ] え…!? [リュール] あなたと生き方について話すうちに、 ずっと…共にいたいと思うようになりました。 [リュール] クロエがいつか、御伽噺に描かれるのなら、 その隣には私がいたいんです。 [クロエ] 神竜様… [リュール] もしも、この想いに応えてくれるのなら、 どうかこの指輪を受け取ってください。 [リュール] 私の…パートナーとして。 [クロエ] これは、『約束の指輪』… [リュール] 以前クロエも言ったように、 私が平凡な人生を送ることは、きっとできません。 [リュール] そんな私が共に生きて欲しいと願うのは もしかしたら傲慢なのかもしれません。 [リュール] ですが、それでも私は… [クロエ] 神竜 様。 それ以上は言わなくて大丈夫です。 [クロエ] 元よりわたしは、平凡な人生なんて要りません。 あなたの人生に寄り添わせてくださるのなら… [クロエ] それはわたしにとって、何よりの幸せです。 [リュール] クロエ… [クロエ] 指輪、喜んでお受けします。 神竜様の憧れに、いつまでもお供させてください。 [リュール] ありがとうございます。クロエ。 [クロエ] 今日から始めましょう。先の世を生きる子供たちが… 憧れてやまないような、わたしと神竜様の御伽噺を。